健康長寿ネット

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第65回 鍵をめぐるあれこれ

公開日:2024年4月12日 09時00分
更新日:2024年4月12日 09時00分

宮子 あずさ(みやこ あずさ)
看護師・著述業


 施設より在宅、という国の方針の中で、思うように動けない人が自宅に戻る例が増え続けている。同居者のいない人が、自分でドアの鍵を開けられない場合、支援者はどのようにして家に入ればいいのだろうか。

 こうした時に、活躍するのがキーボックス。私が訪問看護の仕事をしていた頃も、これを使う例があった。2年経ち、今はもっと増えているのではないか。

 キーボックスは、何桁かの番号を合わせれば蓋が開く小さな箱。ここにドアの鍵を入れておけば、番号を知る人だけがこれを開け、ドアを開けることができる。

 訪問看護を受けている利用者さんのもとには、私たち以外にも、さまざまな支援者が訪問する。ケアマネジャー、ホームヘルパー、役所の職員、訪問診療......。人によっては、1日に何度も支援者が出入りし、担当者の交代もあり得る。

 キーボックス以外には、合鍵を各人が持つ方法もある。しかし、合鍵は持った人がなくすリスクもあり、いざという時、持っていなければ駆けつけてもドアが開けられない。やはり、合鍵の共有よりキーボックスの方が、総合的なメリットが大きいと言える。

 しかし、このキーボックスを付けられない集合住宅もあるようだ。

 2月27日付朝日新聞朝刊に、<一人暮らしの介護、防犯との兼ね合いは「キーボックス」設置問題>という見出しを見つけた。

 記事によれば、居宅介護を受ける際、支援者からキーボックスの設置を求められる事例が増えている一方、家主や管理者が防犯上の理由から断る場合もあるとのこと。これに対し、専門家は「ささやかにも見える話だが、改善されなければ、在宅での尊厳ある支援をめざす地域包括ケアは絵に描いた餅になる」。

 いやいや、これは本当にその通り。私がキーボックスを使って訪問していた利用者さんには、持ち家の人もいれば、賃貸アパートの人もいた。設置に当たっては本人の気持ちひとつだったが、年々うるさくなっているのだろうか。

 実際、キーボックスを付けさせない家主や管理者の言うように、キーボックスが開けられ、鍵を開けられてしまうリスクは否定できない。とは言え、現状では、複数の支援者が鍵を共有する方法として、キーボックス以外思いつかず、これが居宅支援の障害になり得るのも確かである。

 ただし、持ち家であれば、こうした特定少数の人がドアを開けやすい鍵を工夫する方法もある。

 拙宅の鍵は暗証番号入力かカードをかざして開けるオートロック。夫が中にいるはずなのに電話連絡がつかない、というような時は、知人に連絡して暗証番号を教えれば、入って確認してもらえる。

 暗証番号は初期化して変更が可能なので、人に教えたあとは、変更するのもよい。いざという時に備えるには、すぐれた電子錠だと思うが、ひとつ問題がある。

 それは、ダブルロックにすると、この鍵の良さが生きないこと。どうしてもというなら、同じものを2つ付けるか......。わが家はそこまではせず、シングルロックだが、これが気になる人もいるだろう。

 鍵については考えるほどに、利便性と安全性が両立しないと思う。居宅支援を受けながら暮らす。いざという時、誰かに見に来てもらえる。それを可能にする鍵はないものか.......。

 完全なものがない以上、当面は、利便性と安全性、いずれを重視するのか。話し合って決めていくしかない。改めて、生活というのは、具体的な策が大事だと痛感する。

<私の近況>
 キーボックスは、さまざまな業者が出入りする工事現場でもよく見かけます。検索してみたら、こんなにいろいろ出てきました。導入したいと思う方は、最新のものを検索して探してみてください(写真1)。また、参考までに、わが家の鍵もご紹介します(写真2:上が屋外、下が屋内)。改めて調べてみると、株式会社FUKIの電気錠『INTER LOCK』というものでした。わが家の製品は2012年に付けたものなので、サイトにはもう出ていません。さまざまな改善点があるようですが、ダブルロックにしにくいのは相変わらずのよう。そこさえ気にならなければ実に使いよい鍵なのですが。

最新のキーボックスの検索結果を表す写真
写真1(キーボックス―検索画像より)
著者の家の鍵を表す写真
写真2

著者

筆者_宮子あずさ氏
宮子 あずさ(みやこ あずさ)
看護師・著述業
1963年生まれ。1983年、明治大学文学部中退。1987年、東京厚生年金看護専門学校卒業。1987~2009年、東京厚生年金病院勤務(内科、精神科、緩和ケア)。看護師長歴7年。在職中から大学通信教育で学び、短期大学1校、大学2校、大学院1校を卒業。経営情報学士(産能大学)、造形学士(武蔵野美術大学)、教育学修士(明星大学)を取得。2013年、東京女子医科大学大学院看護学研究科博士後期課程修了。博士(看護学)。
精神科病院で働きつつ、文筆活動、講演のほか、大学・大学院での学習支援を行う。

著書

「まとめないACP 整わない現場,予測しきれない死(医学書院)、『看護師という生き方』(ちくまプリマ―新書)、『看護婦だからできること』(集英社文庫)など多数。ホームページ:ほんわか博士生活(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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