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貧血

公開日:2016年7月25日 04時00分
更新日:2019年5月31日 14時26分

高齢者の貧血

 血液には、白血球、赤血球、血小板という細胞成分が含まれています。血液の成分の中で、赤血球やヘモグロビン濃度が基準値より低下している状態のことを貧血とよびます。ヘモグロビンとは、赤血球に含まれる酸素を体のさまざまな組織に運搬するはたらきのあるタンパク質のことです。

 高齢者における貧血の原因は、若年者とは異なる傾向になることも多いです。高齢者における貧血の特徴、症状や原因、診断方法などについてまとめます。

高齢者における貧血の特徴

 若年者における貧血は、偏った食事による鉄分不足や女性の場合には月経過多、消化管からの持続的な出血などによるものが多いといわれています。つまり、鉄分の摂取不足や出血により血液の産生に必要な鉄が不足し貧血を引き起こしています。

 高齢者の場合にも鉄不足による貧血は起こります。しかし若年者に比べると、体の状態が悪いことによって、鉄は十分にあるのにうまく利用できない貧血(悪性腫瘍や感染症、膠原病など)や赤血球を産生する骨髄の病気による貧血が起きる可能性が高いという特徴があります。

高齢者における貧血の症状

 貧血の症状というとめまいが起きると考えている人も多いですが、貧血でめまいが起きる時は短時間で急激に出血している場合だけです。一般的には、貧血の症状は動悸や息切れ、疲れやすい、倦怠感などです。

 高齢者の場合には、日常の生活動作がゆっくりであることも多く貧血の症状に気づかない可能性があります。また、認知症のような物忘れや狭心症に伴うような胸の痛み、食欲がわかないなどという症状が出ることもあります。

高齢者における貧血の原因

 高齢者において起きる可能性のある貧血の原因についてまとめます。

鉄欠乏性貧血

 栄養不足による鉄分不足や悪性腫瘍による持続的な出血によって起きる貧血です。特に高齢者の場合には、胃がんや大腸がんなどを発症する可能性があるので胃や大腸の内視鏡検査を勧められることがあります。

 また、腰痛や関節の痛みに対して整形外科から処方される消炎鎮痛剤の内服によって胃から出血することもあるので注意が必要です。

慢性炎症性疾患による貧血(悪性腫瘍、感染症、膠原病)

 体の状態が悪いと十分に鉄があってもうまく血液を作れない状態になります。高齢者の場合には、悪性腫瘍による貧血が最も多く、次に感染症と膠原病が続きます。膠原病は、関節リウマチなどが含まれます。

骨髄性疾患(骨髄異形成症候群、再生不良性貧血など)

 骨髄異形成症候群(MDS: myelodysplastic syndromes)は高齢者に多く発症する骨髄の病気で、血液の細胞を作る骨髄に異常が起きて貧血になります。再生不良性貧血は、薬剤や放射線によって引き起こされることがあり、骨髄で血液を産生できない状態になっていることをさします。

老人性貧血

 原因不明の時に、老人性貧血と診断されることがあります。加齢にともなう赤血球産生能の低下や赤血球を刺激するホルモンに対する感受性の低下などが原因として考えられています。

貧血の診断

 貧血の診断は、まず採血検査で行います。血液検査では、赤血球やヘモグロビンだけでなく白血球や血小板、血液中の鉄に関連する項目、腎臓や肝臓の機能などについて調べます。赤血球やヘモグロビンが正常値以下に低下している場合に貧血と診断されますが、貧血において重要なのは原因となっている病気を特定することです。

 血液検査で異常があり、血液を作る元である骨髄の検査が必要と判断された場合には骨髄穿刺を行って最終的に診断します。

貧血の治療

 貧血の治療は原因によって異なります。

 鉄欠乏が原因の場合には鉄剤を補充します。悪性腫瘍や感染症、膠原病などの炎症性の病気がある場合には元の病気を治さないと貧血は改善しません。

 骨髄の病気による場合には、健康な造血細胞の移植や抗がん剤治療、輸血を行うことがあります。

 原因がわからないといわれている老人性貧血の場合には、定期的に外来で経過観察を行い、進行しないようであれば特に治療は必要ありません。

貧血に対する予防法

 貧血を引き起こす病気の中で予防できるものは、鉄分不足による鉄欠乏性貧血です。それ以外のものは、出血や炎症性疾患(膠原病や悪性腫瘍など)、白血病になる可能性もある骨髄の病気が含まれるので自分で予防することが難しくなっています。

図:鉄を多く含む食品を表す図。

 高齢になると若い時よりお腹が空きづらかったり、運動不足により必要とする食事量が減ることがあります。1日30分以上は歩くように心がけ、バランスのよい食事を摂るように心がけると栄養不足にならず、十分な鉄分を摂取できる可能性があります。

 それから特に症状がなくても、1年に1回定期的に健康診断を受けるのも早めに貧血に気づける良い機会となるかもしれません。

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