健康長寿ネット

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転倒

公開日:2016年7月26日 17時00分
更新日:2024年2月 8日 09時43分

高齢者は転倒しやすい

 加齢とともに運動能力や筋力が低下し、転びやすくなります。さらに、高齢者では骨が弱くなっていることが多く、転倒により容易に背骨の圧迫骨折や、股関節付近の骨折(大腿骨頚部骨折:だいたいこつけいぶこっせつ)を伴います。これらの骨折はさらなる移動能力の低下をもたらし、その後の健康的な生活を損なう原因となります。

 厚生労働省によると、近年、健康上の問題がなく日常生活を送れる「健康寿命」と平均寿命との間には、男性で約9年、女性で約13年の差があり、これは自立度が低下し要支援・要介護状態にある期間と考えられます。要支援・要介護状態となる原因の第1位を運動器の障害が占めていることから、健康寿命を伸ばすためにも、運動器の障害の予防が重要と考えられています(グラフ1)。

グラフ:要支援・要介護になった原因は運動器の障害24.8%、認知症17.6%、脳血管疾患16.1%、高齢による衰弱12.8%、その他28.7%と示している。
グラフ1:要支援・要介護になった原因

日本整形外科学会ロコモティブシンドロームパンフレットより引用(PDF:1MB)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

転倒の原因:ロコモティブシンドローム

 平成19年、日本整形外科学会により、ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome;運動器症候群)という新たな概念が提唱されました(関連リンク1)。

 これは、運動器の障害により移動機能の低下した状態、すなわち転倒を起こしやすい状態を総称するものです。

 ロコモティブシンドロームに陥る原因には、高齢化により、バランス能力および移動歩行能力の低下が生じた運動器不安定症(Musculoskeletal Ambulation Disability Symptom Complex:MADS)(関連リンク2)のほか、筋肉量の低下(サルコペニア;加齢性筋肉減少症)、疼痛、柔軟性の低下、関節可動域制限、運動不足、痩せすぎや肥満などがあります。

転倒しやすさの評価:ロコモティブシンドロームの診断

 ロコモティブシンドロームかどうか、およびその重症度は、

  1. 立ち上がりテスト(下肢筋力テスト)
  2. 2ステップテスト(歩幅のテスト)
  3. ロコモ25(身体状態・生活状況に関する問診)

といったテストで、簡単に調べられます。効果的に転倒を予防するためにも、定期的にロコモ度チェックを行うことが推奨されます(関連リンク3)。

転倒によるけがの治療

 転倒して骨折などを受傷した場合、けがに対する治療がメインとなります。

 しかし、高齢者では一度骨折してしまうとなかなか受傷前の生活活動度にもどれないことから、転倒予防、骨折予防が重要です。

転倒・転倒による怪我の予防のためにできること

運動

 下肢筋力、およびバランス機能の改善が有効です。

 どれくらい歩けるかにより、望ましいトレーニング方法も異なります。自分にあった安全な方法で、片足立ち、スクワット、といった簡単な運動から始めましょう。

 ほかに、柔軟性をあげるストレッチ運動や、身体活動量をあげる体操、腰痛・膝痛対策の運動も、転倒予防に有効です。

ビタミンDの摂取

 ビタミンDは、骨の成長に重要なカルシウムを調節するホルモンです。また最近の研究では、筋肉の生成や神経調節にも関与しており、ビタミンDの補充により筋力が向上することが明らかになっています。

住環境の見直し

 骨折を伴う転倒は、屋内での転倒者に多いことが知られています。段差をなくす、暗い廊下やトイレなどに自動点灯の照明を設置したりする、など、住環境の整備も重要な転倒予防法の一つです。

ヒッププロテクター

 介護施設入所者など、骨折リスクが高い方の大腿骨頸部骨折の骨折予防のためには、ヒッププロテクターも有効です。

骨粗しょう症の治療

 脆弱性骨折の予防には、投薬、および適切な食事や運動により、骨密度の低下を予防することも重要です。

関連リンク1 日本整形外科学会 ロコモチャレンジ! 2020年度ロコモティブシンドロームパンフレットより引用(PDF:1MB)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

関連リンク2 日本整形外科基礎学会 運動器不安定症とは(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

関連リンク3 ロコモチャレンジ ロコモ度テスト(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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