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在宅酸素療法(HOT)

公開日:2016年7月25日 09時00分
更新日:2019年2月 1日 19時32分

在宅酸素療法(HOT)とは

 在宅酸素療法とは、酸素を体内に取り込めない患者さん(慢性呼吸不全などにより低酸素血症をきたしている)が自宅など病院の外で、酸素を吸入しながら生活する治療法です。HOTは「Home Oxygen Therapy」の頭文字をとった通称名です。現在、日本全国で約10万人強のHOT患者さん(慢性呼吸不全、慢性心不全や肺高血圧症など)がみえます。

 HOTは1985年に医療保険が適用されて以来、多くの慢性呼吸不全患者さんの在宅ケアを可能にし、社会的なニーズや関心が高まっています。HOTによって、職場復帰が可能になったり、海外旅行に出かけられる例もあります。1割負担の患者さんのHOTの負担額は、1ヶ月約8千円程ですが、種々の医療費助成制度が整備されてきましたので、病院窓口で相談して下さい。

 年代別で見たHOT導入患者さんは、70歳台が約38%、80歳以上が約16%程度といわれ、高齢者に多くみられています。在宅呼吸ケア白書2010では、HOTを実施している施設666施設のうち患者19,789人の上位5疾患は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)45%、肺線維症等18%、肺結核後遺症12%、肺がん6%、慢性心不全によるチェーンストークス呼吸3%でした。

 高齢者が利用しやすいような、さらなる機器の改良やより充実した社会支援が期待されています。とくに在宅ケアを含む診療体制が、包括的呼吸リハビリテーションを中心にして整備される必要があります。

HOTの効果は

 息切れなどの自覚症状が改善し、日常生活の範囲が拡大し、充実した家庭生活や社会生活に復帰することがあげられます。

 酸素吸入により心臓をはじめとする諸臓器を低酸素状態から守り、寿命を延ばす効果も実証されています。

HOTの方法は

 現在我が国では、図1のような酸素濃縮器が普及しています。

 一般的には酸素濃度を90%以上に濃縮できる、吸着型の機器が用いられます。比較的小型で音も静かになってきましたが、携帯できるものはなく、外出時など電気のないところでは、携帯用の酸素ボンベを用います(図2参照)。

 液体酸素は、自宅に大型の液体酸素容器を設置し(図3参照)、そこから直接配管して酸素を吸入したり、外出のときなどには、少量の酸素容器(子機)に移し替えて吸入するもので、持ち運びやすい利点があります(図4参照)。

図1:酸素濃縮器
図2:携帯用酸素ボンベ
図3:自宅に設置する大型液体酸素容器と子機
図4:液体酸素子機で外出可能

HOTの注意点は

  1. 火気厳禁です。酸素には、ものの燃焼を促進する性質があります。周囲2m内はタバコやライター、ストーブなど火気はけっして近づけないで下さい。HOT患者さんも、周囲の方々も、必ず禁煙する必要があります。
  2. 酸素の吸入流量、吸入時間はひとりずつ最適な条件が退院時に設定されています。酸素流量の変更は危険を伴うことがありますので、処方された流量・時間を遵守してください。とくに酸素流量の増量はCO2ナルコーシスという意識障害をきたすことがありますので、充分注意して下さい。
  3. HOTは安定した呼吸不全患者さんに処方されますが、風邪や疲労を契機に病状が悪化する場合もあります。(急性増悪)息切れの悪化、発熱、むくみや体重増加がみられるときは、急性増悪を疑い、我慢せず、速やかに医療機関を受診してください。

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