健康長寿ネット

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化粧とおしゃれと健康の関連

公開日:2019年6月21日 09時10分
更新日:2019年6月21日 09時10分

 女性にとって化粧とは、若いころからの習慣ではありますが、高齢になるとなかなか若い頃のようにしっかりと化粧をすることは少ないかもしれません。しかし、高齢になっても化粧やおしゃれをすることは、気持ちを前向きにするだけではなく、健康にも良い効果があります。

化粧療法(メイクセラピー)とは1)

img1:化粧療法をうける高齢女性

 化粧には外見を美しく見せるだけではなく、前向きな気持ちを持たせてくれる効果があります。

 この化粧の効果を通じて、高齢者の方の心身機能やQOL(Quality of Life=生活の質)を維持向上させ健康長寿をめざすものを「化粧療法(メイクセラピー)」といいます。この化粧療法は、実際の介護現場でも注目されており、化粧をすることで前向きな精神状態をつくり出すだけではなく、高齢者の方が自身で化粧をすることで、残存機能を維持するあるいはできる力を引き出すなど、自立支援も目指しています。

 老人ホーム入居者を対象に行われた研究によると、2週間に1回、3ヶ月間の化粧療法によって認知症進行を抑制する効果が見られたことが報告されています2)。さらに長期的な療法によって、日常機能の維持向上への効果もあると考えらえています。

 地域の元気な高齢者にとっては、化粧療法によって心のフレイル(健常と要介護の中間段階)の予防や介護予防が期待できます。平均寿命が伸びて人生が長くなった現代において、高齢者の方ができるかぎり自立した生活を送ることが大切になってきているのです。

化粧と健康長寿の関わり1)

 高齢者にとっての「化粧と身体機能の関わり」について詳しく見てみましょう(図1)。

心への影響

 高齢者に限らず、化粧をすると自然と気持ちが前向きになります3)。高齢者の化粧療法についての研究によると、幸福感が高まることで、抑うつや不安などの改善が見られるという結果が報告されています。

脳への影響

 まずは化粧品を選ぶという行為から、脳への影響は始まります。次に化粧品を手に取って使うことで軽い運動となり、さらに五感や顔、手の感覚に刺激が与えられます。そして仕上がりを鏡で見ることが喜びとなり、周囲の人とおしゃべりすることでコミュニケーションに対する自信へとつながります。このように化粧療法は脳にさまざまな良い影響を与えているのです。

身体への影響

 化粧水を開ける、口紅やファンデーションを塗るなど、化粧をするときにはさまざまな動作がありますが、それと同時にさまざまな筋肉を使うことになります。このような化粧動作を継続的に行うことで、握力など身体能力の向上が期待できるのです。

口腔への影響

 化粧療法による唾液の変化についての研究1)によると、化粧療法実施後に嚥下反射に関わる神経伝達物質が増加することが分かっています。化粧をすることで唾液の分泌が促され、口腔ケアにも良い影響を与えることができるのです。

図1:化粧が体に与える影響を示す図。脳、心、体(手)、口腔機能に良い影響を与えることをあらわす
図1:化粧が体に与える影響

 以上のことから、化粧によって脳が刺激されることで気持ちが前向きになったり、型から指先までの良い運動になるなど、化粧療法は精神的、身体的にも良い影響を与えることが分かります。

おしゃれ(ファッション)と健康長寿の関わり

 おしゃれ(ファッション)に興味を持つことで生き生きと自分らしく生きることができるなど、おしゃれは私たちのメンタルヘルスに影響を与えるものです。

 女性は、いくつになってもおしゃれに興味を持ち、綺麗でありたいと思うものです。男性にとっても、自分に似合うおしゃれ、自分をより良くみせるためのおしゃれは必要です。

 しかし高齢になるにつれ、病気や介護などをきっかけに家にこもりがちになり、身なりやおしゃれに対する興味が薄れてくる方も多いかもしれません。その結果、ますます外出の機会が少なくなり社会とのかかわりや交流から遠ざかってしまうことになります。

 高齢者におけるファッションへの関心とQOL(生活の質)との関連に関する研究によると、高齢者自身や他人のファッションや流行に対して関心の高い高齢者は、関心の低い高齢者と比較して、積極的に町内会活動やボランティア活動などの社会活動に参加していることが分かりました4)

 さらに、活動能力も高く、メンタルヘルスが良好であること、人生に対する生きがい感が高いことが報告されています。

 また、内閣府の「平成29年版高齢社会白書」でも分かるように、社会的な貢献活動に参加することは介護や認知症の予防となり、高齢者自身にとって生きがいを感じることへとつながります5)

 おしゃれや身だしなみに興味を持つことは、高齢者にとって自信や喜びとなり、積極的に外へ出てみたいという気持ちになります。その結果、周囲の人との交流する機会も増え、安心して生活できるとつながりを持てるようになります。このようにして心の健康を維持・向上することができれば、健康長寿や認知症予防への効果も期待できるでしょう。

img2:化粧した高齢女性2人がおしゃべりする絵

 化粧やおしゃれに対する関心や興味は必ず持つべきというものではありません。しかし、化粧や服装などに気を配り外見の印象がちょっと変わるだけで、心には変化が起こるものです。このような変化をきっかけに、高齢者自身がアイデンティティを見直したり、自己評価が高まることで新しいものへの興味や意欲へとつながることになるのです。

 高齢者にとっておしゃれや化粧に関心を持つことは、心身ともに健康に過ごすために大切なものです。まずは明るい色の服を着てみる、口紅を引く、髪型を少し変えてみるなど、気軽に化粧やおしゃれを楽しんでみてはいかがでしょうか。

参考文献

  1. 資生堂 化粧療法研究室(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 脳を活性化する化粧~認知症に対する改善効果の期待(社会福祉法人はるび はるびの郷) アクティブ­福祉in東­京13抄録集 東京都社会福祉協議会(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 吉田寿美子他. 化粧療法による被介護者と介護ボランティアの精神的活性化 公益財団法人コスメトロジー研究振興財団 コスメトロジー研究報告 Vol.15 Page.111(2007.09.01)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 安永明智. 谷口幸一. 野口京子 高齢者にける装いへの関心とQOLの関連 Page.70 文化女子大学(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 内閣府 平成29年版高齢社会白書(全体版) 第1章 高齢化の状況 第3節3 社会的な貢献活動への参加(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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