健康長寿ネット

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便秘

公開日:2016年7月25日 18時00分
更新日:2019年8月 5日 16時53分

便秘の症状

 自覚症状としては、下腹部の不快感、膨満感(ぼうまんかん;膨れた感じ)、腹痛、吐き気、嘔吐(おうと)などの訴えが多いです。

 「便秘」をそのまま放置しておくと、糞塊(ふんかい;便が腸の中で固まってしまったもの)による腸閉塞や直腸潰瘍、そして虚血性腸炎などの合併症を引き起こすことがあります。

便秘の原因

 高齢者に起こる「便秘」は、加齢に伴う食事量やADL(日常生活動作)の低下、生理的機能の低下などの原因でおこります。

 便秘の原因となる加齢による生理的機能の低下は次の通りです。

  • 身体活動や食事摂取量の低下

    • 腸内容の減少、腸管壁への物理的 ・ 拡張刺激の減弱、腸局所血流の低下
    • 腸管の緊張や蠕動運動の低下
  • 腸管筋層の萎縮、結合織の増加

    • 大腸を支える組織の緊張・運動の低下
  • 大腸憩室の増加

    • 腸管壁緊張低下の助長
  • 腸の神経の変化

  • 腸管の分泌低下

    • 便硬度の増大
  • 腸がおならを吸収する機能の低下

    • 腸管内腔の拡張、腸がおなかの中で曲がる部分の異常
  • 直腸壁の感受性低下

    • 排便反射の低下~消失
  • 排便に関する筋力(腹筋・横隔膜筋・骨盤底筋群等)の低下

    • 腹圧の低下、直腸と肛門の角度を保つ力の低下
  • 高齢者に多くみられる疾患との関連

    • 脳血管障害、肺気腫、心不全
  • 高齢者のライフスタイルと心理的要因

    • 少ない食事量
  • 繊維成分の少ない食事内容、水分摂取の低下、便意の抑制

  • 浣腸や下剤の習慣性

 このほか、消化管の癌、憩室炎などによる炎症性癒着など、器質的疾患による通過障害も「便秘」の一因となります。糖尿病、脳血管障害、甲状腺機能低下症といった全身疾患の部分症として「便秘」が出現することもあります。

 また高齢者では合併する心血管系疾患や消化器疾患、神経疾患などに対して治療薬が複数投与されていることが多く、薬剤が便秘の誘因となることもあります(薬剤性便秘)。

便秘の診断

 以下のうち2つ以上の症状があれば「便秘」と診断します。

  • いきみ
  • 兎塊状便または硬便
  • 残便感
  • 腸が詰まった感じ
  • 4回に1回以上は摘便(てきべん;肛門に手を入れて便をかきだすこと)している状況
  • 週に3回未満の排便

便秘の治療

 原因となる病気をもつ場合は、まず原疾患の治療を行います。それと同時に生活習慣の改善や食事・運動療法を試みます。

 薬剤性の場合、中止可能な薬であれば原因となる薬剤を中止します。無理であれば生活指導や食事療法とともに、適切な下剤を併用します。

便秘のケア・予防

排便の規則性

 毎朝、便意がなくても一定の時間にトイレにいく等、排便の規則性をつけると良いでしょう。またウォシュレットで排便前に肛門マッサージを行うことが大変有用です。

適度な運動

 適度の運動を毎日の生活リズムの中に組み込み、毎日、継続することを心がけましょう。運動により、腸の活動が活発になります。

食生活

 食生活では、以下のポイントを押さえて、便秘を放置せずに素早く解消しましょう。

  • 食事は1日3回規則正しく食べる。 特に朝食を摂ることは腸を刺激し、排便を促します。
  • 水分を十分に摂る。 食事、食間の水分摂取のほか、起床時に冷たい牛乳や冷水をコップ1杯程度飲むのも水分補給と腸の刺激に有効です。
  • 食物繊維を多く摂る。
  • 食物繊維が水分を吸着し、便量を多くし、柔らかくして、便を排泄しやすくします。
  • 食事量を確保する。食事量不足は、便の材料不足による「便秘」の原因になります。
  • 食事には適度の油を取り入れる。油は腸での潤滑油となり、便を出やすくします。
  • 適度の酸味や香辛料で腸を刺激する

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