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白内障の治療

公開日:2016年7月25日 11時00分
更新日:2022年4月19日 11時26分

白内障の治療について

 現在の医学では、進行した白内障に対しては、手術以外に視力を回復させる方法はありません。比較的軽症であれば、薬物を使用した治療方法があり、白内障の進行を遅くする目薬が保険適用になっていますので、眼科医で処方してもらうことができます。

白内障の治療 点眼薬

 白内障を発症すると、白内障の進行を遅くする点眼薬のピレノキシンかグルタチオンが処方されます。以前は、内服薬も処方されていたことがありますが、現在は処方されることがほとんどありません。

 ピレノキシン(カタリン®、カリーユニ®)は、白内障惹起物質であるキノイド物質の水晶性たんぱく質への結合を防ぐ、という効果が期待できます。つまり、水晶体の濁りの原因となるたんぱく質を、蓄積しにくくする効果です。

 グルタオチン(タオチン®)は抗酸化作用があります。

白内障の治療 手術の適応

 白内障を発症してもすぐには手術をしない場合もあります。視力がどこまで低下したから手術をするという、厳密な基準はありません。

 しかし、以下のような条件に当てはまったら、手術についてかかりつけ医と相談していくことが必要です。

  • 視力低下が仕事に影響を与えている
  • 外の光がまぶしくて、極端に見えにくくなっている
  • 視力が0.7以下まで低下し、運転免許証の更新ができない

白内障の治療 手術の方法

 白内障の手術は、濁った水晶体を取り除き、代わりに図1のように人工の眼内レンズを、水晶体の袋の中に埋め込みます。そして、水晶体周辺の透明な水晶体嚢(セロファン状の袋)の前の部分に小さい切り込み(2~3mm程度)をいれます。そこから特殊な機械(超音波乳化吸引器)を水晶体の袋の中に挿入し、水晶体嚢内の濁ったしまった水晶体を砕いて吸引します。その後、人工の水晶体を水晶体嚢の中に埋め込みます。

図1:水晶体の袋の中に埋め込まれた人工の眼内レンズ

図1:人工の眼内レンズ

白内障の手術の手順

  1. 局所麻酔をする
  2. 角膜(あるいは強膜)を切開し、水晶体嚢(図2)の前面に切り込みを入れる

    図2:眼内の水晶体嚢を示す図

    図2
  3. 超音波乳化吸引器を使って、水晶体嚢を残し、中の濁っている部分だけを破砕して吸引して取り除く(図3)。

    図3:超音波乳化吸引器の使用イメージ図

    図3
  4. 取り除いた水晶体の代わりに人工水晶体を入れて、ピントが合うように調整する(図4)

    図4:取り除いた水晶体の代わりに人工水晶体を入れたイメージ図

    図4

 白内障手術の所要時間は、およそ20~30分です。局部麻酔をしているため手術中に痛みはありません。

白内障の手術後

 手術をして新しい人工の水晶体が入ると、今まで濁っていた視界がクリアになり、徐々に視力を取り戻すことが出来ます。

 白内障以外に目の病気がない場合は、手術が終わって比較的早い時期に、視力が回復していくことを実感できます。白内障の他に目の病気があった場合、視力が回復しないこともありますが、視界そのものは明るく見やすくなります。手術で挿入した人工レンズは、変形したりピントを合わせることはできないため、近くや遠くを見るためには、メガネを着用することになります。

 新しい視力に合わせたメガネは、視力回復が見込まれる、手術後2~3カ月ころに作ります。

 緑内障や網膜の病気など合併症を併発している場合、視力が回復しないこともあります。詳細は、かかりつけの眼科医に確認してください。

白内障の手術後合併症

 白内障の手術は患者さんにとって安全に視力を回復することが出来る方法です。しかし、手術後に合併症が起こることもあります。

 合併症は1週間程度で改善する角膜浮腫や虹彩炎、眼圧上昇のような軽いものから、人工レンズの固定が不十分のため起こるレンズのずれなどがあります。深刻な合併症には、失明に至ることもある細菌感染による眼内炎があります。割合としては、およそ3,000~2,000件に1件くらいです。

 この他にも、手術後2週間から1カ月以上たってから発症する可能性があるものとして、嚢胞様黄斑浮腫があります。黄斑に浮腫が起きる疾患ですが、一時的なものが多く、自然に治ることもありますが、場合によっては適切な処置を受けなければ治らないこともあります。

 また、図5のように手術の1~2年後に人工レンズを埋め込んだ水晶体嚢の後ろが濁ってくる合併症は、後発白内障といい、一番多い合併症です。

図5:後発白内障のイメージ図。

図5:後発白内障のイメージ
画像:日本眼科学会 1)

 さらに、件数は少ないものの、網膜剥離、硝子体出血、眼内レンズの落下など、視力障害きたす合併症もありますので、手術後10日間くらいは、目に違和感がないか注意を払う必要があります。

 それ以降も、定期的な診察により合併症を早期に発見できることがありますので、眼科医の指示に従って、受診するようにしましょう。

画像引用元

  1. 日本眼科学会(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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