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経管栄養の適応と管理

公開日:2016年7月25日 15時00分
更新日:2019年2月 1日 20時11分

経管栄養の目的とは

 経管栄養とは、消化機能は十分であるものの、何らかの理由によって経口摂取が不可能である場合に施行されます。経管栄養は、消化管の運動や消化液の分泌など、消化管機能を促進する効果が期待できるため、腸管免疫を刺激することによる、全身免疫状態の改善にもつながるというメリットがあります。経管栄養により栄養状態を改善できると、褥瘡(じょくそう)の予防や、肺炎の予防にもつながります。

 しかし、日本静脈経腸栄養学会編集による「静脈経腸栄養ガイドライン 第3版」によると、経管栄養を施行する期間として、経鼻経管栄養(経鼻胃管)の場合は、4週間未満を推奨しています。それ以上となる場合には、胃ろうなどの消化管ろうの適応となります(図)。

図:栄養療養の選択の基準を示すフローチャート
図:栄養療法の選択の基準 1)より作図

 実際にどのような経管栄養の方法を選択するのかは、まず「消化管(腸)の機能が十分であるか」を判断します。消化管(腸)の機能が十分である場合は経腸栄養、十分で無い場合は静脈栄養を選択します。

 経腸栄養は、実施期間が4週間未満の短期間である場合は経鼻胃管、4週間以上と長期にわたる場合は消化管ろうが選択されます。

 静脈栄養は、比較的短期である場合は末梢静脈栄養(PPN)、長期あるいは高カロリーでの栄養療法が必要な場合は中心静脈栄養(TPN)が選択されます。

経管栄養の特徴とは

 経管栄養には様々な特徴があります。まずは、消化管機能を使わなくなることのデメリットをみてみます。

  • 活動の低下
  • 摂取エネルギーの減少
  • 気力の低下
  • 筋肉のやせ、筋力の低下
  • 褥瘡ができやすくなる
  • 神経の伝導障害
  • 頭がぼんやりする等の症状がみられる
  • 腸管免疫が低下することによる、全身的な感染症を起こしやすい

 経管栄養により、腸管からの消化吸収が行われるようになると、これらのデメリットが、少しずつではありますが、改善することが期待できます。

 また、腸管栄養を行わず、中心静脈などからの栄養摂取を行う場合、カテーテル関連の感染症を起こす可能性もあります。経管栄養が可能なのであれば、これらの感染症も回避できる可能性があることから、消化管機能が十分であるならば、栄養摂取の方法として、経管栄養を選択することになります。

 但し、経管栄養にも、弱点はあります。

 経管栄養は、鼻または口から、胃や腸まで届くカテーテルを挿入しますので、挿入の手技は比較的簡単です。しかし、顔にテープで固定するため違和感がありますし、定期的な交換が必要です。鼻から挿入する経鼻経管栄養の場合、他の経験栄養よりも安価ではありますが、チューブが細いため栄養剤による閉塞の可能性があります。

経管栄養の適応とは

 経管栄養が適応となるのは嚥下困難、意識障害、熱傷などで、嚥下機能や摂食機能に障害があるものの、消化管の機能が正常である場合が基本です。また、消化吸収機能が落ちていて、経口摂取のみでは栄養障害に陥る危険性のある場合や、がんによる化学療法や放射線療法による経口摂取不良の場合でも適応なることがあります。

 非適応の例としては、消化管の機能が低下している、循環動態が不安定、などの場合です。また、寝たきりで人工呼吸器を使用している方では、過量の栄養を与えることによって、肥満や糖尿病、 高脂血症、脂肪肝等の原因となる可能性があり、新たな合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要となります。

経管栄養の管理方法とは

 経管栄養カテーテルからの栄養剤注入を行うときは、栄養剤が逆流し、肺に入ることで肺炎となることを防ぐために、注入中および注入後1~2時間は、頭部を挙上して、逆流防止に努めることが大切です。また、注入前には腹部に聴診器を当てながら空気を注入して胃音がすることを確かめる、または胃液を引くことで胃内にカテーテルの先端が挿入されているかを確認する必要があります。

 栄養剤を注入するときは、下痢や嘔吐、腹部膨満の症状を確認していきます。また、投与速度が速すぎると、これらの症状がみられる可能性があるため、注入中の様子を観察しながら、ゆっくりと投与していきます。また、栄養剤の注入が終了したら、微温湯を注入し、栄養剤を完全に胃内に流すことで、カテーテル内に残存した栄養剤の腐敗による感染症などを防ぐことができます。

 経管栄養カテーテルの固定部位の観察も必要です。チューブが顔に当たっている部位に潰瘍(かいよう)ができたり、テープでかぶれる可能性もあります。そのため、留めている部位の皮膚症状も、併せて確認することが必要となります。

参考文献

  1. 静脈経腸栄養ガイドライン 第3版 Quick Reference 一般社団法人日本静脈経腸栄養学会

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