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脂質異常症と認知症予防

公開日:2016年7月25日 20時00分
更新日:2019年11月 8日 16時06分

脂質異常症とは

 脂質異常症とは、血液の中に正常値以上の中性脂肪やコレステロールが存在している状態をいいます。

 LDLとは「悪玉コレステロール」と呼ばれるもので、動脈硬化を促進させてしまう恐れがあります。

 一方、HDLとは「善玉コレステロール」と呼ばれるもので、体内に残っている古いコレステロールを回収して肝臓に送る働きがあり、動脈硬化を予防する働きがあります。よって、脂質を正常にするには、中性脂肪(トリグリセライド)・LDLを減らすとともに、HDLを上げる必要があります。

 脂質異常症と診断される基準は、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」では、以下の表の通りです。

表:脂質異常症診断基準
高LDLコレステロール血症高トリグリセライド(中性脂肪)血症低HDLコレステロール血症境界域高LDLコレステロール血症
140mg/dl以上 150mg/dl以上 40mg/dl未満 120~139mg/dl

認知症と脂質異常症の関係について

 認知症の多くはなぜ発症するかはまだ解明されておらず、現在も研究が進められています。しかし一方で、脂質異常症の持病がある方は、ない方に比べてある種類の認知症の発症率が高いということがわかってきました。

 その種類とは、「脳血管性認知症」です。

脂質異常症が認知症発症につながる要因

 なぜ、脂質異常症だと脳血管性認知症の発症につながるのでしょうか?

 それは、「動脈硬化」が関係しています。

 脳には、大小様々な血管が張り巡らされており、人間がつかさどっている複雑な思考や行動を可能としています。

 脂質異常症によって動脈硬化が進行すると、脳内の血管も硬化が進んでしまい、通常よりも血液の流れが悪くなります。

 脳血管性認知症は、まさに「脳の血流が悪くなることで発症する認知症」とされており、脂質異常症による動脈硬化によって引き起こすリスクが高くなることが考えられるのです。

認知症予防のための生活習慣の改善について

 ずっと若々しく過ごすためにも、認知症はぜひ予防したいですよね。

 そこで心がけたいのが、「生活習慣の改善」です。

 脳血管性認知症は脂質異常症の他にも、糖尿病や高血圧などによっても発症率が上がるという研究結果があります。特に脂質異常症の場合、以下のことに注意していきましょう。

食事

 脂質異常症の改善には、脂を控えめにした食事が有効です。特に脂肪が多いお肉を食べすぎてしまうと、悪玉コレステロールが体内に蓄積してしまいます。

 好物ばかりを偏って食べるのではなく、LDLコレステロールを減らすために有効な海藻や野菜、果物類などをバランスよく食べることを意識します。

 また、食事は常にお腹いっぱい食べるのではなく、腹八分目ほどを意識すると余計なカロリーも抑えることができ、効果的です。

適度な運動

 年を取っていくと、外出が億劫になってしまいがちです。しかし、適度な運動はカロリー消費を促すことにも効果的ですし、体内に蓄積しているコレステロールを減らすことにもつながります。

 張り切って一度に過度な運動をしてしまうと、かえって足腰を痛めてしまう可能性があるので、長く続けられるためにも、そして途中で挫折しないように、毎日の生活に、まずは15分程度から、こまめに運動を取りこんでいくことをお勧めします。

ストレスをためない生活

 ストレスは万病の元とされています。過度なストレスは暴飲暴食や、生活リズムを狂わせてしまう恐れがあります。意識をしてストレスをためない生活を心がけるようにしましょう。

定期的に受診を行う

 脂質異常症の場合、薬によって数値をある程度コントロールすることが可能です。一方で、LDLコレステロールや中性脂肪の値が高くても症状として出現しないために、つい放置してしまい、薬も忘れがちになってしまいます。そのまま放置してしまうと、コレステロールが上がって動脈硬化を促進させ、認知症を始めとする様々な症状を引き起こす恐れがあります。

 症状がなくても、一度脂質異常症と診断されたら定期的に医師の診察を受け、正常範囲内でコントロールすることがとても大切です。

関連書籍

 公益財団法人長寿科学振興財団は超高齢社会における喫緊の課題として認知症の実態、診断・予防・ケアについて学術的研究成果を「認知症の予防とケア」と題して研究業績集にまとめました。研究業績集の内容を財団ホームページにて公開しております。是非ご覧ください。

公益財団法人長寿科学振興財団 「認知症の予防とケア」平成30年度 業績集

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