健康長寿ネット

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後縦靭帯骨化症の治療

 現在の医療技術では、骨化した後縦靭帯を元に戻す方法は残念ながらありません。後縦靭帯骨化症の治療の目的は、自覚症状を軽くすることと、神経への圧迫を防ぐ、もしくは解除することで四肢麻痺などの重い脊髄症状が起こらないようにする、すでに起こしている場合にはこれ以上症状が進行しないようにすることです。

後縦靭帯骨化症は治療が必要ない場合もある

 後縦靭帯骨化があるからといって、必ず治療が必要になるわけではありません。レントゲン写真やCT検査などで偶然見つかった場合、それが原因と思われる自覚症状がなければ、特に治療は行いません。ただし、長い年月をかけて徐々に骨化が進行して症状が出てくることもあるので、レントゲン写真を定期的に取って経過観察を行います。

後縦靭帯骨化症の主な治療法

 後縦靭帯骨化症の治療法には、大きく分けて保存治療と手術療法があります。どちらの治療を選択するかについては一定の基準はなく、お一人お一人の症状の程度やレントゲン写真・CT検査などの所見を考慮に入れて決定されます。

保存療法

 保存療法には薬物療法や運動療法、理学療法などがあります。それぞれに一長一短があり、症状の種類や程度によって選択されています。いずれの場合も後縦靭帯の骨化をなくすというわけではなく、今ある症状を軽くして、これ以上進行させないように、といった意味合いで治療が行われます。

薬物療法

非ステロイド系消炎鎮痛剤

 首や肩のコリ・痛み、また神経根の圧迫による手足の痛みなどに対する痛み止めの飲み薬です。

ステロイド剤

 飲み薬と注射があります。神経は骨化した靭帯に圧迫されるとむくみます。むくみが起きると、神経障害がさらに悪化することがあります。ステロイド剤はこのむくみを取り神経が傷つくのを抑える役割があります。

筋弛緩剤、抗うつ剤

 靭帯が骨化すると、脊椎の動きが悪くなり、首や肩などの筋肉に負担がかかるため、筋肉が緊張することで首や肩のコリ・痛みが出現します。筋弛緩剤や抗うつ剤には、この筋肉の緊張を和らげる働きがあります。

各種ビタミン剤

 ビタミンB12は末梢神経障害の改善、ビタミンEは血液の流れを良くする効果が期待されています。

ビスフォスフォネート製剤

 日本では骨粗鬆症治療薬として発売されています。骨の密度を高めると同時に、本来は骨ではない部分が骨になるのを防ぐ効果があるとされ、海外では後縦靭帯骨化症の治療に利用されています。日本では健康保険の適応ではありません。

運動療法

 麻痺などで動きにくくなった筋肉や関節を動かすことで、筋肉量や血液の流れを保ちます。無理に行うとかえって症状を悪化させることがあるので、医師や理学療法士など専門家の指導の下に行います。

物理療法

 首が後ろに反らないように固定したり、首を特殊な装置で引っ張ることにより、脊椎の安静を保ち病状の悪化を防ぎます。また、身体を温める温熱療法は、緊張でこわばった筋肉を和らげ、血液の流れを良くします。

手術療法

 保存的治療で効果が得られず症状が進行する場合、また手足のしびれ感、手指を使う細かな動作ができない、足がつまずきやすいなどの明らかな脊髄症状がある場合には手術を検討します。

 手術には、首の前を切開する「前方除圧固定術」と首の後ろ(項)を切開する「椎弓切除術」「脊柱管拡大術」などの方法があります。いずれの方法も、骨化した靭帯を削る、もしくは脊椎の骨を削ることで脊柱管を広げ、神経の圧迫を解除します。いずれも一長一短があり、どの手術方法を選択するかは、脊椎や骨化した靭帯の形、体型、脊椎の曲がりなどいろいろな要素について考慮の上で決定されます。

 どの手術方法を選択しても、自覚症状は40~60%ほどの改善が見込まれます。合併症としては、麻痺の悪化、脊髄を包む膜が破れて中の漏れる髄液漏(ずいえきろう)、血腫(血のかたまりができて神経を圧迫する)、創傷治癒遅延(そうしょうちゆちえん;傷の治りが悪い)、創部感染などが数~10数%の確率で起こり得ます。

参考文献

頚椎後縦靱帯骨化症診療ガイドライン2011 改訂第2版 監修 日本整形外科学会、日本脊椎脊髄病学会  Mindsガイドラインライブラリ(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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