健康長寿ネット

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アルツハイマー病の根本治療の可能性

アルツハイマー病の治療の今

 認知症患者さんのうち、全体の約6割は「アルツハイマー病」だといわれています。発症すると脳全体が徐々に委縮してしまうため、発症後8~12年ほどで意思疎通が困難となり、最終的には寝たきりとなってしまいます。

 現代の医療では、進行を遅らすことができる薬はありますが、治癒する薬は開発されていません。そのため、進行する症状に対して、抗精神病薬を対症療法として処方し、症状の改善を図るとともに、脳を活性化させるために、運動、音楽療法などを行うことが、現在行われています。

アルツハイマー病の病理変化

 アルツハイマー病がなぜ発症するかは解明されていませんが、アルツハイマー病の脳には特徴的な変化がみられることがわかっています。それは、「アミロイドβ」と「タウ蛋白」という、二つの物質の存在です。

 アルツハイマー病の脳は、通常の高齢者の脳に比べて、この「アミロイドβ」と「タウ蛋白」が比較にならないほど多量に出現していることがわかっています。

 しかも、このアミロイドβという物質は、発症する10年以上前から脳に沈着し始めるとされています。よって、アルツハイマー病の発症、進行には、このアミロイドβとタウ蛋白が深く関係していると考えられているのです。

アルツハイマー病発症について、有名な「仮説」

 アルツハイマー病の脳に見られる「アミロイドβ」と「タウ蛋白」という二つの物質から、有名な「仮説」があります。それが、「アミロイド仮説」と呼ばれるものです。

 アミロイド仮説では、アミロイドβが脳の神経細胞の外に凝集・沈着し、老人斑と呼ばれるシミのような異常構成物を作ります。また、脳の神経細胞内にあるタウ蛋白質に本来行う必要がない「リン酸化」させることで、異常なタウ蛋白に変化させます。こうして、老人斑は神経細胞の外から、異常なタウ蛋白は細胞内から神経細胞を攻撃します。

 すると脳の神経細胞が変性、もしくは消失してしまい、これが大量に起こることでアルツハイマー病を発症する、という説です。

 この説を証明するために、今まで約10年間にわたり、新薬の開発や研究が世界中で行われていましたが、有効な効果を得ることができず、この仮説自体が間違っていたのではないか、とまで言われていました。

平成27年に発表された「新薬」

 そんな中、平成27年3月にフランス・ニースで開かれた国際アルツハイマー・パーキンソン病会議において、世界が注目しているアルツハイマー症の治療薬についての発表がされました1)

 発表された新薬は、アミロイド仮説に基づき、このアミロイドβを脳内から取り除くことに世界で初めて成功した薬についての発表だったのです。

 この薬を用いて、実際にアミロイドβを取り除くことで症状に改善がみられた場合、長年の「仮説」が証明されることになり、さらなるアルツハイマー病の根本的な治療薬開発に弾みがつくことが期待されています。

今はまだ「仮説」の段階

 平成29年2月現在、未だにアルツハイマーの発症について明確に解明はされていません。

 今回開発された薬はあくまでも「仮説に基づいて開発された薬」であり、この薬が開発されたからといってすぐにアルツハイマー病を根本的に治療する薬が登場する、というわけではありません。

 今後、アミロイドβがアルツハイマー病の発症原因だったと証明できれば、アミロイドβを脳から排除することでアルツハイマー病の発症を防ぐことができるかどうかの研究へと、研究が進んでいくことになります。

現在進行しているアルツハイマーについての根本的治療

 アルツハイマー病は、脳全体が委縮することで進行していきます。

 そのため、仮に新薬が開発されたとしても、すでに委縮してしまっている脳が回復するかどうかは未だ不透明となっています。

 今まではアルツハイマー病を発症すると、根本的な治療ではなく、いかに進行を遅らせるかという治療が行われていました。

 今回発表された新薬がアルツハイマー病の発症を抑えることができたら、将来的にアルツハイマー病の進行を「遅らせる」のではなく、「完全に止める」ことができるかもしれません。

 一筋の明るい光が見えた、認知症治療。

 今後の研究が進むことが期待されています。

参考文献

  1. 2015年03月27日プレスリリース「 バイオジェン、アルツハイマー病治療薬候補第1B相試験の中間解析結果を発表」バイオジェン・ジャパン(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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