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高齢者虐待防止

公開日:2019年2月13日 12時50分
更新日:2023年6月 8日 10時15分

高齢者虐待防止法とは

 高齢者虐待法とは、在宅や施設内において、高齢者の人権を無視して、身体的への暴行、心理的な外傷を与える行為、養護の著しい怠慢、財産の不当な処分等を行うことです。高齢者の人権・利益を守るため、高齢者虐待の防止等に関する国等の責務、虐待を受けた高齢者の保護のための処置、擁護者の負担軽減を定めた高齢者虐待防止法(高齢者の虐待防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)が平成17年11月1日に国会で可決成立し、平成18年4月1日より施行されました。

家庭内虐待と施設内虐待

 高齢者虐待は、家庭内虐待と施設内虐待の二つに分離され、その種類には身体的虐待、心理的虐待、世話の放任、遺棄、性的虐待、経済的虐待があります。

 高齢者虐待が起こる要因には介護者の負担がもっとも大きいとされますが、その背景には認知症や過去の人間関係など、様々な要因があると考えられます。

 また、日本の風土においては虐待に対する当事者の意識が低く、虐待そのものが表に出にくい状況があります。ミトンをつけることや4点柵で対応することなど身体拘束も高齢者虐待にあたります。

高齢者虐待の現状

 高齢者虐待の現状について、表の平成26年度厚生労働省が行った「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応現状等に関する調査結果」によると、虐待と認められ、市町村等による対応が行われた件数は、養介護施設従事者等によるものが300件あり、前年度より79件増加(前年比35.7%)しています。また、養護者によるものが15,739件あり、前年度より8件増加(前年比0.1%)しています。高齢者への虐待は8年連続最多を更新しています。

 養介護施設従者等による高齢者虐待の種別・類型では「身体的虐待」が63.8%と最も多く、次いで「心理的虐待」が43.1%、「経済的虐待」が16.9%でした。

 また、養護者による高齢者虐待の種別・類型では、「身体的虐待」が66.9%で最も多く、次いで「心理的虐待」が42.1%、「介護等放棄」が22.1%、「経済的虐待」が20.9%でした。

 養護者による虐待の被害者は女性が77.4%で、年齢は80~84歳が23.8%、75~79歳が21.1%でした。目立つのが認知症の人の被害で、要介護認定者における認知症日常生活自立度2以上は69.9%で、要介護認定者における障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)A以上は70.1%でした。

表:高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応現状等に関する調査結果 (平成26年度厚生労働省)
養介護施設従事者等によるもの※1養介護施設従事者等によるもの※1養護者によるもの※2養護者によるもの※2
相談・通報件数虐待判断件数相談・通報件数虐待判断件数
26年度 1,120件 300件 25,791件 15,739件
25年度 962件 221件 25,310件 15,731件
増減(増減率) 158件
(16.4%)
79件
(35.7%)
481件
(1.9%)
8件
(0.1%)

※1介護老人福祉施設など養介護施設又は居宅サービス事業など養介護事業の業務に従事する者

※2高齢者の世話をしている家族、親戚、同居人等

高齢者虐待防止対策

 高齢者虐待防止対策は、予防が重要であることはいうまでもありませんが、それには一般市民、関係者への啓発が欠かせません。高齢者虐待防止を実際に地域で行うために、平成18年度から市町村が設置する地域包括支援センター(リンク1参照)は通報受理機関になります。センターでは様々なメンバーによりネットワークが構築され、スクリーニングや支援会議を開き、虐待のケースの対策を検討し、実行します。

リンク1 地域包括支援センターとは

 養介護施設従事者等による高齢者虐待の問題は、不適切なケアの問題から連続的に考える必要があります。不適切なケアとは、不適切な介護・低い専門性、不適切なサービス、不十分なケア、不適切な関係等のことを指します。高齢者虐待の中にはグレーゾーンの行為があるため、不適切なケアの段階で発見していき、高齢者虐待に発展しないように、虐待の芽を摘む取り組みが大切です。

 さらに生命に危険がある場合には地域包括支援センターや警察への通報が必要です。場合によっては措置制度の利用により緊急にショートステイの利用等をはかり、相談、助言を通じて介護者を支援する必要もあります。経済虐待には成年後見制度(リンク2参照)の利用を推進することも有用な手段となります。虐待対策には相談助言が有効であり、加害者に対する支援が最も重要であることはいうまでもありません。

リンク2 成年後見制度とは

参考サイト

厚生労働省「平成26年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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