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多系統萎縮症のケア

公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2019年2月 1日 20時34分

多系統萎縮症に対してどのようなケアを行えば良いか

 多系統萎縮症は、病状の進行により、様々な症状がみられるようになりますので、それぞれの症状に合わせたケアが必要です。

症状1 起立性低血圧に対してのケア

 起立性低血圧は多系統萎縮症の代表的な症状の1つです。特に在宅療養中には、ベッドから起き上がるときに意識を失ってしまう(失神する)ことがあります。そのため急に起き上がらず、上体を徐々に起こしてゆっくりと姿勢を変えるよう、指導する必要があります。

 特に、ベッド上で横になって過ごす時間が長くなると、起立性低血圧がみられやすくなります。ベッド上で横になって過ごす時には、下肢に弾性ストッキングを装着することで、起立性低血圧の症状を予防できることがあります。

症状2 小脳症状に対してのケア

 小脳症状に対しては、薬物での治療が行われますが、同時に大切なのが、リハビリテーションです。治療としてのリハビリテーションだけではなく、日常生活の中で、自らも積極的にリハビリテーションを行っていけるよう、支援や介助をすることが大切です。

 起き上がり動作や、ベッドに横になる動作、歩行、会話など、今残っている機能を生かして無理なく行っていく必要があります。これらの動作を1人で行うことで、転倒のリスクが高まります。家族や介護者と一緒に行うことで、転倒リスクを軽減していくことができます。

症状3 栄養状態に対してのケア

 疾患により筋緊張が亢進したり、失調症状としての球麻痺などにより、嚥下機能が低下します。嚥下状態を観察し、食べやすい形状に整えたり、水分にとろみをつけるなどにより、誤嚥を予防することが必要です。嚥下障害に対して医療処置を必要とするかどうかは、嚥下機能の検査をする必要があります。在宅療養の前には、嚥下機能を評価しておくと良いでしょう。

 万が一、急な発熱が見られた場合には、誤嚥性の肺炎も疑います。

症状4 コミュニケーション障害に対してのケア

 小脳症状の1つに、言語障害があります。本人が意図しなくても、断綴(だんてつ)性言語※1となって聞き辛さが増し、会話が成立しなくなります。これにより、伝えたいのに伝わらないという状況になり、患者の負担にもなります。そのため、コミュニケーション手段の工夫が必要となります。

 残存機能(今現在、残っている機能)を使い、意思表示用の文字盤などを活用して、積極的なコミュニケーションが取れるような、工夫をしていくことが必要です。

※1 断綴(だんてつ)性言語:
小脳性の疾患などでみられる構音障害のひとつ。発語は時に爆発的になったり、急に速度が落ちたり、とぎれることもある。音節が不明瞭で聞き取りにくくなる、急に発語の調子が変わるなど、酔っているかのうような話し方となる(断続性言語)。

多系統萎縮症患者への社会的ケアとは

 多系統萎縮症は、国が定める特定疾患(難病)ですので、40歳以上であれば介護保険を利用することができます。要介護認定を受け、介護保険を申請することで、介護に必要な費用の一部が助成され、様々なサービスを受けることができます。

 例えば、表1に示したようなサービスを、1割の自己負担で利用することができます。しかし、要介護の段階によって、助成可能な金額の上限額が決まっていますので、優先順位を決めて利用していくことになります。

表1:介護保険によって受けられるサービス
サービスの種類 利用できるサービスの内容
居宅サービス 訪問介護、訪問看護、訪問入浴介護、訪問リハビリ、通所リハビリ、デイサービス、ショートステイなどの利用、福祉用具の貸与
施設入所サービス 介護保険が利用可能な療養病床などの利用
介護保険で貸与(レンタル)できる福祉用具
  • 車イス(付属品も可)
  • 歩行器
  • 特殊寝台:電動ベッドなど
  • 褥瘡予防用具:エア・マットなど
  • 体位変換器
  • 手すり(取り付け時に工事を伴うものは除く)
  • 歩行補助杖:松葉杖、ロフストランド杖(カナディアン・クラッチ)、多点杖(四点杖など)
  • 移動用リフト:床走行式、固定式、据え置き式
介護保険で購入できる福祉用具
(直接肌に触れるものは、基本的に購入となる)
  • 腰掛便座
  • 特殊尿器
  • 入浴補助具
  • 簡易浴槽

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