健康長寿ネット

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笑いと生活習慣病予防

公開日:2018年5月 9日 10時00分
更新日:2019年2月 1日 17時19分

生活習慣病とは

 生活習慣病は、不健全な生活習慣の積み重ねによって起こるものとされており、健康長寿の最大の阻害要因となっており、糖尿病、高血圧、がん、脳卒中、心臓病など、多くの病気の発症や、進行に関係しています。

 現在日本では21世紀における国民健康づくり運動、生活習慣の予防として「健康日本21」という施策が行われています。健康日本21の目標では、次の9の分野に100の指標を設定しています。

健康日本21の目標設定における9つの分野

  1. 栄養・食生活
  2. 身体活動・運動
  3. 休養・こころの健康づくり
  4. たばこ
  5. アルコール
  6. 歯の健康
  7. 糖尿病
  8. 循環器病
  9. がん

笑いが生活習慣病を予防するかどうか?

 生活習慣病を、「笑い」で予防することは出来るのでしょうか。

 近年「笑い」には、身体的にも精神的にもさまざまな医学的効果が証明されつつあります。では、笑いと生活習慣病の予防について考えていきます。

図:テレビで放映されている落語を見て大笑いしている家族のイラスト。笑いが生活習慣病予防につながることを示唆することあらわす。

高血圧の予防

 笑うという行為は、腹筋や横隔膜の筋肉を大きく使うことから、気付かないうちに「腹式呼吸」をしていることになります。

 腹式呼吸による深呼吸を繰り返すと、気管支の末端にある肺胞の表面から、プロスタグランジンⅠ2という物質が分泌されます。この物質は、血管を拡張させて血圧を下げる効果があります。そのため、笑うという行為を繰り返すだけで、高血圧に対して効果を発揮したり、高血圧を予防することができると考えられています1)

脳梗塞、心筋梗塞予防

 笑うことによって分泌されるプロスタグランジンⅠ2はまた、血小板の凝集を抑える効果があります。そのほかにも、コレステロールが動脈壁にしみこむのを防ぐ効果も期待でき、これらの効果を相乗的に得られることで、脳梗塞や心筋梗塞を予防することができる、と考えられています1)

血糖値の上昇を抑制する

 笑いと血糖値の関係性について、糖尿病患者の協力を経て実験したところ、「笑い」には血糖値の上昇を抑える効果が期待できることが分かりました2)

 これは、糖尿病患者の血中プロレニンと呼ばれる物質の濃度や、末梢血白血球のプロレニン受容体遺伝子の発現量を改善する効果によるものであるということがわかりました2)。プロレニンが具体的にどのような働きをしているのかは未だ研究段階ではありますが、少なくとも糖尿病を発症している人は、血中のプロレニン量が、糖尿病では無い人の40倍から200倍あるといわれており、糖尿病の発症に何らかの関連があると考えられています3)

 さらに血糖値そのものに対してだけでなく、糖尿病性腎症の患者に対する腎保護作用など、糖尿病性の合併症に対しても有効であることが示唆されました2)

がんの予防

 笑いとがんの関係性については、多くの研究がなされています。

 健康な人の体内でも、1日に3,000個から5,000個のがん細胞が発生しているといわれていますが、生まれつき人が持っている50億個のNK細胞が、がん細胞を見つけると次々と破壊してくれているため、がんを発症せずに生活ができています。

 伊丹仁朗医師(すばるクリニック・倉敷市)と昇幹夫医師(元気で長生き研究所)が行った研究によると、「笑うこと」によりこのNK細胞が活性化し、数値が低かった人でも正常範囲にまでアップし、NK細胞の活性が元々高すぎた人も、笑うことによって正常範囲に近づいたという結果が出ています(図1)4)

図1:「笑うこと」によりこのNK細胞が活性化し、数値が低かった人でも正常範囲にまでアップし、NK細胞の活性が元々高すぎた人も、笑うことによって正常範囲に近づいたという結果を示す図。
図1:NK細胞の活性化と「笑い」の関係4)より作図

 これらのことから、笑いには「がんに対する抵抗力を高め、免疫機能を正常化させる」ということや、免疫機能を薬で活性化させるには一定の時間がかかるのに対し、笑いであれば短時間で免疫系を正常化させる即効性がある、という可能性が見えてきました。

 また伊丹仁朗医師の追加の実験として「大声を出して笑うのではなく微笑む程度ではどうなるか」という実験を行ったところ、大声を出して笑うのと、ほぼ同じ効果を得ることができました5)

うつ予防

 笑いは、体の病気だけでなく心の病気の予防、改善にも効果があります。

 笑うことによって、心身の安定や安らぎに関与する副交感神経が優位になります。すると、人の精神面に多大な効果を与えるセロトニンという物質が分泌され、心身の安定を得ることができます6)

 また、笑うことによってストレスを感じると副腎皮質から分泌されるホルモンである「コルチゾール」と「クロモグラニン」の分泌量が減少することも分かっており5)、笑いは心の安定やストレス解消、ひいてはうつの予防に効果があると考えられています。

 また、カナダではポジティブな感情を持っている人は、抑うつ的な症状がある人と比較して冠動脈疾患の罹患率が下がるといわれており、うつの改善が生活習慣病の予防へつながるということもあります7)

 このように笑いは生活習慣病の予防、あるいは改善に対して多大な効果があります。もちろん、笑いのみですべてを解決するということは難しいですが、笑いは生活習慣病の予防や改善の手助けとなってくれることから、生活習慣病の予防と改善に向け、補助的に「笑い」を利用してみるとよいのではないでしょうか。

参考文献

  1. 笑いの医学的考察 昇 幹夫(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 生理工学 第92号 「笑い」は笑いごとではない(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. (プロ)レニン受容体の生化学的側面 新しい機能への展望(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 笑いと免疫能 伊丹仁朗 昇幹夫 手島秀毅 心身医学 1994年10月 第34巻等7号(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 意外と知らない笑いの効用 大阪発笑いのススメ 大阪府(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  6. 高齢者におけるラフターヨガによる笑いの身体的・心理的効果に関する研究 滋賀県立大学 学術情報機関リポジトリ(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  7. 笑いと心臓病 公益社団法人日本心臓財団(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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