 |
|
|
 |
|
現代日本社会に自殺が蔓延しています。年間3万人を突破しており、交通事故死が年間7-8千人台であることを考えるときわめて深刻な事態であるといえます(図1、表1)。特に自殺者が最も多いのが60歳以上の高齢者で、平成19年の統計では10万人あたり33.7人となっています(表2)。日本の高齢者の自殺率は諸外国と比較しても高くその中でも女性の比率が高いことが注目されます。また都市部に比べて農村部で高くなっています。若年者に比べて, 自殺行動が既遂(きすい:すでに、なし終わっていること)となる割合が非常に高いことがわかっています。一方で1980年代と比べると50歳代の自殺者の増加率が大きく、経済的な問題が大きいとされています。
|
|
|
○高齢者の自殺の動機 高齢者の自殺の動機としては病苦が6割以上を占めており、経済・生活問題、家庭問題がそれに続きますが、その背景にはうつ病などの精神疾患が存在していることが多いことが知られています(図2、表3)。加齢と共に疾患を有する頻度および同時に罹患している疾患数共に増加していきます。高血圧症(リンク1参照)、糖尿病(リンク2参照)、脳梗塞(リンク3参照)後遺症、心臓病、関節痛などの慢性的疾患をかかえることが多くなりますが、こうした継続的な身体的苦痛がうつ病の引き金となりうる危険性を持っています。 また、高齢になると近親者の死亡などによる環境変化、家庭内での人間関係のもつれを経験することが多くなり、こうした状態もうつ病の危険因子となります。うつ病に罹患するとすべてのことに対して悲観的なとらえ方をするようになり自殺志向が強まると考えられます(リンク4参照)。 高齢者のうつ病は自殺の危険性が高いにもかかわらず本人が医療機関にかかることをいやがることが多く、また周囲が「年のせい」と取り合わなかったり、認知症と混同したりして適切な治療が受けられないケースがしばしばあるのも問題です。こうした背景から、高齢者のうつを予防するという観点が重要となってきます。高齢者の引きこもりを防止し、生きがいを創造することが、結果的に高齢者の自殺予防にもつながると考えられます。
|
|
|
|
|
○自殺予防への取り組み(リンク5参照) 最近、高齢者の自殺予防への取り組みが地域レベルでなされるようになってきました。例えばうつの有病率が高く、高齢者の自殺が多かった新潟県松之山町では社会的な取り組みにより自殺者を劇的に減少させました。うつ病を手がかりに自殺念慮(ねんりょ:あれこれと思いめぐらすこと)のある高齢者をスクリーニングし、適切に治療につないだり、危険のある人を継続的にフォローすることが、高齢者自殺を予防することに有効であったとされます。もちろん、地元診療所や精神科医、保健所、精神保健福祉センターなどの協力体制が重要であることは当然です(参考文献1)。
|
|
|
|
|
文献
1.高橋邦明他:新潟県東頚城郡松之山町における老人自殺予防活動−老年期うつ病を中心に。精神神経学雑誌、100、469-485、1998
|
|
|