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認知症の診断

公開日:2016年7月26日 21時00分
更新日:2019年11月 8日 16時00分

認知症とは

 認知症とは、記憶障害とそれ以外の認知機能障害が存在し、社会的または職業上の能力の低下をきたした状態です。記憶障害はあっても他の認知機能は正常で、日常生活に問題がない場合は、加齢による良性のもの忘れや軽度認知機能障害(MCI)と呼ばれるものを含んでおり、その時点では認知症とは診断されません。

 また、意識障害や抑うつ状態のときにも認知症と似た症状を示すことがあるため注意が必要です。

記憶障害以外の認知機能障害とは

抽象思考の障害

 例:「服を出して」と言われるとわかるが、「着替えを出して」と言われるとわからない。「病院に行く」と言われても病院が何をするところかわからないので行かない。

判断の障害

 例:お店で物を手にして、お金を払わず出てきてしまう。行きたいところがあると、信号や車を無視して道路を渡る。

言葉の障害

 例:言いたいことが言葉にならない。何を言われているのかわからない。書いてある文字が理解できない。

動作の障害

 例:フォークがあるのにスプーンで食べ物を刺そうとする。ズボンをはいた後にパンツをはく。

ものごとを計画立てて行う能力などの障害

 例:これまで作れた料理が作れなくなる。

認知症をきたす疾患

 頻度の多い認知症をきたす疾患には以下のものがあります。

  • アルツハイマー病(認知症の約50%)
  • 脳血管性認知症(約20%)
  • レビー小体型認知症(約20%)

 その他に脳の疾患で認知症をきたすものは多くあります。

  • ピック病
  • 脊髄小脳変性症
  • 頭部外傷(脳挫傷や脳内出血、慢性硬膜下血腫)
  • 脳腫瘍
  • 脳炎 など

 これらは脳が原因で認知症をきたす疾患ですが、他にもホルモンの異常、肝臓や腎臓などの臓器の不全によるもの、ビタミンB1欠乏など栄養障害によるもの、心不全や呼吸不全などによる低酸素脳症、服用している薬、一酸化炭素や有機化合物によるものなど脳の病気ではない原因の場合があります。

 これらの疾患の中には、アルツハイマー病のように現時点では治療の難しい疾患もあれば、治療によってほとんど元通りに回復するものもあるため、できるだけ早く正確な診断を受けるようにする必要があります。

認知症の最初の症状

 認知症の最初の症状としてしばしばみられるのは、同じことを何度も言ったり、聞いたりするようになった、置き忘れやしまい忘れが目立つようになった、日常的な物事に関心を示さなくなった、やたらと怒りっぽくなった、といった症状です。

 このような症状がみられた場合には、もの忘れ外来などの専門外来を受診することが早期発見・早期治療につながります。

認知症の診断方法

 病院へ行くとはじめにどのような症状が、いつ、どのように出現し、どのように経過をしたのかといった病歴の聞き取りがあります。そしてどのような認知症の症状があるか、程度はどのくらいかを確認するために長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やミニメンタルステート検査(MMSE検査)といった検査を行います。例えば日付を尋ねたり、単語の記憶力を見たり、計算をしたり、図形を書いたりといったテストです。そしてその他に神経的な異常がないかどうか、身体検査で麻痺やパーキンソン症状などの有無をチェックします。

 認知症で多いのは脳の疾患なので、脳の画像検査(CTやMRI検査など)や、機能画像検査(脳の血流や代謝を調べる脳血流シンチグラフィーやPETなど)が行われます。また必要に応じて脳波検査や脳の周りを保護している髄液の採取なども行われます。脳以外の疾患の可能性があれば血液検査なども追加し、それらの結果から総合的に診断されます。症状が軽いうちは診断にいたらないこともあり、その場合はしばらく様子をみたり、薬を使ってみて反応を確認することもあります。

関連書籍

 公益財団法人長寿科学振興財団は超高齢社会における喫緊の課題として認知症の実態、診断・予防・ケアについて学術的研究成果を「認知症の予防とケア」と題して研究業績集にまとめました。研究業績集の内容を財団ホームページにて公開しております。是非ご覧ください。

公益財団法人長寿科学振興財団 「認知症の予防とケア」平成30年度 業績集

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