健康長寿ネット

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サルコペニアに対する栄養

公開日:2021年10月29日 10時00分
更新日:2023年7月14日 10時27分

 サルコペニアに対して運動を行うことはとても大切ですが、運動と同様に重要と考えられているのがたんぱく質の摂取です。たんぱく質は筋肉を作る上で不可欠な栄養素とされており、食事からしっかりと摂ることが求められています。運動と同様に、サルコペニア診療ガイドライン2017年版において、サルコペニアの予防や治療にたんぱく質(アミノ酸)を摂取することが推奨されています1)

 サルコペニア対策として、1日で体重1kgあたり1.2~1.5g程度のたんぱく質摂取が必要とされています2)。つまり、体重が60kgの方であれば、毎日72~90g程度のタンパク質を摂取することが求められます。たんぱく質は、肉、魚、大豆、卵、乳製品などの豊富に含まれるので、このような食材を意識的に摂取することが大切です。なお、これらのたんぱく質は、なるべく3食均等に摂ることが大切です。朝食時や昼食時のたんぱく質摂取量が少なくなりやすいので、特に朝食や昼食時のたんぱく質を意識すると良いと思います(もちろん、個人差があります)。

 適切な量のたんぱく質を摂取することは大切ですが、どのくらい摂れているのか、詳細まで把握することは難しいと思います。そこで、ここでは手ばかり栄養法という簡単なたんぱく質摂取の目安を紹介します。ご自身の手を使って、たんぱく質の摂取量をある程度把握するというものです。たんぱく質を豊富に含む食材を、両手にのるくらいの量を摂ることが理想とされています(1日分)(図1)。

図1:1日分のたんぱく質の摂取量の目安を手ばかり栄養法で表す図。
図1 手ばかり栄養法
(たんぱく質を豊富に含む食材を両手に乗るくらいの量を食べることが1日のたんぱく摂取量の理想)

 なお、たんぱく質を摂ることだけが大切というわけではありません。主食や副菜などもバランスよく摂ることが大切で、多様な食品摂取が体の機能を維持するのに重要とも考えられています3)。図2に示す食品摂取の多様性得点は、肉類、魚介類、卵類、牛乳、大豆製品、緑黄色野菜類、海藻類、果物、いも類、油脂類の10食品群より構成されるもので、それぞれ「ほぼ毎日摂る」場合を1点とし合計得点を計算します。この得点が高いほど、筋肉の量や機能が良好に保たれやすいことが報告されています4)

図2:食品摂取の多様性評価票を示す図。魚介類、肉類、卵、牛乳、大豆・大豆製品、緑黄色野菜類、海藻類、いも類、果物類、油脂類から構成される。
図2 食品摂取の多様性得点3)

 なお、糖尿病や腎臓病などの基礎疾患をお持ちの方の場合、たんぱく質の摂取を控えるように指導されている場合があります。そのような場合には、一度かかりつけの医師にご相談ください。

文献

  1. サルコペニア診療ガイドライン作成委員会会編. サルコペニア診療ガイドライン2017年版. ライフサイエンス出版2017.
  2. サルコペニア診療実践ガイド作成委員会編. サルコペニア診療実践ガイド. ライフサイエンス出版2019.
  3. 熊谷修,渡辺修一郎,柴田博,他.(2003)地域在宅高齢者における食品摂取の多様性と高次生活機能低下の関連.日本公衆衛生雑誌.50, 1117-1124.
  4. Yokoyama Y, Nishi M, Murayama H, Amano H, et al. Dietary Variety and Decline in Lean Mass and Physical Performance in Community-Dwelling Older Japanese: A 4-year Follow-Up Study. J Nutr Health Aging. 2017;21(1):11-16. doi: 10.1007/s12603-016-0726-x. PMID: 27999844.

筆者

写真:筆者_山田実先生
山田 実(やまだ みのる)
筑波大学人間系 教授
最終学歴
2010年 神戸大学大学院医学系研究科博士後期課程修了(保健学博士)
主な職歴
2008年 京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻助手、2010年 同・助教、2014年 筑波大学人間系准教授、2019年 同・教授、現在に至る。
専門分野
老年学、リハビリテーション

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 長寿科学研究業績集は学術的研究成果の中で、社会のニーズにあったテーマを医療等従事者向けに編集した研究マニュアルです。各関係機関に活用いただくことで研究成果の普及啓発を図かっております。

 令和2年度長寿科学研究業績集は「フレイル予防・対策:基礎研究から臨床、そして地域へ」(令和3年3月発刊)と題し、著名な先生方にご解説いただきました。

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業績集「フレイル予防・対策:基礎研究から臨床、そして地域へ」(財団ホームページ)(新しいウインドウが開きます)

画像:令和2年度長寿科学研究業績集の表紙画像

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