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体重減少

公開日:2016年7月25日 16時00分
更新日:2019年5月31日 12時56分

体重減少の症状

 「体重減少」とは、文字通り「体重が減る」という症状です。年を取ると、人間は普通にしていてもゆっくりと体重が減るものなので、必ずしも病的な所見というわけではありません。では、どのくらいのペースでどのくらい体重が減ると「病的」なのでしょうか?

 特に食事制限や過度の運動をしているわけではないのに「6か月で5%以上」の体重減少を認める場合を病的な体重減少とすることが多いです。また、BMI(体重(kg)÷身長(m)2)で18.4kg/㎡を切る場合には体重不足、栄養不良が疑われます。体重が減ることで、「からだがだるい」「疲れやすい」「何となく調子が悪い」などの自覚症状が出る場合があります。

体重減少の原因

悪性腫瘍・消化器疾患・精神疾患

 体重減少の3大要因はがんなどの悪性腫瘍、胃・十二指腸潰瘍、炎症性腸疾患、慢性膵炎などの消化管疾患、うつ病や認知症、アルコール依存症・摂食障害などを含む精神疾患であると言われています。悪性腫瘍の中では胃がん、大腸がん、肺がん、膵がんで体重の減少がみられやすいとされています。その他、糖尿病や甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫などの内分泌疾患や重度の心不全、肺気腫などの呼吸器疾患、感染性心内膜炎、結核などの重篤な病気を含む慢性の感染症、膠原病などによって起こる慢性の炎症などが原因として挙げられています。

薬の影響

 しかしながら、精査を行っても原因がわからない、ということも少なくありません。海外の報告では、体重減少の25%が原因不明であるとされています。高齢者の体重減少で意外と多いのが、薬の影響です。抗うつ剤や抗生物質、痛み止めなど体重減少の副作用を持つ薬を常用している場合があります。また、入れ歯が合わない、歯肉炎や口内炎がひどく噛めない、パーキンソン病などの神経疾患のために飲み込みが悪く物が食べられないことで体重減少をきたすことがあります。

社会的孤立や経済的困窮などの社会的背景

 また、見過ごされがちなのが、社会的孤立や経済的困窮などの社会的背景です。近年は高齢化社会の進行で独居の高齢者も急増しており、支援の手がなかなか行き届かないケースも見られます。独居の場合、孤独などから食事に対する意欲が湧かずに気が付いたら体重が減っていた、ということもままあるようです。精神的なストレスは体重減少の大きな原因となり得ます。

体重減少の診断

 実は、体重減少を訴えて病院に来院される患者さんの半数には体重減少がない、という報告もあります。体重を測定する習慣がある方の場合は問題がないのですが、測ったことがない方の場合には、ベルトの穴の位置が変わった、また今まで着ていた洋服が余るようになった、などの具体的なエピソードを確認します。

 実際に栄養状態がどうなっているか、また糖尿病や甲状腺機能亢進症のような内科的異常がないかどうか、また悪性腫瘍の可能性はないかなどを知るために血液検査は必須です。

体重減少の治療

 体重減少の原因となる病気がある場合、その治療が優先されます。特に明らかな病気が見つからない場合は経過観察を行います。その中で、そもそも食事がきちんと取れているのかどうか、取れている場合は食事の量や質に問題はないか、物をかむ力(咀嚼:そしゃく)や飲み込む力(嚥下:えんげ)に問題はないか、貧困や孤独などの社会的背景はないか、などを確認し、問題があればその部分を改善するような方策を立て、看護師やソーシャルワーカーなどの他職種チームが介入します。意欲の低下がみられる場合には、漢方薬や軽い抗うつ剤などを処方することもあります。

体重減少の予防・ケア

 病気が原因ではない体重減少は、特に処置を必要としないことがほとんどです。体重が減ってきた、何だか最近痩せてきた、という場合には、まず適切な食事をとれているかどうかを確認してみましょう。高齢者の場合、自分で作るのが大変などの理由で、栄養バランスが大きく崩れていることがあります。また独居の場合は、自分の好きなものしか食べない、ということもあるようです。過度な食事制限は慎み、昔ながらの「一汁三菜」の食生活を楽しみましょう。

 精神的ストレスや不安も体重減少の原因となります。また、運動が足りていないと食欲がわかず、結果的に食事量が足りなくなって体重が減ることがあります。ストレッチや散歩、ラジオ体操などの軽い運動を毎日少しずつ行うことで、ストレスと運動不足を同時に解消できると良いですね。

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