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ロコモティブシンドロームの予防

公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2023年8月 1日 10時32分

ロコモティブシンドロームとメタボリックシンドロームの関係

日本のメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の該当者数は約960万人、予備軍の人は約980万人、併せると約1,940万人と推定されており、40~74歳の男性2人に1人、女性の5人に1人に当たります1)

 メタボリックシンドロームになると、動脈硬化が促進されて心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる病気を発症するリスクが高くなるうえ、肥満によって膝や腰への負荷が大きくなり、ロコモティブシンドロームの原因ともなります。反対に極端なダイエットや低栄養で痩せすぎていても骨粗鬆症やサルコペニア(筋肉減弱症)となり、ロコモティブシンドロームへとつながります(図)。

図:肥満・運動不足によるメタボリックシンドロームやダイエット・低栄養による痩せすぎかからロコモティブシンドロームへとつながる流れを示した図。
図:肥満・痩せすぎとロコモティブシンドローム

 ロコモティブシンドロームを予防するには、若いうちから毎日の生活の中に運動習慣を持ち、栄養バランスのとれた食事を1日3回摂って、健康維持を図ること、骨と筋肉を強くすることが大切です。ロコモティブシンドロームを予防することはメタボリックシンドロームなどの生活習慣病の予防にもつながります。

ロコモティブシンドローム予防のための栄養バランスのとれた食事とは

 ロコモティブシンドロームの予防として運動器の機能を保つためには、「5大栄養素」である炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルを毎日3回の食事から摂ることが理想です。メニューは、主食(米・パン・麺類)、主菜(肉・魚・卵・大豆製品)、副菜(野菜・きのこ・海藻・いも)、牛乳(乳製品)、果物で組み立てるようにしましょう。毎回メニューを揃えるのは難しいという方は、朝や昼に野菜がとれない場合は、夜にしっかり野菜や果物をとったり、野菜のたくさん入ったみそ汁を加えたりして、1日の食事、または1週間の食事で総合的にバランスをとるようにしましょう。

 生活のリズムが乱れると、決まった時間に食事の時間を持つことができなくなります。運動不足や活動量が低下しても食欲が湧かずに食事が十分に摂れず、低栄養となるので、食事の回数を増やして少しずつ食べるようにしましょう。

味や見た目に変化をつけたり、家族や友人と一緒に食事をする機会を設けたり、外食に行ったりと、食事を楽しむ工夫を行うことも大切です2)

骨や筋肉を強くする食事とは

骨を強くする食事

 骨は常に、古くなった骨が吸収されて新しい骨が形成される生まれ変わりのサイクルを繰り返しています。骨の形成よりも吸収の方が上回ると骨が弱くなり、骨粗鬆症になります。骨をつくるために必要な栄養素は、骨の主成分でもあるカルシウムです。日本人のカルシウムの推奨量は、男性は18~29歳で800mg/日、30~74歳は750mg/日、75歳以上は700mg/日、女性は18~74歳で650mg/日、75歳以上は600mg/日とされています3)(表1-1、1-2)。

表1-1:カルシウムの食事摂取基準(男性)(mg/日)4)
年齢等推定平均必要量推奨量目安量耐容上限量
0~5(月) 200
6~11(月) 250
1~2(歳) 350 450
3~5(歳) 500 600
6~7(歳) 500 600
8~9(歳) 550 650
10~11(歳) 600 700
12~14(歳) 850 1,000
15~17(歳) 650 800
18~29(歳) 650 800 2,500
30~49(歳) 600 750 2,500
50~64(歳) 600 750 2,500
65~74(歳) 600 750 2,500
75以上(歳) 600 700 2,500
表1-2:カルシウムの食事摂取基準(mg/日)4)
年齢等推定平均必要量推奨量目安量耐容上限量
0~5(月) 200
6~11(月) 250
1~2(歳) 350 400
3~5(歳) 450 550
6~7(歳) 450 550
8~9(歳) 600 750
10~11(歳) 600 750
12~14(歳) 700 800
15~17(歳) 550 650
18~29(歳) 550 650 2,500
30~49(歳) 550 650 2,500
50~64(歳) 550 650 2,500
65~74(歳) 550 650 2,500
75以上(歳) 500 600 2,500
妊婦(付加量) +0 +0
授乳婦(付加量) +0 +0

 推奨量のカルシウムを摂るには、緑黄色野菜や海藻類を副菜で摂り、大豆製品を主菜で摂って、牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品や小魚を食事に加えて摂るようにしましょう。

 カルシウムだけでなく、カルシウムを効率よく腸で吸収するためにはビタミンD(鮭やキノコ)や、骨の形成や維持に働くビタミンK(納豆や青菜)、骨の材料であるタンパク質(魚、肉、牛乳、大豆)、マグネシウム(大豆製品、海藻、魚介類)、葉酸(ほうれん草、春菊)なども骨の形成のためには必要です2)5)

筋肉を強くする食事

 筋肉をつくる主な栄養素のタンパク質は、肉や魚、卵、乳製品、大豆製品に多く含まれています。タンパク質はアミノ酸から構成されており、食事からしかとることのできないアミノ酸(必須アミノ酸)もあります。必須アミノ酸は、色々な食材から組み合わせて摂取することが大切です。

 タンパク質だけではなく、筋肉を働かすエネルギー源となる炭水化物(米・パン・麺類)や脂質(油、バターなど)とタンパク質の働きを助けるビタミンB6(マグロの赤身、カツオ、赤ピーマン、キウイ、バナナ)も合わせて摂るようにしましょう2)

ロコモティブシンドロームの運動

 ロコモティブシンドロームの運動については、「ロコモティブシンドロームの治療」でロコトレを解説しているのでご覧ください(リンク1参照)。

リンク1「ロコモティブシンドロームの治療」

ロコモティブシンドロームの予防は運動と食事

 筋肉は使わなければ弱くなります。骨も体重がかからなければ弱くなってしまいます。そして、筋肉や骨をつくるためには色々な食品から満遍なく栄養素を摂ることが必要です。運動をして骨や筋肉を使うことと、バランスの良い食事から骨や筋肉をつくることの両方を、加齢によって筋肉や骨密度が減ってしまう前から日常生活に習慣づけることがロコモティブシンドロームの予防となるのです。

参考文献

  1. メタボリックシンドローム該当者・予備群の状況 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 食生活でロコモ対策 ロコモ チャレンジ!(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 骨密度 e-ヘルスネット情報提供(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書 各論 ミネラル(多量ミネラル) 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 骨粗鬆症の予防のための食生活 e-ヘルスネット情報提供(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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