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後縦靭帯骨化症の原因

公開日:2016年7月25日 13時00分
更新日:2019年2月 1日 20時10分

 後縦靭帯骨化症は、背骨(脊椎:せきつい)の内部を走る後縦靭帯が骨のように硬くなり、それが脊髄(せきずい)もしくは神経根を圧迫することで起こる病気です。

 どうして後縦靭帯に骨化が起こるのか、現時点でははっきりとした原因はわかっていません。遺伝やホルモンの異常、カルシウム代謝や糖尿病の関係など、いろいろな説が出ています。それらについて解説します。

※ 神経根(しんけいこん):
神経根とは、脊髄から分かれて手足などへ向かう神経の根元のこと

後縦靭帯骨化症は遺伝する場合もある

 後縦靭帯骨化症は、遺伝することがあります。実際に、患者さんの兄弟の30%ほど、血縁者でみると23%に後縦靭帯骨化がみられたとする報告もあります。一卵性双生児(双子)に対する調査では、85%の兄弟で後縦靭帯骨化が見られました。後縦靭帯骨化が生じる確率の高い家系もいくつか見つかっていますので、ある程度の確率で遺伝することは間違いないようです。しかしながら、実際に骨化を発症するかどうかについては下記に述べる生活習慣などその他の要因も絡んでくるため、確実に遺伝するとまでは現時点では言い切れません。

他の病気の影響による様々な骨化症

 ほかの病気の影響で後縦靭帯だけではなく全身の様々な場所に骨化を起こす場合もあります。身体の中で骨が造られるときには、カルシウムやリン、ビタミンDといった様々な物質や副甲状腺ホルモン(PTH)などのさまざまなホルモンが複雑に関係しています。これらのうちの一部が異常をきたすと、骨が異常に造られてしまったり、本来骨ではない場所が骨のようになってしまったりするということが起こります。

 例えば、「副甲状腺機能低下症」や「ビタミンD抵抗性くる病」に後縦靭帯骨化症が合併することが知られています。「副甲状腺機能低下症」はPTHが分泌されない病気です。PTHには古い骨を壊して再吸収する働きがあります。PTHが少ないことで骨の再吸収がうまく起こらず、骨化が起こりやすいとされています。 

 「ビタミンD抵抗性くる病」は、カルシウムおよびリンの代謝異常によって起きる病気です。後縦靭帯骨化をきたす詳しいメカニズムはわかっていません。

 後縦靭帯だけではなく、脊椎自体に骨化が起こる病気もあります。「強直性(きょうちょくせい)脊椎骨増殖(こつぞうしょく)症」と呼ばれています。

 その他、「筋緊張性ジストロフィー」や「末端肥大症」の患者さんにも後縦靭帯骨化が合併することがわかっています。カルシウム代謝の異常やホルモンの働きによるものと考えられていますが、こちらも詳細はわかっておらず、今後の研究の進展が望まれます。

生活習慣と後縦靭帯骨化

 以上に挙げた病気のほかに、糖尿病と後縦靭帯骨化が関係している可能性が高いとされています。糖尿病の患者さんの15%前後に後縦靭帯骨化が見られたとする報告もあり、明らかに一般成人よりも多いことがわかります。どうして糖尿病の方に後縦靭帯骨化が多いのかについては、血糖値や血糖を下げるインスリンというホルモンの値など、いろいろな面から解析が行われていますが、いまだにはっきりとした理由はわかっていません。

 さらに、肥満の方には後縦靭帯骨化が多いことがわかっています。肥満の方には糖尿病およびその前段階の耐糖能異常(たいとうのういじょう)の方が多いのですが、肥満自体が後縦靭帯骨化と関係しているのか、または肥満により糖尿病になることで後縦靭帯骨化が起こるのか、これもまだはっきりとした見解はないようです。肥満が改善すると骨化が起こらなくなるのか、についてもまだわからないことが多いようです。

 その他の生活習慣と後縦靭帯骨化の関係を調べると、適度な睡眠(6~8時間)を取っている人は頸椎の後縦靭帯骨化症の発症率が低かったという報告があるようです。運動、喫煙、飲酒については、残念ながら骨化との関係は認められませんでした。しかしながら運動については、歩行などの有酸素運動を行うことにより体重を減らし糖尿病の改善に一役買うことがわかっています。したがって、運動は糖尿病を抑えることにより、骨化が進むのを抑える働きがあるものと期待されています。

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