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摂食・嚥下障害の症状

公開日:2016年7月25日 09時50分
更新日:2019年8月 6日 13時03分

摂食嚥下障害の典型的な症状とは

 摂食嚥下障害の方が訴える典型的な症状は、飲み込みにくい、むせる、といったものです。しかし、明らかな訴えがない場合も、実は非常に多いのです。食事中に感じている症状ではなく、夜間に咳こむようになった、発熱を繰り返す、体重が1か月で5%以上、半年で10%以上も減少している、脱水症状の出現などを主訴として受診し、これらの症状は、嚥下障害によるものであったという場合も多いのです。

また、口腔内に舌苔(ぜったい:唾液量の低下などによって口腔内に苔が付着する)が付着していることを主訴として歯科を受診し、摂食嚥下障害と分かるケースもあります。

摂食嚥下障害で特に重要な"むせこみ"という症状

 特に"むせこみ"は、摂食嚥下障害を判断する貴重なポイントになります。気道に食物や水分が入りそうになると、健康な人は防御反応として"むせこみ"が起こり、水分や食物を気道の外へ追い出そうとします。したがって、日常的に食事で"むせこみ"が起こる場合、あるいは自身の唾液での"むせこみ"が多いということは、飲み込む過程での問題が生じているということになり、嚥下障害を見極める重要なポイントともなってくるのです。

その他の気を付けたい摂食嚥下障害の症状

 摂食嚥下障害が起きているとき、症状が顕著に出現するのが食事中です。そのため、食事場面での観察は、非常に重要です。食事中によくみられる摂食嚥下障害の症状は、食事のむせこみ、湿性嗄声(痰が絡んだようなごろごろとした声)などがありますので、この点を注意して観察しましょう。

 この他、食後に痰が絡むような感じがある場合も、摂食嚥下障害の症状に該当します。また、食事中に口から食物がこぼれる、喉や口の中に食べ物が残っている感じがする、食べると疲れてしまって苦しくなる、食べ物がのどに詰まって逆流してくるというのも、摂食嚥下障害の症状です。これらの症状があると、食事を食べたがらなくなることもあります。以上の症状の中で、1つでも当てはまる症状があれば、誤嚥を疑い、医療機関で検査をすることが勧められます。

口腔機能をセルフチェックする

 摂食嚥下障害のセルフチェックとして、表1のような質問シートを用いることがあります。これは、厚生労働省が公表している「口腔機能自己チェックシート」ですが、10項目のうち1つでも当てはまる、あるいは11番目の項目で、1aまたは1bに該当する場合は、摂食嚥下障害を起こしている可能性がありますので、医療機関で相談してみましょう。

表1:摂食・嚥下障害の質問用紙1)
1から11まで、あてはまるほうに○をつけてください。
1.固いものが食べにくいですかはいいいえ
2.お茶や汁物等でむせることがありますかはいいいえ
3.口がかわきやすいですかはいいいえ
4.薬が飲み込みにくくなりましたかはいいいえ
5.話すときに舌がひっかかりますかはいいいえ
6.口臭が気になりますかはいいいえ
7.食事にかかる時間は長くなりましたかはいいいえ
8.薄味がわかりにくくなりましたかはいいいえ
9.食べこぼしがありますかはいいいえ
10.食後に口の中に食べ物が残りやすいですかはいいいえ
11.自分の歯または入れ歯で左右の奥歯をしっかりとかみしめられますか
  • 1a. どちらでもない
  • 1b. 片方だけできる
2.両方できる

11の回答が1a、1bのいずれかである場合は口腔機能低下の可能性が高く、注意が必要です

もっとも怖い"誤嚥"

 さらに、摂食嚥下障害の症状として見られる"誤嚥"は、嚥下前、嚥下中、嚥下後の3つのパターンに分類されます。誤嚥は、食後に口腔内に溜まっていた食物が、臥床(がしょう)中などに気道に流れこむことで起きるケースが多いようです。誤嚥は、むせない場合も多いため、発熱などの症状によって、初めて誤嚥をしていたと気づく場合があります。

 誤嚥により発熱するのは、水や食物が起動から肺に入り込み、肺炎を起こすためです。高齢になると、"むせこむ"という反射が弱くなり、気づかないうちに誤嚥していることがあります。特に、臥床している時間が長い、脳梗塞などの既往により麻痺があるような場合は、注意が必要です。経口での飲食が出来ない状態でも、細菌などを含んだ自分の唾液が気道を通じて肺に流れ込み、誤嚥性肺炎を起こすこともあります。

参考文献

  1. 厚生労働省 介護予防マニュアル(改訂版:平成24年3月) 第5章.口腔機能向上マニュアル 口腔機能自己チェックシートより一部改訂

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