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摂食・嚥下障害の診断

公開日:2016年7月25日 09時30分
更新日:2019年6月21日 09時40分

摂食嚥下障害の診断の基本

 摂食嚥下障害を診断するにあたって、まず第一に全身状態の評価が大切です。全身状態の評価により現在の栄養管理が適切であるかを検討します。また、摂食嚥下障害のある方は高齢者に多く、他の障害(片麻痺や高次脳機能障害など)を合併している場合があります。それらの障害は、摂食・嚥下機能に複雑にかかわっているため、それぞれについて十分な評価が必要です。そのため、これらの全身的な評価を行った後に、摂食・嚥下関連器官の評価・診断に進むのが基本です。

摂食嚥下障害の診断

 摂食嚥下障害の診断にはスクリーニング検査、ビデオ嚥下造影(嚥下造影)検査、嚥下内視鏡検査(Video Endoscopy: VE)があります。

摂食嚥下(えんげ)障害の診断その1 スクリーニング検査

 スクリーニング検査とは、より多くの人を対象に比較的簡易的な検査を行い、何らかの疑いがある人を絞り込む検査です。摂食嚥下障害のスクリーニング検査は、嚥下機能を「反復唾液嚥下テスト」「改訂水飲みテスト」「フードテスト」により評価します。これらの検査を行い、総合的に判断して、嚥下障害かどうかの診断を行います。また、スクリーニング検査の前には面接を行い、既往歴や現在の症状、食事時の様子や、食事時に困っていることなどをヒアリングし、診断に役立てていきます。

反復唾液嚥下テスト

 まず、嚥下障害が疑われたときに最初に行うのが、反復唾液嚥下テストです。反復唾液嚥下テストは30秒の間に、唾液を何回飲み込めるのかを計測していきます。飲み込めた回数が2回以下の場合、摂食嚥下障害の可能性が高くなります。この試験で特に問題が見られなければ、次の段階で行われるのが、改訂水飲みテストです。

改訂水飲みテスト

 改訂水のみテストは少量(3mlほど)の冷水を口腔内に入れ、嚥下動作を2回行います。"むせこみ"の有無や、嚥下動作に対する呼吸状態の変化、声の変化を確認します。この試験で特に問題が見られなければ、次の段階で行われるのが、フードテストです。

フードテスト

 フードテストは茶さじ1杯(約4g)のプリンやゼリーなどの半固形物、またはお粥や液状の食べ物を食べ、飲み込んだ後に、口の中に食物が残っていないか、"むせこみ"がみられないか、呼吸の変化はないかなどを観察します。

頸部聴診法

 フードテストと併行して、頸部の聴診も行います(頸部聴診法)。食べ物を飲み込む動作のとき、聴診器を使って、首の部分で嚥下音が聞こえるかどうかを聴診します。この検査では、飲み込む前後での呼吸の音の変化を確認しています。

その他にも、咬む力を調べるために行うガムテストや、症状や嚥下が障害されていると思われる時期に必要な検査を組み合わせて行います。

摂食嚥下障害の診断その2 ビデオ嚥下造影(嚥下造影)検査

 エックス線による透視下で、実際の嚥下動作を確認する検査です。造影剤を混ぜた飲み物、とろみを付けた飲み物やゼリー、または実際の食事の一部などを、実際に飲み込みます。口腔内から咽頭にかけての、実際の食物の飲み込みの様子を観察できるため、嚥下中に食塊が通過する様子や、喉頭、咽頭に残っていないか、誤嚥していないかなどを、目で見て確認することができます。

 この検査によって、摂食嚥下障害がどの部位の障害(どの時期)で起こっているのかがわかります。この結果により、安全に摂食できる食べ物の形状や、食べるときの姿勢について、評価することができます。

 この検査の結果により、今後の食事形態(形状や大きさ、やわらかさなど)や、食事時の姿勢の調節、嚥下訓練の必要性や方針などを決定します。検査は、医師だけでなく、レントゲン技師、リハビリスタッフ、看護師などが一緒に入り、誤嚥時の吸引などの準備をし、安全性を確保してから行います。

摂食嚥下障害の診断その3 嚥下内視鏡検査(Video Endoscopy: VE)

 まずは、鼻の穴から、直径およそ3mmの細い内視鏡を入れ、咽頭の様子を観察します。さらに、内視鏡で観察しながら、食紅などで着色した、とろみを付けていない水分、とろみをつけた水分、ゼリー、あるいは実際の食事の一部などを飲み込みます。実際の嚥下の様子を観察していることになります。

 嚥下造影検査とは異なり、造影剤を用いることはありません。検査に使用する内視鏡が移動できるものであれば、病室での検査も可能です。

実際に、水分や固形物を口に入れてから、咀嚼して、飲み込むまでの咽頭の様子を、直接観察することができるため、

  • しっかりと咀嚼(そしゃく)ができているか
  • 適切な大きさの食塊ができているか
  • 嚥下動作がスムーズに行えているか
  • 食物残渣(ざんさ)はないか

などを直接見ることができます。これが、この検査の大きなメリットです。この検査では、食べ物の形状や食べる時の姿勢を調整することで、嚥下障害が改善する可能性があるかどうか、直視下で観察するために行われます。

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