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Withコロナ時代のフレイル対策─日本老年医学会からの提言─

公開日:2021年4月 7日 09時00分
更新日:2021年4月 7日 17時18分

飯島 勝矢(いいじま かつや)
東京大学高齢社会総合研究機構機構長、未来ビジョン研究センター教授

はじめに

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)問題が2020年に起こり、世界規模の非常事態となった。なかなか終息の気配がなく、日常の生活は簡単には元に戻ることはできそうもない。第1波から第3波にかけて、わが国でも多くの経験を積み、感染予防を徹底した各自の新たな生活様式(いわゆるニューノーマル)が促され、医療体制の整備も進めてきた。しかし、高齢者の中には非常に重症化しやすく、よりケア体制も必要とされるケースも少なくなく、まだ気を緩めることなく社会全体で守っていく必要がある。

 さらに、今回のコロナ問題は、高齢者の身体だけではなく、地域社会自体にも大きな負の影響を及ぼしている。自粛生活が長期化し、同時に地域活動も中止に追い込まれてしまい、人との交流も減ってしまっている。このコロナ問題は、単なる新たな感染症の課題を示しているだけではなく、流行の前から持ち合わせていたさまざまな地域課題や社会課題をより早期に見える化させたのだろう。ポストコロナ社会を見据え、どのように地域社会を再構築していけばよいのだろうか。

COVID-19により地域在住高齢者に何が起きているのか:コロナフレイル

 高齢者の自粛生活長期化による活動低下(いわゆる生活不活発)の傾向が、第1波の2020年4月頃に認められ、6月頃には戻ってきていることなども山田らによって報告されている1),2)。連日にわたるメディア報道も受け、思っている以上に日常生活を慎重に考え、結果的に不活発になってしまっていたのだろう。

 さらに、筆者が率いるフレイル予防研究チームでも同様のデータを得ている。われわれは地域の元気シニアをフレイルサポーターとして養成し、「高齢住民主体のフレイルチェック活動を軸とした健康長寿まちづくり」を全国の自治体に向けて推進している。この取り組みは、われわれのコホート研究からのエビデンスを基に、食/栄養、口腔機能、運動を含めた身体活動、社会性(社会参加と人とのつながり)などの多面的な要素を包含している。地域の通いの場などにおいて、高齢住民だけでワイワイとした雰囲気の中で、フレイルサポーターによりフレイルチェックを行い、一緒に気づき、自分事化(じぶんごとか)をしていくことを狙ったものである。現在、全国で73自治体に導入し展開中である。

 その導入自治体において、フレイルチェックを(一時的に中止するも)再開してくれている自治体がいくつも存在し、最新情報が集約されてきている。単なる感染リスクだけではなく、高齢者への自粛生活の長期化による顕著な生活不活発を基盤とするフレイル化およびフレイル状態の悪化(いわゆる健康二次被害、『コロナフレイル』ともいえる)が明確なエビデンスとして見えてきた。具体的に、以下に3つの結果が見えてきた。

 1つ目として、東京都内の高齢化率の高い集合住宅にお住まいの高齢者294名(男性144名、女性150名)に対して、自記式質問票の配布による調査を行った。外出頻度に関して、41%強の高齢者に外出頻度の著明な低下が認められ、その外出頻度低下群は、そうではない群に比較して、「運動ができない」と感じる方が3.30倍、「会話量の減少」を感じる方が2.82倍多かった。またその中でも、14%の方が週1回未満の外出頻度(=閉じこもり傾向)まで低下していた。そのような顕著な外出頻度低下の方には、「運動ができない」が5.28倍、「食生活の崩れ」が2.63倍、「会話量の減少」が2.11倍多い傾向が認められた。また、自由記載では「バランスのよい食事ができていない」「買い物に行けず食材が手に入らない」「献立を考えるのが面倒になった」「食事もおろそかになり簡単に済ませる」など、食生活の乱れという悪影響も認められた。

 2つ目の別の導入自治体において、フレイルチェック内のさまざまな身体機能の実測値をCOVID-19流行前(2019年11月~12月)と比較してみると、さまざまな身体機能の低下も見えてきた。まずは81歳女性の参加市民の実例を掲載する(図1)。赤枠で囲った部分が顕著に見られるが、中でも体幹部分の筋肉量が-1.95㎏低下していることがわかる。参加者全般を見ても、約半分近い参加高齢者において、握力の低下、ふくらはぎ周囲長の低下、筋肉量の減少(特に体幹部は約8%減少)、滑舌の低下などが認められた(図2)。しかし、面白いことに、この新型コロナウイルス禍(以下、コロナ禍)でも社会参加や人とのつながりが低下していない高齢者の群が存在し、その群は握力などの身体機能低下が認められず、一方で、社会性の低下した群ほど機能低下が顕著であった。

図1:81歳女性のCOVID-19流行前後のフレイルチェック結果の事例を表す図。
図1 COVID-19流行前後のフレイルチェック結果の比較(81歳女性の事例)
(東京大学高齢社会総合研究機構 孫輔卿、飯島勝矢.事例提供)
図2:COVID-19流行前後のフレイルチェック結果の比較し維持増加群と低下群を示す。
図2 COVID-19流行前後のフレイルチェック結果の比較(維持増加群と低下群)
(東京大学高齢社会総合研究機構 孫輔卿、飯島勝矢. 論文投稿中)

