健康長寿ネット

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抑うつ

抑うつの症状

 「気分が落ち込んで何にもする気になれない」、「憂鬱な気分」などの心の状態が強くなり、様々な精神症状や身体症状がみられることを抑うつ状態と言います(表1参照)。抑うつ状態が見られる疾患にはうつ病や躁うつ病、抑うつ神経症などがあります。高齢者の場合は認知症と間違われることや身体症状のみが強調され、抑うつが見逃されて重症化することもあるので注意が必要です。

表1:抑うつ状態でみられる症状
1.精神症状 <抑うつ気分>
・気分の落ち込みが特に朝、強くみられ、憂鬱で悲しい気持ちになる
<意欲の低下>
・好きだった趣味やテレビなどの娯楽も楽しめず、家族や友人と話すことも億劫に感じる
・毎日の生活に張りがなく、身だしなみや服装にも関心が持てない
<思考力・集中力の低下>
・不安や焦りを感じて落ち着かず、集中力が低下する、イライラする
<自尊心の喪失>
・希望が持てない、自分を責める感情
<死や自殺を考える>
・死にたい気持ちになる、自殺を図ろうとする
2.身体症状 <食欲の低下・亢進>
・食欲がなく何を食べてもおいしくない、食べることが面倒に感じ、体重が減る
・過食になり、体重が増加する
<睡眠リズムの異常>
・寝付けない(入眠困難)、夜に何度も目が覚める(中途覚醒)、寝ても寝た気がしない(熟眠障害)、朝早くに目が覚める(早朝覚醒)、1日中寝ている(過眠)
<倦怠感・疲労>
・体が重だるく、疲れが取れない、すぐに疲れる
<その他の症状>
・性欲の低下、頭痛、関節痛、胃痛、めまい、便秘、息苦しさなど

抑うつの原因

 抑うつが起こる原因は疾患や薬、性格、環境、ストレスなどがあります。(表2.参照)特に高齢者は、家族や友人との死別など、環境の大きな変化や、定年退職などの社会的役割の喪失、老化による身体・認知機能の低下など、抑うつになりやすい因子が多くあります。

表2:抑うつの原因
1.疾患 ・中枢神経疾患
 脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷、パーキンソン病、アルツハイマー病など
・内分泌疾患
 甲状腺機能障害、糖尿病、クッシング病など
・感染症
 インフルエンザ、結核、ウイルス性肝炎・肺炎、AIDS、伝染性単核球症など
・その他
悪性貧血、冠動脈疾患、腎不全、癌など
2.薬 アルコール、ステロイド、抗がん剤、インターフェロン、鎮痛薬、抗パーキンソン薬、降圧剤、抗精神病薬、ピルなど
3.性格 心配性、几帳面、気が弱い、融通が利かない、誠実、正義感が強い、仕事熱心、凝り性、完璧主義、頑固など
4.環境 急な引っ越しや転勤、近しい人との死別・離別、病気、事故、離婚、失恋、人事異動、学業や仕事での失敗、犯罪への関与など
5.ストレス 家庭・学校・職場・近隣での人間関係、結婚、育児、生まれ育った環境・境遇など
6.女性特有 妊娠・出産・更年期
7.老年期 老化に伴う身体機能・認知機能の低下、定年退職、子供の独立、配偶者との死別など

抑うつの診断

  • 各症状、自傷や自殺願望がないか、うつ病の既往歴・家族歴の問診
  • うつ診断のための評価法の実施(ハミルトンうつ評価尺度※1、ベックうつ質問票※2)
  • 大うつ病、特定不能のうつ病、不安性うつ病、双極性障害、不安障害などの他の精神障害、認知症、気分変調の診断
  • 疾患によるものかどうかを判断するための血液検査、薬物検査、神経内科学的検査、ポリソムグラフィ検査※3、PET検査など
※1ハミルトンうつ評価尺度
 抑うつ気分、罪責感、自殺傾向、睡眠障害などの17項目の質問に対して、検査者が患者の状態を判断して答えを選択する評価法です。
※2ベックうつ質問票
 患者自身が抑うつ症状に関する21の質問に答えて点数化する検査で、現在の抑うつ状態の程度がわかる評価法です。
※3ポリソムグラフィ検査
 睡眠障害の正確な診断のための検査で、一晩の間、脳波、心電図、呼吸、いびき、酸素飽和度などをセンサーで記録する検査です。

抑うつの治療

 本人と本人を支援する家族の理解を得て治療を進めることが重要です。薬物療法や精神療法などが行われます。(表3参照)

表3:抑うつの治療
1.支援・教育 医師の定期的(週単位)な診察により、症状の変化の把握と、患者自身と患者家族への教育・支援を行います。
・患者が自分を責めることがないようにアドバイスを行う
・何もやる気が起こらないという患者の思いを認めながらも、散歩や軽い運動などを勧めて少しずつ社会的関わりを持つように促す
・抑うつは性格的な問題ではなく、治療が必要であり、治療により予後も良好であることへの理解を促す
2.薬物療法 抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬、三環系・四環系抗うつ薬、モノアミン酸化酵素阻害薬など)、精神刺激薬、セイヨウオトギリソウなど
3.精神療法 個人または集団での認知行動療法※4、対人関係療法※5
4.電気痙攣療法 全身麻酔下で頭に電極をあて、脳に電流を流す治療法です。重度のうつ病や妊娠中の場合、薬物療法が効かない場合に行い、速効性がありますが記憶喪失が起こることがあります。
5. 光線療法 2500~10,000ルクスの光を30~60cm離して30~60分照射します。季節性うつ病患者に用いられます。
※4認知行動療法
 何か出来事や問題があった時に思い浮かんだ考えを、よりストレスのない、バランスの良い考えにシフトできる方法を身につけていく精神療法
※5対人関係療法
 最も身近な人との対人関係を軸にして、自尊心の回復を促していく精神療法

抑うつのケア・予防

抑うつの予防

 抑うつは環境の変化やストレス、疾患など、誰にでも身近に起こり得ることが原因となります。ストレスを溜めこまないこと、バランスの摂れた食事、外で日の光を浴びることが予防となります。

 ストレスを溜めこまないためには、柔軟な物の考え方が大切です。責任感が強く、真面目な方ほど、「○○でなければならない」という固い考えをしてしまいます。「○○でなくても△△でも大丈夫」、といった違う角度から物事を捉え、気持ちを軽くできる発想へと転換させましょう。運動で汗を流してリフレッシュしたり、自分がリラックスできる方法で肩の力を抜いたりすることも大切です。

 また、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの欠乏でうつになるとも言われています。セロトニンを生成するトリプトファンを含む肉、納豆、チーズ、牛乳を積極的に摂り、バランスのとれた食事を行いましょう。

 また、日照時間が減少することで冬季うつ病が起こることから、日光を浴びないことも抑うつの発症に関係があると言われています。家の外に出て、散歩などで体を動かしながら日光の光を浴びることもお勧めです。

抑うつのケア

 抑うつの人に対して家族が「心配しすぎる」、「頑張れと励ます」、「原因を追究する」、「答えを急がす」ことは避けなければなりません。抑うつの人をゆっくりと休ませ、本人が話したくなった時にゆっくりと聞くようにしましょう。抑うつの人が甘えた態度や攻撃的な態度をとっている時は距離を置いて見守ります。「死にたい」と訴えた時には話をそらさず、肯定も否定もせずにオウム返しで相槌を打ち、聞いているという姿勢で応えます。この時、頑張れと励ますのは逆効果です。対処に困った時は主治医に相談しましょう。

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