健康長寿ネット

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骨折

公開日:2016年7月26日 16時00分
更新日:2019年6月19日 14時33分

高齢者の骨折は、骨強度の低下による脆弱性骨折が多い

 高齢者の骨折は、骨強度の低下による脆弱性骨折(ぜいじゃくせいこっせつ)が多いのが特徴です。大腿骨頚部、胸腰椎、上腕骨頚部、橈骨遠位端(とうこつ:前腕の親指側にある長骨)などに多く認められます(図)。本邦では、高齢者人口の増加に伴い、これらの骨折は増加傾向です。

図:高齢者の骨折部位を示すイラスト

図:高齢者の骨折部位

 とくに、脊椎椎体骨折は最も多く、日本人女性では70-74歳で25%、80-84歳で43%に認めたという報告もあります。(関連リンク1)

 大腿骨頸部骨折も頻度が高く、毎年10数万人が受傷しています。骨折を契機に車椅子、寝たきりや、閉じこもりになってしまう方も多く、加えて受傷者の約10%は1年以内に死亡するため、社会的問題となっています。

高齢者の骨折の原因

 高齢者の骨折の背景には、骨量の低下(骨粗鬆症:こつそしょうしょう)および、筋力・バランス機能の低下等により転倒しやすくなっていること(易転倒性:いてんとうせい)があります。

 骨粗鬆症は、骨密度検査で下記1または2により診断されます。

  1. 骨密度が若年成人平均値の70%以下
  2. 骨密度が若年成人平均値の70%-80%で、脆弱性骨折の既往を伴う

 また易転倒性は、ロコモティブシンドロームのテストにより判定可能です。(関連リンク2)

 なお、高齢者では稀に、がんなどの腫瘍の転移による病的骨折をおこしている場合もあり、注意が必要です。

高齢者の骨折の診断

 ほとんどの場合、転倒などを契機に痛みや変形を訴え、整形外科を受診してレントゲン画像で診断されます。

 しかし、「変形が軽度」「転倒を伴わない」「認知症により疼痛の有無がはっきりしない」など、初診時に確定診断が困難な症例も多く認めます。

 レントゲンで診断がつかない症例でも、CTやMRI画像を撮影すれば骨折の診断が可能です。

高齢者の骨折の治療

 骨折治療は大きく、手術療法と、手術によらない保存療法にわかれます。

 保存療法の場合は、骨折部の安定が得られるまで数週?数ヶ月間、骨折部の安静を保つ必要があります。脊椎圧迫骨折や橈骨遠位端骨折で骨折部の安定性が得られている場合は、こちらが選択されることが多いです。

 しかし、高齢者の下肢の骨折、とくに大腿骨頸部骨折の場合、長期の安静により、筋力低下・認知症・肺炎・褥瘡などを発症し、寝たきりになってしまう頻度が高いことがわかっています。そのため近年では、下肢の骨折の場合は可能であれば手術療法を選択し、早期からリハビリを行うことで機能予後の回復をはかる傾向にあります。

高齢者の骨折のケア・予防

 高齢者の骨折は、予防が何より重要です。そのためには下記のアプローチが有効です。

骨粗鬆症のケア

  • 定期的に検診をうけ、骨粗鬆症の程度を評価する
  • 骨粗鬆症があれば内服・注射治療により進行を抑える
  • カルシウム、ビタミンD、たんぱく質などの栄養素を適量に摂取する
  • 運動、日光浴を行う
  • 禁煙し、アルコール摂取は控えめにする

易転倒性のケア

  • ロコモティブシンドロームのチェックを行い、易転倒度を把握する
  • 転ばないよう、環境の整備を行う
  • 運動による筋力トレーニング、バランストレーニングを行う

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