 3つ目として、コロナ禍において筋肉量や歩行速度が減少した高齢者では生活の何が変わったのだろうか。具体的に、自粛生活を継続する中で、その前後比較をしたところ、「指輪っかテストにより隙間が新たにできてしまい、筋肉量が低下したことが予想される高齢者(24.3%)」は、身体活動量の低下した人の中に2.8倍多く、さらに、人と会う機会やつながりの低下した人で3.4倍、口腔機能の低下を訴える人に5.2倍多いことがわかった。また、「歩行速度が低下した者(27.3%)」は、身体活動量の低下した人には3.4倍多く、さらに、人と会う機会やつながりの低下した人で9.5倍、口腔機能の低下を訴える人に3.7倍多いことが判明した。

 以上のように、感染者数が最も多い東京都内に限らず、複数の自治体において、コロナ禍での自粛生活の長期化による生活不活発および社会性の低下を基盤とし、サルコペニアを中心としたフレイル化が進行している現象が多面的に認められた。

日本老年医学会からのさまざまなメッセージ発信

 日本老年医学会から2020年にさまざまなメッセージが発信されているので、以下に一覧を示す3)

  1. 「新型コロナウイルス感染症」高齢者として気をつけたいポイント
  2. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行期において高齢者が最善の医療およびケアを受けるための日本老年医学会からの提言─ACP実施のタイミングを考える─
  3. 新型コロナウイルス対応に関する居宅サービス(通所、短期入所)利用者・ご家族向け注意喚起
  4. 介護老人保健施設における新型コロナウイルス感染症対応ガイド
  5. 認知症をお持ちの方とそのご家族の方

 外出自粛による身体機能の低下(フレイル)に関しては1.で示しており、すでに2020年3月の時点でわかりやすいリーフレット形式(日本老年医学会:「新型コロナウイルス感染症」高齢者として気をつけたいポイント.2020年3月13日.(外部サイト)(新しいウインドウが開きます))で出している4)。コロナ禍において危惧していたメッセージであったが、まさに予想通りの傾向が認められてきている。また、高齢者で基礎疾患をお持ちの方は重症化のリスクがさらに高いことから、高齢者施設などを視野に感染予防のための対応と感染経路の遮断などへの指針を出している。

ウィズコロナ・ポストコロナ社会を見据えた新たな地域像とは

 COVID-19による高齢者の生活不活発を基盤とするフレイル化、すなわち健康二次被害が現場のデータとともに見えてきた。たしかに高齢者においてはCOVID-19感染により重症化しやすいとも言われ、積極的にメディア報道を通して全国の国民に周知されてきた事実がある。しかし、あまりにも感染を恐れるばかりに、相対的に生活内容が極度の低活動・不活発に陥り、知らず知らずのうちにサルコペニアの進行を基盤としたフレイル状態の悪化が起こり、移動能力の低下だけではなく、認知機能の低下、次なる感染症への免疫力の低下など、さまざまな負の連鎖が起こってしまう可能性がある。

 フレイル予防・対策のためには、まずは基本形として、「栄養(食と口腔機能)」「身体活動(運動や社会活動等)」「社会参加(人とのつながりが特に重要)」の3つの柱をいかに三位一体として底上げし、日常生活の中に継続的に盛り込めるのかが鍵になる。そこには、①高齢者個々人へどのような情報を届け、改めて意識変容・行動変容してもらうか、そして②すべての住民活動が止まってしまっている地域コミュニティをどのように前向きに再構築していくのか、この2つの視点が重要になる。

 あえてここで強調したいのは、自治体における止まっている地域活動を単にいつ再開させるのかという考え方ではなく、「ウィズコロナ・ポストコロナ社会を見据えた新たな地域像をどう構築するのか」という視点で考えることである。今後、全国の高齢者の方々には、この感染症を「正しく恐れる、賢く恐れる」ことを促しながら、情報の報道も考え、悪影響が出ている心身機能と日常生活内容を早々に改善すべきである。すなわち、感染の予防を強調するだけではなく、それ以上に、生活不活発および人とのつながりの低下への予防の重要性もしっかりと訴えかけるべきである。

 また、自宅生活のさらなる充実化も必要である。筆者の研究機構から、単に外出頻度の問題だけではなく、日常生活の大半の時間を過ごす自宅の生活内容においても、身近なヒントを拾い上げ、創意工夫をすることにより、いかにワンランクアップした生活内容を実現するためのノウハウとして「おうちえ」という情報を発信している5)

 そこで、ウィズコロナ・ポストコロナ社会を見据えて、わが国がどのように大きく変容できるのかが大きな鍵になる。そこで、図3のように、【国家戦略として3つの「守る」:①感染から守る、②経済問題から守る、③健康・健全な地域社会を守る】を実現すべきであることを改めて強調したい。その中で、個人だけではなく、「地域におけるニューノーマル」の構築へチャレンジしたい。

