健康長寿ネット

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生涯学習と健康長寿の関係

公開日:2019年7月30日 10時00分
更新日:2020年5月14日 09時35分

 人生50年だった時代とは違い、現代は男女ともに平均寿命が延び「人生100年時代」と言われています。65歳で定年退職になっても、その後も就業する人や、地域の活動に参加するなど、「元気な高齢者」が増えています。いつまでも体とこころの健康を維持し、生涯現役を目指す取り組みの一つに、「生涯学習」があります。

⽣涯学習とは1)

 生涯学習とは、一般的に私たちが生涯の間に行うあらゆる学習、あるいは学習する行動のことです。幼児教育に始まり、学校教育、家庭教育、企業内教育、社会教育などの「教育」はもちろん、自主的に行う文化活動やスポーツ活動、レクリエーション活動、ボランティア活動、趣味の活動なども含まれます。

 「学習」という言葉には、学問や技術を「学びならうこと」「新しい知識を得て感情を深化させる」という意味があります。つまり生涯学習とは、生涯にわたって技術や新しい知識を得たり、感情を深めることをいいます。

⽣涯学習の⽬的や意義1)

 現代は、さまざまな面において価値観が多様化しており、一つの物事に対する正解は必ずしも一つではありません。物事に対し近視眼的になるのではなく、広い視野を持ち、状況に応じた判断や物事の背景にある事柄も含めた考察が必要となります。

 また、高齢化社会の中で健康寿命を延ばしていくためには、家に閉じこもるのではなく、積極的に社会参加を行い、さまざまな世代と交流を深めていくことが求められています。就業を継続したり、新しいコミュニティで活動していくためには、自分にとって新たな知識を習得していくことが必要です。新たな活動を行うまでの自分には無かった新たな技術や知識は、生活を豊かにしたり、新たな生きがいになることが期待できます。

 内閣府が公表している平成30年(2018年)版の高齢社会白書によると、60歳代では70%程度、70歳代以上でも40~50%の人が、働いている、あるいは何らかの社会参加をしていると回答しています。また、実際に社会参加をしている人の中では、新しい友人を得たり、地域とのつながりを得ることにつながっています。

 このように、高齢者が積極的に社会参加をし、多くの人と交流を持ち続けるためにも、生涯学習を続けていく姿勢が求められます2)

生涯学習の種類2)

 生涯学習は、学ばなくてはならないことはありません。その時々で自分が興味をもった事、友人・知人に進められたことでも構いませんし、若い頃から続けてきた趣味をより深めることでも良いでしょう。無理のない範囲でスポーツを始めるのも、健康維持に貢献します。

 内閣府の平成30年(2018年)版の高齢社会白書によると、60歳代以上のおよそ47%の人が、何らかの生涯学習に取り組んでいます。生涯学習のなかでも音楽や美術などの趣味的なものや、健康やスポーツに関わることが多いようです(図1)。

図1:平成30年版高齢社会白書から60歳以上の人が行っている生涯学習の割合を示すグラフ。健康・スポーツにかかわるものが多いことをあらわす。
図1:60歳以上の人が行っている生涯学習(複数回答)2)

健康維持や介護予防と⽣涯学習

 高齢者の介護予防に関するキーワードとして「フレイル」と「サルコペニア」があります。フレイルとは、加齢に伴う様々な機能が変化し、予備能力が低下した状態であり、健康から要介護へと移行する状態のことをいいます。サルコペニアは、筋量や筋力が低下することで身体の機能障害やQOL(生活の質)の低下を招くことです3)

 一般的に、人の筋量は30歳代をピークとして、80歳くらいになるとピーク時から30%程度減少しているといわれています。もちろん個人差はありますが、筋量の低下は歩行速度の低下を招き、さらに活動量が低下していきます3)

 高齢者の多くは、身体機能の衰えや、それによって要介護状態になることへの不安を抱いています。高齢期を豊かに暮らすためにはまず、健康な体づくりが必要です。そのためには積極的に外に出て地域社会の中でボランティア活動をしたり、軽い運動を生活習慣の中に取り入れてみましょう。

 また、生きがいを見い出すような生涯学習も、こころの健康には必要です。どのようなことに生きがいを感じるのかはひとそれぞれですが、就労、趣味、教養、ボランティア活動などの社会貢献、さらにはそれにつながる学習活動も、生きがいにつながる可能性があります。

参考文献

  1. 文部科学省 平成29年度文部科学白書 生涯学習社会の実現(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 内閣府 第1章 高齢化の状況 第2節3 学習・社会参加 平成30年版高齢社会白書(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 日本老年医学会雑誌 51巻6号 フレイルの意義(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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