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第2回 森の歌い手 ミソサザイ

公開日:2020年8月 6日 09時00分
更新日:2020年8月 6日 09時00分

上田 恵介
公益財団法人日本野鳥の会会長、立教大学名誉教授


 初夏になると山地の森はキビタキやオオルリ、コマドリなど、南から渡ってきた夏鳥たちの歌声でいっぱいになる。これらの夏鳥たちは皆それなりの美声の持ち主だが、私の好きな初夏の森の歌い手はミソサザイである。

 冬、日本各地の里山で越冬していたミソサザイたちは、亜高山帯の森に戻ってくる。ミソサザイたちはまだ残雪の残る森で、早速さえずり始める。早口で、長く続くミソサザイの美しい歌声は、ヒバリやメジロのさえずりにも似て、まさに「森の歌姫」といいたいところだが、さえずっているのはメスではなくオスである。

 ミソサザイのオスは岩の上や高い木のてっぺんにとまり、短い尾をピンと立てて、胸をはって、小さい体に似合わず大きな声を張り上げる。あの小さい体のどこからこんなに大きな声が出るのだろうと思うくらいの声量のあるさえずりである。十数秒にもわたって続く複雑なミソサザイのさえずりはライバルに対するなわばり宣言であると同時に、メスをなわばり内に呼び込む求愛の歌である。

 苔むした大きな岩がゴロゴロしているような深い森が彼らの繁殖場所である。オスたちはまず大きな岩の下や倒木の根っこの陰を選んで、求愛のための巣づくりを始める。ミソサザイの巣は柔らかい緑のコケを細い草の葉やコメツガなどの細い枝で編んだ精巧なもので、彼らの小さい体には不釣り合いな直径二十センチもある大きなボール状をしている。大岩の下やオーバーハングした崖の下、登山道の脇の土が崩れたところや、渓流沿いの大きな岩の割れ目なども、彼らにとって好適な巣場所である。

 山を歩いていて、渓流の近くで水音に負けないくらいの大声でさえずっているミソサザイを見かけることが多いのは、渓流沿いの崖にミソサザイにとって好適な巣場所がたくさんあるからである。

 メスがやってくると、オスは翼をふるわせてメスを巣へ誘う。メスはオスの後を追って巣へたどりつくと、中へ入ったり出たりしながら巣の品定めをする。メスがいったい何を基準にして巣を選んでいるのかはよくわからないが、この巣をメスが気に入ると、つがいが成立する。つがいになったメスは巣の内装を完成させて、産卵する。しかし卵を抱くのも、ヒナの世話も、これ以降の繁殖活動はすべてメスの仕事となる。

 ではつがいになった後のオスは何をしているのだろう。実はオスはまた新しい求愛巣をつくり、さえずり活動に戻って、次のメスを獲得するのに精を出すのである。6月下旬に繁殖をやめるまで、信州で研究された例では、多いオスでは8個もの求愛巣をつくり、4羽ものメスを獲得することもあった。イギリスで研究された例でも、オスが12個もの巣をつくり、6羽のメスを獲得したことが知られている。

 ミソサザイは鳥の中ではめずらしい一夫多妻の鳥なのである。

写真:ミソサザイがさえずる様子を表す写真
ミソサザイ

転載元

公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌Aging&HealthNo.94

Aging&Health(エイジングアンドヘルス)No.94(新しいウィンドウが開きます)

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