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嚥下食とは

公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2022年7月21日 10時20分

嚥下食とは

 嚥下食とは、飲み込みや咀嚼といった嚥下機能の低下がみられる場合に、嚥下機能のレベルに合わせて、飲み込みやすいように形態やとろみ、食塊のまとまりやすさなどを調整した食事のことを言います。嚥下訓練に使用される嚥下訓練食品も含まれます。

 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会では、嚥下食を嚥下のレベルによって5段階に分類しています(図1、表1、表2参照)

嚥下食のレベル

  • 0j:嚥下訓練食品 スライス上のゼリー
  • 0t:嚥下訓練食品 ゼリー
  • 1j:嚥下調整食 ゼリー・プリン・ムース
  • 2:嚥下調整食 ミキサー食、ピューレ食、ペースト食(2-1:滑らかで均質、2-2:粒を含む不均質)
  • 3:嚥下調整食 やわらか食、ソフト食
  • 4:嚥下調整食 全粥、軟飯、軟菜食

図1:嚥下食分類のピラミッド 1)
表1:学会分類2013(食事)早見表1)
コード
(Ⅰ-8項)
名称 形態 目的・特色 主食の例 必要な咀嚼能力
(Ⅰ-10項)
他の分類との対応
(Ⅰ-7項)
0j 嚥下訓練食品0j 均質で,付着性・凝集性・かたさに配慮したゼリー離水が少なく、スライス状にすくうことが可能なもの 重度の症例に対する評価・訓練用
少量をすくってそのまま丸呑み可能
残留した場合にも吸引が容易
たんぱく質含有量が少ない
(若干の送り込み能力) 嚥下食ピラミッドL0
えん下困難者用食品許可基準Ⅰ
0t 嚥下訓練食品0t 均質で,付着性・凝集性・かたさに配慮したとろみ水
(原則的には,中間のとろみあるいは濃いとろみ※1のどちらかが適している)
重度の症例に対する評価・訓練用 少量ずつ飲むことを想定
ゼリー丸呑みで誤嚥したりゼリーが口中で溶けてしまう場合たんぱく質含有量が少ない
(若干の送り込み能力) 嚥下食ピラミッドL3の一部
(とろみ水)
1j 嚥下調整食1j 均質で,付着性,凝集性,かたさ,離水に配慮したゼリー・プリン・ムース状のもの 口腔外で既に適切な食塊状となっている(少量をすくってそのまま丸呑 み可能) 送り込む際に多少意識して口蓋に舌を押しつける必要がある 0jに比し表面のざらつきあり おもゆゼリー、ミキサー 粥のゼリー など (若干の食塊保持と送り込み能力 嚥下食ピラミッドL1・L2
えん下困難者用食品許可基準Ⅱ UDF区分4(ゼリー状)
(UDF:ユニバーサルデザインフード)
2-1 嚥下調整食2-1 ピューレ・ペースト・ミキサー食など、均質でなめらかで、べたつかず、まとまりやすいもの スプーンですくって食べることが可能なもの 口腔内の簡単な操作で食塊状となるもの(咽頭では残留,誤嚥をしにくいように配慮したもの) 粒がなく、付着性の低いペースト状のおもゆや粥 (下顎と舌の運動による食塊形成能力および食塊保持能力) 嚥下食ピラミッドL3
えん下困難者用食品許可基準Ⅱ・Ⅲ
UDF区分4
2-2 嚥下調整食2-2 ピューレ・ペースト・ミキサー食などで、べたつかず,まとまりやすいもので不均質なものも含む スプーンですくって食べることが可能なもの 口腔内の簡単な操作で食塊状となるもの(咽頭では残留,誤嚥をしにくいように配慮したもの) やや不均質(粒がある)でもやわらかく、離水もなく付着性も低い粥類 (下顎と舌の運動による食塊形成能力および食塊保持能力) 嚥下食ピラミッドL3
えん下困難者用食品許可基準Ⅱ・Ⅲ
>UDF区分4
3 嚥下調整食3 形はあるが,押しつぶしが容易,食塊 形成や移送が容易
咽頭でばらけず 嚥下しやすいように配慮されたもの 多量の離水がない
舌と口蓋間で押しつぶしが可能なもの
押しつぶしや送り込みの口腔操作を要し(あるいそれらの機能を賦活し),かつ誤嚥のリスク軽減に配慮がなされているもの
離水に配慮した粥 など 舌と口蓋間の押しつぶし能力以上 嚥下食ピラミッドL4
