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終末期の意思決定ガイドライン

公開日:2016年7月25日 11時00分
更新日:2019年6月21日 13時33分

終末期の意思決定ガイドラインの考え方とは?

 医療現場では従来から、終末期における治療の開始や、不開始(中止)等の医療のあり方の問題が、重要な課題となっていました。終末期は、その患者や家族を取り巻く様々な背景が関係してくるため、難しい問題とされてきました。そんな終末期医療の在り方について、基本的な観点を確認し、より良き終末期の実現を目的として策定されたガイドラインが、終末期の意思決定ガイドラインです。

人生の最終段階における医療及びケアの在り方

 人生の最終段階における医療を進める上では、医師などの医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて 患者が医療従事者と話し合いを行い、患者本人による決定が、基本的かつ重要な方針となります。しかし終末期医療における医療行為の開始や不開始、医療内容の変更や医療行為の中止などについては、医学的な妥当性や適切性を根拠に、慎重な判断を行うことが求められます。そのため、複数人数のよる医療ケアチーム(多くの専門職種の医療従事者で構成されており、医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、リハビリスタッフを含む)を組織し、検討を行うことも必要です。

 しかし、医療チームを編成してはみたものの、結局、医師の抑圧的な一言で全てが決まってしまったり、責任の所在があいまいになるというケースもあります。本来であれば、医療チームのスタッフが協力しあい、それぞれの強みを生かしたチームを編成することが求められ、可能な限り疼痛(とうつう)やその他の不快な症状の緩和を行うべきなのです。

 終末期の医療で最も大切なのは、患者や家族の精神的・社会的な側面に対する援助です。そのため、疼痛や身体的な苦痛だけではなく、社会的精神的な側面も含めた総合的な医療ケアを行うことが必要です。尚、積極的安楽死(生命を短縮させる意図をもっている積極的な安楽死)は、この終末期意思決定ガイドラインでは対象外となります。

人生の最終段階における医療及びケアの方針の決定手続

 何らかの疾患により、人生の最期を迎えるとき、その患者に対する医療およびケアの方針は、図のフローチャートに示すとおりの手続きの元に決定されます。

図:終末期医療の決定プロ説に関するガイドラインにおける方針決定の流れを図にまとめたフローチャート。内容は次の通り.
図:「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」での方針決定の流れ

患者の意思の確認ができる場合

 インフォームド・コンセント(自己決定)に基づく、患者の意思決定を基本とし、医療者の意思を押し付けず、患者が自由に治療の有無や内容を決定できる環境を作ります。また、患者が時間の経過や病状の変化に応じて、意思が変化するであろうことも念頭に置き、その合意内容を文書にまとめておきます。患者が説明を求めた際にはその都度説明し意思の再確認を行うことが必要です。また、患者が拒まない限り、終末期の患者を支えている家族にも、決定内容を知らせることが望ましいとされています。

患者の意思の確認ができない場合

 患者の意思確認ができない場合、家族が患者の意思を推定できる関係性を持っている場合には、その推定意思を尊重し、患者にとって最善の治療方針をとることを基本とします。ここでは、家族とは血縁関係であるのみならず、患者が信頼し、終末期医療を支えていける人という広範囲で捉えておくことが必要です。

 また、家族が患者の意思を推定できない場合には、患者にとって何が最善であるかを家族と十分に話し合い、患者にとっての最善の治療方針をとることとします。

 家族がいない場合及び家族が判断を医療チームに委ねる場合にも、患者にとっての最善の治療方針をとることを基本とします。家族が医療チームに判断をゆだねるという場合もありますが、その際についても、同様の考え方を示します。

複数の専門家からなる委員会の設置

 このケースがもっとも医療方針を決定しにくい状況を示しています。

  • 治療方針の決定に際して、病態などにより医療内容の決定が医療チームでは困難となる場合
  • 患者と医療従事者との話し合いの中で、医療内容についての同意が得られない場合
  • 家族の中で意見がまとまらない場合

 このような場合には、複数の専門家からなる委員会を設置し、治療方針等についての検討及び助言を行うことが必要となります。しかし、これはあくまでも例外的な手段であるため、基本的には、前述の「患者の意思の確認ができる場合」あるいは「患者の意思の確認が出来ない場合」の段階、つまり推定も含めた患者の意思に従う形での決定が求められます。

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