健康長寿ネット

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高齢者睡眠障害の治療

公開日:2017年6月29日 09時25分
更新日:2019年8月 6日 13時45分

高齢者睡眠障害の原因

 高齢者の睡眠障害の治療をする上では、原因を知る事が大切です。痛みや痒み、咳などのため眠ることが出来ない場合、これらの症状の治療が不眠の治療に結びつきます。

 睡眠障害を起こす可能性のある薬剤を内服している場合、内服薬を検討する必要が出てきます。

 その他に、睡眠障害の原因となる身体および精神疾患がある場合、その疾患の治療が不眠の治療に結びつきます。

 睡眠障害の要因の詳細は睡眠障害(リンク1参照)を参考にしてください。明らかな要因がない場合でもうつ病(リンク2参照)といった精神疾患が原因となっている場合があります。

リンク1 睡眠障害

リンク2 抑うつ

睡眠障害に対する対処

 上記のような睡眠障害の要因となる疾患の治療をしても睡眠障害が残存する場合や、これらの点に問題がなくても睡眠障害がある場合、厚生労働省・精神神経疾患研究委託費「睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班」の研究報告書にある、睡眠障害対処12の指針に示すような対処をしていきます。

睡眠障害対処12の指針

  1. 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
    • 睡眠時間の長い人、短い人、季節でも変化、8時間にこだわらない
    • 歳をとると必要な睡眠時間は短くなる
  2. 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
    • 就寝前4時間のカフェイン摂取、就床前1時間の喫煙は避ける
    • 軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニング
  3. 眠たくなってから床に就く、就寝時刻にこだわりすぎない
    • 眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝つきを悪くする
  4. 同じ時刻に毎日起床
    • 早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる
    • 日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる
  5. 光の利用でよい睡眠
    • 目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン
    • 夜は明るすぎない照明を
  6. 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
    • 朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く
    • 運動習慣は熟睡を促進
  7. 昼寝をするなら、15時前の20~30分
    • 長い昼寝はかえってぼんやりのもと
    • 夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響
  8. 眠りが浅いときはむしろ積極的に遅寝・早起きに
    • 寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る
  9. 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のびくつき・むずむず感は要注意
    • 背景に睡眠の病気、専門治療が必要
  10. 十分眠っていても日中の眠気が強い時は専門医に
    • 長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談
    • 車の運転に注意
  11. 睡眠薬の代わりの寝酒は不眠のもと
    • 睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる
  12. 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
    • 一定時刻に服用し就床
    • アルコールとの併用をしない

 基本的に指針の1から8にあることに注意をすることで、睡眠障害はある程度改善されます。

 また、ここに示す"9.睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意"や"10.十分に眠っていても日中の眠気が強い時には専門医に"については睡眠障害の要因となる疾患があるという事で、上記のとおり、その疾患の治療が重要です。

薬物療法について

 指針の1から8の点に注意しても睡眠障害が改善しなければ、薬物治療になります。現在、主に使用されている睡眠薬は、作用時間から超短時間作用型、短時間作用型、中間作用型、長時間作用型に分かれます。

 寝つきが悪いという不眠のタイプには超短時間型や短時間型の睡眠薬が有効であり、これらの薬剤は翌朝に作用が残っているということが起こりにくい利点があります。

 夜間に目が覚めて、その後眠りにくい、早朝に目が覚めるという不眠のタイプには中間作用型や長時間作用型の睡眠薬が有効です。ただ、高齢者では睡眠薬が効きすぎて翌朝まで効果が持続する場合や、ふらつきが出やすいという事があり、また、せん妄(リンク3参照)をきたす事があり、薬物治療には注意が必要です。抗うつ薬を使用する場合もあります。

リンク3 「せん妄」

寝酒について

 "睡眠薬を飲まなくても寝酒で眠れるから..."、という人もいると思われますが、これは重要な問題です。

 指針11にある通り、基本的にアルコールには睡眠導入効果はあるものの、睡眠を浅くし、一方でアルコールの影響で尿が出やすくなるため、かえって睡眠障害を増強させることとなります。

 また、睡眠導入効果は徐々に弱くなっていくため、次第に摂取量が増えていく可能性があり、アルコールをやめる事ができなくなります。さらに、アルコールにより、肝臓に障害をきたす可能性が大いにあります。このため、アルコールを睡眠導入剤の代わりに使用することは避けなければなりません。

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