図3:ポストコロナ社会に向けた感染、経済、健康・健全な地域社会の3つを守るための国家戦略を示す図。
図3 ポストコロナ社会における地域のニューノーマルの再構築

 まずは、3つの予防(感染予防、生活不活発の予防、人とのつながり低下への予防)を徹底しながら、さらに3密に配慮しながら、従来の地域活動の再開と地域の絆を戻していかなければならないことは言うまでもない。それらを遂行していく中で、住民(特に高齢者)の変革と地域の変革のために、「ハイブリッド型の地域コミュニティ」をめざしていくことも視野に入れるべきである。オンサイト(現場)で従来の通いの場や集いの場を上手く配慮しながら実現させていく、そこにオンライン技術を上手く溶け込ませ、地域支援ICTプラットフォームを創造していくべきである。

 実際に、筆者が率いるフレイル予防研究チームは、コロナ禍での生活不活発によるフレイル進行を阻止するために、双方向のオンライン型フレイルチェックのアプリ開発を進めており、都内複数モデル地域で対面型とオンライン型を融合した「ハイブリッド型フレイル予防システム」を構築している(図4)。すなわち、感染対策に直結する新しい生活様式も当然重要であるが、それに加えて、この実用化により、人とのつながり方や集う場のあり方の新しい形をIT技術の駆使により模索し、「身体は離れていても心が近づくことができる地域社会」というフレイル予防につながる持続可能な居場所づくりが期待できる。そこには趣味や価値観を共通項として、物理的な距離が大きく離れている者同士(特に若い世代だけではなく高齢者も)で気軽に集えるように、さらには、従来の地域コミュニティ(特に日常生活圏域)において忘れられかけている「絆」を戻すことができるようにしたい。

図4:地域における新たな集い方「ハイブリッド型フレイル予防システム」の開発の内容を示す図。
図4 地域における新たな集い方(地域のニューノーマル)の再構 築:「ハイブリッド型フレイル予防システム」の開発

さいごに

 このコロナ問題によるピンチをどうチャンスに変えるのか、そしてヘルスケア分野において、国民の個々人に何を伝え、さらには新たな地域社会づくりにどう反映させるのか、ここは大きな分岐点になるだろう。

 この課題は、ポストコロナ時代において、人のQOLのあり方はどう変わっていくべきかを意味している。健康上の不安を取り除き、住み慣れた地域で自立した生活を延伸し、生活の質(QOL)の維持向上を図るには、高齢者の特性を踏まえた健康サポートが必要である。中でも疾病予防(特に生活習慣病の重症化予防)と生活機能維持(特にフレイル予防~介護予防)の両面にわたる視点が重要である。開業医・かかりつけ医による通常診療の中で、医学的な診断や治療を進めると同時に、フレイル健診により包括的な視点の情報を得ることができる。まだコロナ禍が続く中で、地域のさまざまな社会資源等につなげる必要性が今まで以上に必ず出てくる。ワクチン接種や治療薬の確立と同時に、高齢者の日常生活全般にも十分に気を配りながら、社会的処方への意識も忘れてはならない。

 そして地域全体として、真の人間中心社会に向けて、「われわれの忘れてはならない原点」と「次世代の新しいデジタル地域コミュニティ像」の両方を実現していく必要がある。

文献

  1. Yamada M, Kimura Y, Arai H, et al.: Effect of the COVID-19 Epidemic on Physical Activity in Community-Dwelling Older Adults in Japan: A Cross-Sectional Online Survey. J Nutr Health Aging. 2020; 24(9): 948‒950.
  2. Yamada M, Kimura Y, Arai H, et al.: Recovery of Physical Activity among Older Japanese Adults Since the First Wave of the COVID-19 Pandemic. J Nutr Health Aging. 2020; 24(9): 1036‒1037.
  3. 日本老年医学会:「新型コロナウイルス対策」(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 日本老年医学会:「新型コロナウイルス感染症」高齢者として気をつけたいポイント.2020年3月13日.(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 東京大学高齢社会総合研究機構:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に負けない高齢者の健康を守るために伝えたいこと高齢社会総合研究機構からのメッセージ「おうちえ」第3版(総集編).2020年5月24日.(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

筆者

筆者:飯島勝矢先生
飯島 勝矢(いいじま かつや)
東京大学高齢社会総合研究機構機構長、未来ビジョン研究センター教授
略歴
1990年:東京慈恵会医科大学卒業、千葉大学医学部附属病院循環器内科入局、1997年:東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座医員・助手、2001年:医学博士(東京大学)、2002年:米国スタンフォード大学医学部研究員、2005年:東京大学大学院医学系研究科加齢医学講座講師、2016年:東京大学高齢社会総合研究機構教授、2020年より現職。内閣府「一億総活躍国民会議」有識者民間議員、厚生労働省「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関する有識者会議」構成員
専門分野
老年医学、ジェロントロジー(総合老年学)

転載元

公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌 Aging&Health No.97(PDF)(新しいウィンドウが開きます)

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