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廃用症候群

公開日:2016年7月25日 15時00分
更新日:2019年2月 1日 22時09分

 様々な症状を引き起こす廃用症候群

廃用症候群の症状

 廃用症候群とは過度に安静にすることや、活動性が低下したことによる身体に生じた様々な状態をさします。

 ベッドで長期に安静にした場合には、疾患の経過の裏で生理的な変化として以下の「廃用症候群の症状の種類」に示すような症状が起こり得ます。病気になれば、安静にして、寝ていることがごく自然な行動ですが、このことを長く続けると、廃用症候群を引き起こしてしまいます。

廃用症候群の症状の種類

  • 筋萎縮・・・筋肉がやせおとろえる
  • 関節拘縮・・・関節の動きが悪くなる
  • 骨萎縮・・・骨がもろくなる
  • 心機能低下・・・心拍出量が低下する
  • 起立性低血圧・・・急に立ち上がるとふらつく
  • 誤嚥性肺炎・・・唾液や食べ物が誤って肺に入り起きる肺炎
  • 血栓塞栓症・・・血管に血のかたまりがつまる
  • うつ状態・・・精神的に落ち込む
  • せん妄・・・軽度の意識混濁のうえに目には見えないものが見えたり、混乱した言葉づかいや行動を行う
  • 見当識障害・・・今はいつなのか、場所がどこなのかわからない
  • 圧迫性末梢神経障害・・・寝ていることにより神経が圧迫され、麻痺がおきる
  • 逆流性食道炎・・・胃から内容物が食道に逆流し、炎症がおきる
  • 尿路結石・尿路感染症・・・腎臓、尿管、膀胱に石ができる、細菌による感染がおきる
  • 褥瘡(じょくそう)・・・床ずれといわれる皮膚のきず

廃用症候群の原因

 特に高齢者では、知らないうちに進行し、気がついた時には、「起きられない」「歩くことができない」などの状況が少なくありません。

 たとえば絶対安静の状態で筋肉の伸び縮みが行われないと、1週間で10~15%の筋力低下が起こると言われています。高齢者では2週間の床上安静でさえ下肢の筋肉が2割も萎縮するともいわれています。

 過度に安静にしたり、あまり身体を動かさなくなると、筋肉がやせおとろえ、関節の動きが悪くなります。そしてこのことが、さらに活動性を低下させて悪循環をきたし、ますます全身の身体機能に悪影響をもたらします。最悪な状態では、寝たきりとなってしまうことがあります。

廃用症候群の診断

 廃用症候群には決まった検査はありません。動くことができない病気になったり、安静にしている時間が長く、普段できていたことができなくなっていた場合には廃用性筋萎縮が考えられます。また、動かせていた関節の動ける範囲が少なくなった時には関節萎縮と考えられます。廃用症候群は医師だけでなく看護師やリハビリの人、家族が見つけることもあります。

廃用症候群の治療

 高齢者が一度廃用症候群になると、元の状態まで改善させることは難しくなります。つまり廃用症候群は治療よりも予防が重要です。心機能の低下や誤嚥性肺炎は普通の病気と同じように投薬を中心に治療を行います。せん妄の時には精神神経用の薬を使用することもあります。可能であればできるだけ早く元の生活に戻すことが大切です。自宅から入院して廃用症候群になった場合は、入院のきっかけとなった病気が治ったら速やかに自宅に戻ると廃用症候群を防ぐことができます。やむを得ず長期臥床が必要であった場合は、早いうちから病気の治療を妨げない範囲でリハビリを行うことも重要です。

廃用症候群のケア・予防

 廃用症候群は、治療を必要とする疾患によって安静臥床を余儀なくされている状況で、運動をしないこと、寝ていること、日常生活に支障をきたす手足の位置や関節の角度(不良肢位:ふりょうしい)で長時間を過ごすことにより生じます。

 たとえば、下肢を骨折して、ベッド上での生活が長くなると、骨折した下肢の筋肉が萎縮したり、関節が拘縮してしまうだけでなく、起立性低血圧や、静脈血栓症、誤嚥性肺炎や褥瘡を起こしやすくなります。

 これらの廃用性症候群を予防するためには、できるだけ寝た状態を存続させないようにします。座位時間を増やしたり、ベッド上で上肢や下肢を動かす運動を行います。人とのかかわりが薄れると精神機能の低下をきたすので、言葉をよくかけ、面会をよくするようにしましょう。

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