高齢者ソフト食
UDF区分3
4 嚥下調整食4 かたさ・ばらけやすさ・貼りつきやすさ などのないもの 箸やスプーンで切れるやわらかさ 誤嚥と窒息のリスクを配慮して素材と調理方法を選んだもの
歯がなくても対応可能だが,上下の歯槽提間で押しつぶすあるいはすりつぶすことが必要で舌と口蓋間で押しつぶすことは困難
軟飯・全粥 など 上下の歯槽提間の押しつぶし能力以上 嚥下食ピラミッドL4
高齢者ソフト食
UDF区分2およびUDF区分1の一部
  • 学会分類2013は、概説・総論、学会分類2013(食事)、学会分類2013(とろみ)から成り、それぞれの分類には早見表を作成した。
  • 本表は学会分類2013(食事)の早見表である。本表を使用するにあたっては必ず「嚥下調整食学会分類2013」の本文を熟読されたい。なお、本表中の【 】表示は、本文中の該当箇所を指す。
  • ※1 上記0tの「中間のとろみ・濃いとろみ」については,学会分類2013(とろみ)を参照されたい。
  • 本表に該当する食事において、汁物を含む水分には原則とろみを付ける。【Ⅰ-9項】 ただし、個別に水分の嚥下評価を行ってとろみ付けが不要と判断された場合には、その原則は解除できる。
  • 他の分類との対応については、学会分類2013との整合性や相互の対応が完全に一致するわけではない。【Ⅰ-7項】
表2:学会分類 2013(とろみ)早見表 1)
段階1
薄いとろみ
(Ⅲ-3 項)
段階2
中間のとろみ
(Ⅲ-2 項)
段階3
濃いとろみ
(Ⅲ-4 項)
英語表記 Mildly thick Moderately thick Extremely thick
性状の説明(飲んだとき) 「drink」するという表現が適切なとろみの程度
口に入れると口腔内に広がる液体の種類・味や温度によっては,とろみが付いていることがあまり気にならない場合もある
飲み込む際に大きな力を要しないストローで容易に吸うことができる
明らかにとろみがあることを感じがありかつ,「drink」するという表現が適切なとろみの程度
口腔内での動態はゆっくりですぐには広がらない
舌の上でまとめやすい
ストローで吸うのは抵抗がある
明らかにとろみが付いていて,まとまりがよい
送り込むのに力が必要
スプーンで「eat」するという
表現が適切なとろみの程度ストローで吸うことは困難
性状の説明(見たとき) スプーンを傾けるとすっと流れ落ちる
フォークの歯の間から素早く流れ落ちる
カップを傾け,流れ出た後には,うっすらと跡が残る程度の付着
スプーンを傾けるととろとろと流れる
フォークの歯の間からゆっくりと流れ落ちる
カップを傾け,流れ出た後には,全体にコーテイングしたように付着
スプーンを傾けても,形状がある程度保たれ,流れにくいフォークの歯の間から流れ出ない
カップを傾けても流れ出ない
(ゆっくりと塊となって落ちる)
粘度(mPa・s)【Ⅲ-5 項】 50―150 150―300 300―500
LST 値(mm)【Ⅲ-6 項】 36―43 32―36 30―32
  • 学会分類2013 は、概説・総論,学会分類2013(食事)、学会分類2013(とろみ)から成り、それぞれの分類には早見表を作成した。
  • 本表は学会分類2013(とろみ)の早見表である、本表を使用するにあたっては必ず「嚥下調整食学会分類2013」の本文を熟読されたい。
  • なお、本表中の【 】表示は、本文中の該当箇所を指す。
  • 粘度:コーンプレート型回転粘度計を用い、測定温度20℃、ずり速度50 s-1 における1分後の粘度測定結果【Ⅲ-5 項】。
  • LST 値:ラインスプレッドテスト用プラスチック測定板を用いて内径30 mm の金属製リングに試料を20 ml 注入し、30 秒後にリングを持ち上げ、30 秒後に試料の広がり距離を6 点測定し、その平均値をLST 値とする【Ⅲ-6 項】。
  • 注1.LST 値と粘度は完全には相関しない。そのため、特に境界値付近においては注意が必要である。
  • 注2.ニュートン流体ではLST 値が高く出る傾向があるため注意が必要である。

