健康長寿ネット

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最新研究情報(機関誌Aging&Health No.70 2014夏号より)

公開日:2016年8月26日 08時00分
更新日:2019年2月 1日 22時21分

アルツハイマー病(AD)患者脳脊髄液(CSF)におけるAβオリゴマーの検出

 近年アミロイド形成の中間体であるAβオリゴマーの神経毒性が注目されている。Savageらは高感度AβオリゴマーELISA系を、またSalvadoresらは凝集核形成能を指標にした検出系を用い、共にAD患者CSF中でAβオリゴマーの上昇を報告した。今後ADの診断や治療効果を示すバイオマーカーとして検証・確立されることが期待される

Savage MJ et al. J Neurosci. 34, 2884-2897, 2014 / Salvadores N et al. CellRep. 7, 261-268, 2014)。

神経分化の統括因子REST/NRSFがアルツハイマー病も制御か?

 幹細胞や未分化組織から神経組織ができる。その時ニューロンの分化を統括的に制御する重要な転写因子の1つがREST/NRSFだ。これは神経特異的な遺伝子を統括的に抑制する。その抑制がはずれると神経になる。ところがこの因子は老齢の脳では発現が高く、アルツハイマー病の脳では低い。しかも、そこではストレス応答遺伝子をポジティブに制御する。つまり、この因子があるとニューロンは保護される。RESTは発達期にも老年期にも一生にわたって重要な働きをする因子らしい。ハーバード大学のBruce Yankner一派の最新研究結果である。(Lu T et al.Nature. 507, 448-454, 2014

エピジェネティッククロック:DNAのメチル化度で人の年齢を知る

 この人は何歳だろう?人はだいたい顔や姿から推理することができるが、それは正確ではない。では生物学的な年齢を戸籍からではなく科学的に確定する方法はあるだろうか?最近、米国のUCLAの科学者が人の細胞のゲノム全体のメチル化パターンでほぼ正確に推理できるとしている。精度は98~99.7%と驚異的である。血液はもちろん組織細胞でも尿からでも計測可能という。その生物学的意味合いを理解する必要性はあるが、事件での被害者の年齢推定など応用範囲は広い。(Horvath.S, Genome Biol. 14, R115, 2013 / GibbsWW. Nature. 508, 168-170, 2014

高感度CRPは男性でも骨粗鬆症性骨折の独立したリスク因子

 慢性炎症が骨折リスクを高めることが女性では知られていたが、MrOSSweden研究により高感度CRPが男性でも骨折の独立したリスク因子であることが報告された。本研究はスウェーデン地域住民男性2,910名(平均年齢75歳)を対象に平均5.4年間追跡した縦断研究で、CRP高値群は低値群に比し全骨折のHR 1.48(95%CI:1.20-1.82)、脊椎臨床骨折のHR1.61(95%CI:1.12-2.29)であった。(Eriksson AL et al. J Bone MinerRes. 29, 418-423, 2014

骨粗鬆症性骨折後の死亡率の増加には再骨折も大きく関わる

 骨粗鬆症性骨折を一度発症すると、その後、再骨折ならびに死亡リスクが高まることが知られている。オーストラリアDubbo市での前向き縦断研究によると、初回骨折後5年間までの死亡リスクの増加は、主として初回骨折に関わる死亡リスクの増加とみなされるが、一方、初回骨折後5~10年の間の死亡リスクの増加は、主として再骨折に関わる死亡リスクの増加によることが明らかとなった。(Bliuc D et al. J Bone MinerRes. 28, 2317-2324, 2013

米国コレステロール治療に関するガイドラインが改訂

 米国のコレステロール治療ガイドライン(GL)が2013年に改訂された。2005-2010年のNHANESデータを用いてGL改訂前後の全米でのスタチン推奨例の変化を推計した。その結果、スタチン推奨例は40-75歳で4,320万人(37.5%)から5,600万人(48.6%)に増加した。この増加は、新GLで「心血管イベント10年リスク」が単独の層別化因子として用いられたことによる。増加した例は、男性、血圧が高め、LDLコレステロールは低めの例であった。スタチン推奨例は、冠動脈疾患のない60-75 歳の男性で30.4%から87.4%に、女性で21.2%から53.6%に増加し、スタチン推奨例の増加は高齢者推奨例の増加によることが明らかになった。(Pencina MJ et al:N Engl J Med Published online March 19, 2014

サルコペニア診断に電気インピーダンス法の導入

 サルコペニアは歩行速度もしくは筋力低下による筋力パフォーマンス低下と筋量低下で定義される。これまでサルコペニア評価のアルゴリズムは欧米を基本としていたが、アジアのワーキンググループの報告が出された。この報告では、筋量計測でこれまでのDEXA法に電気インピーダンス法(BIA)を加えた。BIAは体脂肪計測に用いられるが、計算アルゴリズムを変えることで簡便に利用でき、X線による被曝もないことから、今後、診断に広く用いられることになるであろう。(Chen LK et al.JAMDA. 15. 95-101, 2014

転載元

公益財団法人長寿科学振興財団発行 機関誌 Aging&Health No.70

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