健康長寿ネット

健康長寿ネットは高齢期を前向きに生活するための情報を提供し、健康長寿社会の発展を目的に作られた公益財団法人長寿科学振興財団が運営しているウェブサイトです。

高齢者の権利擁護とは

公開日:2019年2月13日 13時00分
更新日:2019年6月26日 13時44分

高齢者の人権

 高齢者の人権や財産等の権利を守ることは、超高齢社会において重要なことです。今後、独居高齢者が増加することが予測されること、さらに認知症や失語症など、コミュニケーションが困難な状態や、判断能力が低下した場合にも、家族や後見人の支援が必要です。

 また、地域の支援活動等も重要となります。成年後見制度は高齢社会への対応及び知的障害者・精神障害者等の福祉の充実の観点から、自己決定の尊重、残存能力※1の活用、ノーマライゼーション※2等の新しい理念と従来の本人の保護の理念との調和を旨として、柔軟かつ弾力的な利用しやすいことを目的にしています。

※1 残存能力:
残存能力とは、障がいをもっている人が残された機能を用いて発揮することができる能力のこと。
※2 ノーマライゼーション:
ノーマライゼーションとは、障がいをもつ者ともたない者とが平等に生活する社会を実現させる考え方のこと。

高齢者の尊厳ある人生とは

 高齢者の尊厳ある人生とは、自己決定できること、認知症となっても家族や地域が支えることで自分らしい人生が全うできること、さらに他者から人権や財産を侵されないことです。

 行政的には、2006年度から市町村が設置する地域包括支援センターにおいて相談窓口がおかれ、公的にも「権利擁護」に対する積極的な支援を受けることができます。中でも、成年後見制度や、日常生活自立支援事業の利用の支援等が重要となります。

高齢者の人権擁護1)

 高齢者の人権擁護については、法務省が管轄しています。あらゆる人権の侵害に対しての申し立てがあれば、保護の対応がなされます。各地域の法務局に窓口があります。

 法務局は、法務省の地方組織の一つとして、国民の財産や身分関係を保護する、登記、戸籍、国籍、供託の民事行政事務、国の利害に関係のある訴訟活動を行う訟務事務、国民の基本的人権を守る人権擁護事務等を行っています。

 法務局の組織は、全国を8ブロックの地域に分け、各ブロックを受けもつ機関として「法務局」があります。この法務局の下に、都道府県を単位とする地域を受けもつ「地方法務局」が置かれています。法務局、地方法務局及び支局では、登記、戸籍、国籍、供託、訟務、人権擁護の事務を行っており、出張所では主に登記の事務を行っています。

高齢者の財産保護1)

 高齢者の財産保護については、成年後見制度の利用が最も推奨されます。

 認知症や知的障害、精神障害等を理由に判断が困難な場合に、保佐人、補助人、後見人をつけることができます。判断力が低下した場合に早期に申請する必要があります。

 成年後見人の申請は家庭裁判所に行いますが、地域包括支援センターに相談することも可能です。

日常生活自立支援事業2)

 介護福祉サービスの利用に際して援助が必要な場合には、地域福祉権利擁護事業の利用が推奨されます。この事業でサービスを利用できる人は、判断能力が不十分なため、福祉サービスの利用を自分ひとりで判断することが難しい人や、福祉サービス利用料の支払いがひとりでは難しいなどの状態にある方で、高齢者か障害をお持ちの方です。

 この事業は第一に、介護保険のサービスなど、福祉サービスの利用援助がなされます。具体的には福祉サービスについての情報の提供や、福祉サービスの利用手続き、支払いの代行、苦情手続の代行が行われます。

 また、日常的な金銭管理サービスとして、年金や福祉手当の手続きの代行や税金、社会保険料、公共料金、医療費、家賃等の支払の代行が行われます。さらに書類等の預かりサービスとして、金融機関の貸し金庫にて、証書(年金証書、預貯金の通帳、権利証、保険証書)や印鑑(実印、銀行印)等を預かることもできます。

 日常生活自立支援事業のサービスの利用の方法は、お住まいの市町村社会福祉協議会にご相談ください。

障がい者・認知症高齢者権利擁護事業障害者・高齢者権利擁護センター

 障がい者・認知症高齢者権利擁護事業障害者・高齢者権利擁護センターは、認知症高齢者・知的障がい者・精神障がい者など判断能力が不十分な人に対して、日常生活や金銭管理で困っていることに対して、相談支援や金銭管理サービスを行います。

 相談支援として財産を安全に保管するための方法や、相続・遺言・契約などの支援を行います。

 金銭管理サービスは、ご自身の金融機関からの入出や公共料金の支払いについての支援を行います。

 利用の方法は、お住まいの障害者・高齢者権利擁護センターにご相談ください。

特定援助対象者法律相談援助(特定相談)4)

 総合法律支援法が改正され、2018年1月24日から、特定援助対象者法律相談援助(特定相談)という制度がスタートしました。これは、認知機能が十分でないために権利実現が妨げられている方で、法的支援を自発的に求めることが期待できない方を対象に、資力にかかわらない法律相談が利用できるという制度です。ただし、一定の資力を有している方は、相談料を負担する必要があります。

 特定援助対象者法律相談援助(特定相談)の特徴は、本人ではなく、本人を支援している福祉機関等から法テラス(日本司法支援センター)※3に連絡すると、法テラスと契約している弁護士や司法書士が、本人の自宅や施設等に出向いて、法律相談を行うという点です。相談内容はさまざまですが、債務整理と成年後見(保佐、補助を含む)に関する相談が、7割以上を占めており、実際に「成年後見制度」の利用につながるケースもあります。

※3 法テラス(日本司法支援センター):
法テラス(日本司法支援センター)とは、刑事・民事を問わず、国民がさまざまな法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスが受けられる法務省所管の公的な法人。

法テラス(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
法テラスサポートダイヤル 電話:0570-078-374

参考文献

  1. 厚生労働省 地域福祉権利擁護事業と成年後見制度の概要(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 厚生労働省 日常生活自立支援事業(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 厚生労働省 市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について(平成30年3月改訂) 高齢者虐待防止の基本(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 厚生労働省 成年後見制度利用促進ニュースレター 第7号(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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