健康長寿ネット

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高齢期女性のこころのケア

公開日:2017年7月 4日 11時00分
更新日:2022年3月18日 13時15分

男女でこんなに違う老化意識

  老年期は、健康、経済力、人間関係、生きる目的を少しずつ奪われ、死に直面しつつ、生きることの意義や目的を考えさせられる、衰退・喪失の時期です。時間は誰にも公平に流れますが、寿命には男女の差が明瞭で、厚生労働省によると、令和元年(2019年)の日本人の平均寿命は、男性81.41年、女性87.45年となっています1)

 一方、日常生活が健康上の理由で制限されることなく生活できる期間を健康寿命と言いますが、令和元年(2019年)の日本人の健康寿命は、男性72.68年、女性75.38年でした。つまり、寿命を終えるまでの不健康な期間が男性では9年に対して、女性では12年と長くなっています。一人暮らしの女性の約4割は75歳以上ですから、一人暮らしの女性の半数近くが不健康という計算にもなります1)

 高齢男性は不健康になったらどうしようとひどく気にするのですが、そうした不安感は加齢に伴い徐々に減少するとの調査結果があります。かりに不健康な状態になっても配偶者や家族に支えられているという安心感があるためなのでしょう。

 一方、女性の不安感は80~84歳で高くなることが分かっています。配偶者を亡くした後、長生きすることで家族に負担を強いるのではないかという、男性が感じない不安が強く、それが不健康の一因ともなります。厚生労働省の高齢者生活実態調査によると、長生きしたくない第一の理由に男性は経済的不安を挙げる一方、女性は寝たきりや認知症になって家族に負担をかけることを挙げています。これらの不安が大きくなるとやる気や自信が損なわれ、老いが進行します。老人を経済や介護の面で社会として支えることがどんなに大切かがわかります。

 老化は心身の不調を起しがちです。しかし、女性は一般に家事の経験が豊富なので、規則正しい日常生活を自立して送れる強みがあり、これが心と体の健康につながるはずです。

老化への心の適応

 老化は避けられませんから、それと上手に付き合いたいものです。どうすればよいかは簡単ではありませんが、残りの人生に新たな目標を立て、生きがいを見つけることが大切なのではないでしょうか。

 厚生労働省の高齢者生活実態調査によると、長生きしたいと思うのは女性より男性が多く、男性の理由のトップは、自分の好きなことをしたいためだそうで、女性の理由は、子どもや孫の成長をみたい、でした。どんな理由にしろ、生きがいを見つけ、楽しい老後にしましょう。

老いによる自信喪失?-若者と張り合うのはやめ!

 厚生労働省の高齢者生活実態調査によれば、高齢者とはいつからかとの問いに、男性の多くは定年、女性では身体がきかなくなった時と答えました。女性は身体の衰えを否定的にとらえているようですが、それを前向きに受け入れ、「成熟」ととらえてはどうでしょうか。だれもが「あすは我が身」なのですから。

 老化によって感覚器も衰えます。老眼の進行によって、本や新聞を見る意欲が低下し、細かい作業がおっくうになります。暗いところで視覚が鈍るため、暗いところで本が読めなくなり、夜間の行動は思うようになりません。音声も聞き取りにくくなるので(老人性難聴)、会話や社会的な交流を避けるようになりがちです。運動機能の低下も意欲を低下させます。

 こうした機能低下は、若い人たちと一緒に作業や運動するときに改めて実感し、自信を失い、やる気も低下しがちですが、若者と張り合うのはなんの意味もありません。機能低下は「あすは我が身」なのですから。なお、老人性難聴に対しては、単に大声を出してもダメで「ゆっくり話す」ことで改善されますので、若者はご注意下さい。

楽しい老後を

 女性は一般に、家族に遠慮して自分のことを後回しにしがちですが、やりたいことをするのも重要です。欲求がなかなか充たされないと、心が不安定になりますから。また、家族との人間関係を良好にしておくことや、友人を持ち社会から孤立しないことも大切です。

 一方、若者には、高齢者が生きてきた歴史に敬意を払い、一人の人間として尊重し、理解することが求められます。過去のことにくよくよせず、少しでも長く健康を維持し、とにかく老後を楽しみましょう。

参考文献

  1. 第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会 資料3-1 健康寿命の令和元年値について 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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