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成年後見人トラブル

公開日:2019年2月13日 12時20分
更新日:2023年8月18日 11時58分

成年後見人とは

 成年後見人は、認知症や知的障害、精神障害などの理由で、判断能力が不十分な方に代わり、不動産や預貯金などの財産を管理したり、介護サービスの利用や施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割に関わる手続きなどを行います。

 成年後見人の役割としては、次のような、法的な行為を代行することにあります2)

  • 本人のために診療・介護・福祉サービスなどの利用契約を結ぶこと
  • 本人の預貯金の出し入れや不動産の管理などを行うこと

 法的な行為を代行することから、成年後見人は基本的に、家庭裁判所での審判により「選任」される必要があります。

成年後見人の推移

 「成年後見人」という言葉自体はずっと以前からありましたし、実際に2000年よりも以前から、成年後見人を必要とする人、成年後見人に選定される人はいました。この制度が浸透するにつれ、あるいは認知症高齢者など成年後見人を必要とする人たちが増え、この制度を利用する人たちが増えています(図1、表1)。

図1:成年後見人等の選任判例数の推移を示す棒グラフ。2015年をピークに減少傾向にあることを示す。
図1:成年後見人等の選任判例数の推移1)
表1:成年後見人等の選任判例数の推移1)
後見人等の選任(人)
2008年 5,717
2009年 6,328
2010年 6,847
2011年 7,591
2012年 8,898
2013年 10,846
2014年 14,932
2015年 19,970
2016年 16,047
2017年 12,278

 その一方で、成年後見人に関するトラブルも起こっており、2014年までは、解任される後見人も増えていました(図2、表2)。

 「解任」については、2014年以降は減少傾向にありますが、何らかのトラブルにより、監督処分などを受けた判例数は、増加傾向のまま推移しています。

図2:後見人の解任、監督処分、報酬の付与の推移を示すグラフ。解任は2014年以降減少しているが、処分などの判例は増加傾向であることを示す。
図2:後見人等の解任、監督処分、報酬の付与等の推移1)
表2:後見人等の解任、監督処分、報酬の付与等の推移1)
後見等監督処分(件)後見人等に対する報酬の付与(件)後見人の解任(件)
2008年 56,993 16,205 431
2009年 56,720 20,777 443
2010年 46,218 26,099 480
2011年 40,475 34,098 582
2012年 43,448 45,091 883
2013年 81,995 58,918 971
2014年 93,657 76,420 1,095
2015年 109,253 101,088 876
2016年 141,219 123,602 658
2017年 153,254 137,723 571

成年後見人等による被害(2012年~2017年)

 成年後見人等は、他人(あるいは家族の誰か)の財産などを管理する役割があるため、結果的にはその役割を悪用してしまうようなトラブルが発生するリスクがあります。裁判所などの統計によると、2014年(平成26年)頃までは、トラブル=不正報告の数は増加傾向にあり(図3、表3)、その被害額も増加傾向にありました(図4、表3)。2014年以降は、不正の件数および被害額は減少傾向にはあるものの、依然としてゼロにはなっていません。

 なお、「成年後見人等」とは、成年後見人、保佐人、補助人、任意後見人、未成年後見人及び各監督人をいいます。

図3:平成24年から平成29年の間の不正報告件数の推移を示す棒グラフ。専門職以外での不正が圧倒的に多いことを示す。
図3:成年後見人等による不正報告件数の推移3)より抜粋

※括弧内の数値は、専門職の内数である。

図4:平成24年から平成29年の間の不正行為による被害額の推移を示す棒グラフ。専門職以外での不正額が圧倒的に多いことを示す。
図4:成年後見人等による不正行為による被害額の推移3)より抜粋

※括弧内の数値は、専門職の内数である。

表3:成年後見人等による不正報告件数・被害額3)
専門職および専門職以外による不正報告件数(件)専門職および専門職以外による被害額(千万円)
平成24年 624(18) 約481(約31)
平成25年 662(14) 約449(約9)
平成26年 831(22) 約567(約56)
平成27年 521(37) 約297(約11)
平成28年 502(30) 約26(約9)
平成29年 294(11) 約144(約5)
  • 括弧内の数値は、専門職の内数である。

成年後見人トラブル4)5)

 成年後見人に関するトラブルで多いのは、「財産などを不正に流用する」というものです。

 その原因として挙げられるのが「成年後見人の権限が必要以上に大きすぎること」だと考えられています。また、「親族後見人等の理解不足・知識不足から生じる」というケースも、増えているようです。

 さらに、現在の制度では、家庭裁判所が成年後見人の選任に関する申し立てを受けて、実際に「選任」をしていますが、後見人の理解不足だけではなく、後見人の理解不足を補う説明や支援をする体制が、不十分であるとも考えられています。最初から故意で不正をしようとして後見人になる人は、少ないでしょう。しかし、親族後見人の不正の多くは、理解不足やずさんな財産管理によって、生じているとされています。

成年後見人によるトラブルを防ぐには4)

 超高齢社会である日本では、今後も成年後見人になる人、成年後見人を必要とする人が、増えていくと考えられています。そうした中で、トラブルを未然に防ぐには、以下のような後見人となる人のモラルや、後見人への支援体制の強化が、必要であるといわれています。

  • 家庭裁判所から選任された親族後見人は、選任とともに地域の中核機関に登録されることとし、就任時研修を受け、定期的に継続研修も受けることが良いのではないか
  • 後見人が必要なときに、いつでも相談できる中核機関を整備するべき
  • 後見活動に必要な新しい情報やノウハウ等の情報提供(後見ニュース等)を行う(中核機関)

 親族後見人に対する支援では、日常的な支援に加え、権利の擁護、法的な課題の解決、福祉的課題等の専門的な支援が必要とされるでしょう。2017年からは、「成年後見制度利用促進基本計画」がスタートしています。これにより、利用者がメリットを実感できる制度・運用へ改善を進める、あるいは不正防止の徹底や、利用しやすさとの調和を図り、安心して成年後見制度を利用できる環境が整備されると、期待されています。

参考文献

  1. 裁判所 司法統計 平成29年度 2家事審判・調停事件の事件別新受件数(全家庭裁判所)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 最高裁判所 裁判手続き 家事事件Q&A 第11 成年後見に関する問題 Q.成年後見人の役割はどのようなものですか?(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 厚生労働省 成年後見制度の現状(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 日本弁護士連合会 「成年後見制度利用促進基本計画の案」に盛り込むべき事項に対する意見書(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 内閣府 家庭裁判所における不正防止策の現状と今後の在り方等について

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