健康長寿ネット

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認知機能低下

公開日:2016年7月26日 06時00分
更新日:2019年6月19日 14時43分

認知機能低下の症状

 認知機能低下の主な症状として「記憶障害」「失語(しつご)」「失行(しっこう)」「失認(しつにん)」「遂行(すいこう)機能障害」の5つが挙げられます。

記憶障害

 いわゆる「物忘れ」です。普通の人でも物忘れは良くあることかもしれません。これを生理的健忘(けんぼう)といいます。例えば「昼食に何を食べたかを忘れる」「人や物の名前が出てこない」など、体験したことの一部を忘れたが体験したこと自体は覚えており、物忘れをしているという自覚があるのが生理的健忘です。

 対して病的な物忘れの場合、「昼食を食べたこと自体を忘れる」「数分前のことが思い出せない」など、体験そのものを忘れてしまいます。本人には物忘れをしているという自覚がないのも大きな特徴です。

失語

 聞いた言葉は理解できるが話せない「運動性失語」、話はできるが相手のいうことができない「感覚性失語」などがあります。認知機能の低下では、ものの名前が出にくくなる、などの症状が出ることがあります。

失行

 麻痺などの運動障害がないのに、日常生活で普通に行っている行動ができなくなることをいいます。服が着られなくなる「着衣失行」などがその例です。

失認

 目や耳などの感覚機能に異常がないのに、物体を認識できなくなることをいいます。例えば、視力の障害がないのに目の前に出された物が何かわからない「視覚性失認」、よく知っているはずの場所で道に迷う「地誌的失見当識(ちしてきしつけんとうしき)」などがあります。

遂行機能障害

 計画を立てて物事を行うことができなくなることです。遂行機能に障害があると、例えば料理をすることが困難になります。

認知機能低下の原因

 認知機能低下の一番の要因は、加齢です。個人差はありますが、人間は60歳を過ぎると少しずつ認知機能が衰えるといわれています。

 加齢以外には、認知症を引き起こす様々な病気、例えばアルツハイマー病やピック病・びまん性レビー小体病などをはじめとした神経変性疾患、脳梗塞や脳出血・慢性硬膜下血腫・脳腫瘍・脳炎・正常圧水頭症など脳の病気、クロイツフェルト・ヤコブ病などの感染症などが原因として挙げられます。また、甲状腺機能低下症やビタミンB12 欠乏症、脱水など内科系の病気が原因で起こることもあります。

 そのほか、統合失調症やうつ病といった精神疾患でも認知機能の低下がみられることがあります。

 忘れてはならないのが、薬剤による認知機能の低下です。抗不安薬・睡眠薬、統合失調症の治療などに使用される抗精神病薬、抗うつ薬、抗パーキンソン薬などのほか、頻尿や尿失禁の治療に用いられる抗コリン性過活動膀胱治療薬、アレルギー性疾患などの際に使用されるヒスタミンH1受容体拮抗薬、胃・十二指腸潰瘍治療薬であるヒスタミンH2受容体阻害薬、ある種の降圧薬・抗不整脈薬、副腎皮質ステロイドなど非常に多くの薬が原因となり得ます。

認知機能低下の診断

 認知機能低下があるかどうかを診断するには、HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)やMMSE(mini-mental state examination)などの神経心理検査を行います。

 よく用いられているのはMMSEで、見当識(けんとうしき:物を正しく認識すること)や記憶力、失認・失行・失語があるかどうかなどを簡単に評価できます。満点は30点で、23点以下の場合認知機能障害が疑われます。

認知機能低下の治療

 まず、原因となる疾患がある場合はその治療を行います。例えば慢性硬膜下血腫の場合には、頭の中に溜まってしまった血腫(けっしゅ:血のかたまり)を脳外科手術で取り除くことができます。ほかに原因のない認知機能低下の場合には、手術後に認知機能が回復することがあります。

 認知症と診断された場合は、原因となる病気によって対処が異なります。例えばアルツハイマー型認知症と診断された場合には、進行予防を目的とした飲み薬を内服します。アルツハイマー病および脳血管性認知症の場合には高血圧・脂質異常症・糖尿病がリスクを高める危険因子といわれており、これらに対する薬物治療も並行して行われます。

 また、薬剤による認知機能低下を疑う場合には、主治医とよく相談の上、中止可能な薬剤は中止、もしくは他の薬に変更してみるのも一案です。特に高齢者の場合、数か所の医療機関から薬を処方されており、同じような効き目の薬を複数飲んでいるといったこともあり得ます。

認知機能低下の予防・ケア

 現時点では、認知機能の低下を確実に抑えるという方法はありません。少しでも認知機能の低下を予防する方法としては、ウォーキングやエアロビクスなどの有酸素運動を続けること、抗酸化物質や抗炎症物質として知られるポリフェノールやEPA・DHAの摂取など、様々な方法が報告されています。また、社会参加、知的活動・生産活動への参加なども進行を遅らせることに役立っているとされています。      

 

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