摂食・嚥下とは

 摂食・嚥下とは、食べ物を認識してから口に入れ、咀嚼して飲み込み、食道、胃まで送り込む過程のことを言います。摂食は食べること、嚥下は飲み込むことを指します。摂食と嚥下は5つの過程に分けられます。

先行期

 食べ物を認識し、どれをどのくらい、どの順番で食べるかということの判断や唾液の分泌を促す時期です。

準備期

 口の中に入れた食べ物を咀嚼(そしゃく)して飲み込みやすいように細かくし、唾液と混ぜ合わせて食塊(しょっかい)を作ります。

口腔期

 食塊を口の中から舌の運動によって、咽頭へと送る時期です。

咽頭期

 喉から「ごっくん」をして食道へ食塊を送り込む時期です。

食道期

 食道の蠕動運動によって、食塊を胃へ送り込む時期です

嚥下食の作り方の注意点

  • 刻み食はバラバラになってまとまりにくいため、ある程度厚みのある塊で、舌でつぶせるぐらいの柔らかさにします。喉への送り込みが難しい場合は、片栗粉やとろみ剤でとろみをつけるか、ゼラチンやゲル化剤でゼリー状にします。
  • ゼリー状は飲み込みやすいですが、滑りが良いので誤嚥のリスクも高くなります。咽頭期に障害のある場合は、ゆっくりと流れ落ちていくトロミをつけたペースト状のものが良い場合もあります。
  • 水分でムセがみられる方は、とろみをつけます。サラサラすぎるとむせやすくなり、ドロドロすぎると引っかかりやすくなります。個人によってトロミの調節が必要です。
  • 好物の使用、感覚刺激を入れるためにやや濃いめの味付け、体温と温度差をつけること、食欲をそそる匂いや盛りつけを意識して食べる意欲につなげましょう。
  • 嚥下しにくい食材は、食べやすく、飲み込みやすくする工夫が必要です。

嚥下しにくい食材例

  • 水分
  • こんにゃく、かまぼこ、たこなど弾力性のあるもの
  • おから、ひき肉などのボロボロしているもの
  • ゆで卵やほぐした魚、ふかし芋などのパサつくもの
  • 生野菜、ごぼうなど繊維質の多いもの
  • フライ、天ぷらなどのごわごわした衣のついたもの
  • ごま、ピーナツ、大豆などの粒が残りやすい豆類
  • のり、わかめ、餅など口腔内や喉に付着しやすいもの
  • 酸味や辛みの強い刺激物

作り方

嚥下障害が重度の場合(ゼリー状)

お茶(水分)ゼリー

 お茶(水分)300ccに対し、ゼラチン5g(1.6%濃度)

  1. 濃いめのお茶300ccを作り、70度以上のうちに粉ゼラチン5g(1.6%濃度)を溶かし入れます。
  2. ダマにならないようによくかき混ぜて、型に流し入れ、冷やし固めます。

おかず(粥)ゼリー

  1. おかずとだし汁(粥の場合は全粥)、ゼラチンまたはゲル化剤をミキサーにかけて、よく混ぜ、ペースト状にします。
  2. 1を鍋に入れて火にかけながら、ひと煮立ちさせるまで焦げないように混ぜます。
  3. 型やバットなどに流し込み、冷やし固めます。

嚥下障害が中等度の場合(ピューレ状)

お茶(水分)にとろみをつける

  1. 増粘剤を用いて、お茶にとろみをつけます。増粘剤によって常温で溶かせるものもあります。
  2. 表記内容に従って、増粘剤の量を加減し、個人に適した粘度に調整します。

おかずピューレ

  1. おかずとだし汁(粥の場合は全粥)をミキサーにかけてよく混ぜ、ペースト状にします。だし汁の量を調整して個人のレベルに合わせた粘度にします。
  2. とろみが必要な場合は増粘剤を加えて調整します。
参考リンク:歯科訪問ネット 介護食・嚥下調整食レシピ 一般社団法人日本訪問歯科協会(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

引用

  1. 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会医療検討委員会,医療検討委員会,嚥下調整食特別委員会藤谷順子,宇山理紗,大越ひろ,栢下淳,小城明子,高橋浩二,前田広士,藤島一郎(委員長),植田耕一郎(外部委員):日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2013,日摂食嚥下リハ会誌17(3)2013,258 より引用(PDF:520KB)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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