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後縦靭帯骨化症とは

後縦靭帯骨化症とはどんな病気?

 後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)とは、背骨(椎骨:ついこつ)の中にある脊柱管(せきちゅうかん)の内部後方を走る後縦靭帯(こうじゅうじんたい)が何らかの原因で骨のように硬くなって厚く肥厚することによって起こります。骨化して厚くなった後縦靭帯が脊柱管を通っている神経(脊髄:せきずい)もしくは神経根を圧迫すると、自覚症状が出現します。

 レントゲン写真などで後縦靭帯の骨化が認められることはよくありますが、脊髄および神経根の圧迫の程度が軽ければ自覚症状はありません。骨化による自覚症状がある場合を特に「後縦靭帯骨化症」と呼んでいます。

 背骨のどの部分が骨になってしまったかによって、頚椎後縦靱帯骨化症、胸椎後縦靱帯骨化症、腰椎後縦靱帯骨化症と名前が付けられています。最も多いのは頚椎後縦靭帯骨化症であり、次いで胸椎、腰椎とされています。

※ 神経根(しんけいこん):
神経根とは、脊髄から分かれて手足などへ向かう神経の根元のこと

後縦靭帯骨化症の疫学

 後縦靭帯骨化症は、1960年に日本で初めて報告された病気です。当初は日本人にしか起こらない病気ではないかと思われていましたが、現在では世界各地で発症が見られています。人口当たりのレントゲン写真上での「後縦靭帯骨化」の発生率をみた研究では、日本では1.5~3.2%であったのに対し、台湾で0.2~0.4%、中国で1.74%、イタリアで1.53%、シンガポールで0.83%と、日本人に多い傾向がみられます。

 性別では、男性に多い病気であるとされています。日本人を対象とした特定疾患医療受給者の調査では、男女比は1.93と男性が女性の2倍程度の発症率でした。この傾向は、日本だけではなく世界各国でも見られています

 年齢でみると、症状が出てくるのは50歳以降が多いようです。若いころからレントゲン写真で後縦靭帯の骨化が指摘されていても、自覚症状が出るのはまれであるとされています。

後縦靭帯骨化症の経過 

 レントゲン写真で後縦靭帯の骨化が見られても、脊髄および神経根の圧迫の程度が軽ければ自覚症状はありません。後縦靭帯の骨化を17年間経過観察したところ症状が出現したのは20%程度であるという調査結果があります。ただし、レントゲン写真でみると年月とともに骨化は少しずつ大きくなるとされており、一度でも骨化の指摘を受けたことがある方は定期的な経過観察が必要です。

 自覚症状が出てからの進行の速度も人それぞれです。麻痺が進んで寝たきりになる方もいれば、症状が進行しない方もいます。残念ながら、一度出現した症状が自然と良くなるということはほとんどありません。

 後縦靭帯骨化症の20%前後の患者さんは、転倒などの事故をきっかけとして症状が急に悪くなっています。また、寝たきりなど高度の脊髄損傷を起こした方には8%以上の高い確率で後縦靭帯骨化が見つかっています。

後縦靭帯骨化症と遺伝

 後縦靭帯骨化症には家族内発症が比較的多く、遺伝的な要因があることは明らかです。これまでの調査の結果を総合すると、兄弟で後縦靭帯骨化症を発症する確率は30%程度、血縁者に後縦靭帯骨化症の患者さんがいる場合の発症率は23%程度とされています。家系調査では、後縦靭帯に限らず靭帯の骨化を生じる確率の高い家系が見つかっています。しかしながら、血縁者全員が後縦靭帯骨化を発症するわけではなく、遺伝のほかにも様々な要因がからんでいるものと考えられています。

難病指定による公的補助

 後縦靭帯骨化症は「難病の患者に対する医療等に関する法律」(通称:難病法)における医療費助成対象疾患(指定難病)です。

 難病法によると、難病とは、「発症の機序が明らかではなく、治療方法が確立しておらず、希少な疾病であって、長期の療養を必要とするもの」と定義されています。その中でも「患者数が本邦において一定の人数(人口のおおむね千分の一(0.1%)程度に相当する数と厚生労働省令において規定している。)に達しないこと、客観的な診断基準(又はそれに準ずるもの)が確立していること」が指定難病とされています。

 平成29年3月現在、306の病気が指定難病の対象として登録されています。指定難病は、病気の重症度や指定医療機関受診などの条件を満たす場合、医療費助成の対象となります。

参考文献

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