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狭心症

公開日:2016年7月24日 10時00分
更新日:2019年8月14日 12時56分

狭心症とは

 狭心症とは、主に動脈硬化のために冠状動脈の血管が狭くなり、心筋への血液の流れが低下し、栄養や酸素の供給が不足することです。

 狭心症の多くは運動や入浴、ストレスなどで心臓に急激な負担がかかったときに起こり、短時間に消失することがほとんどです。狭心症の症状の強さや、回数、持続時間が延長してきた場合には心筋梗塞直前段階と考えなければなりません。

狭心症の症状

 狭心症の症状の特徴として、突然、心臓のあたりが締め付けられる、圧迫されるような、痛みが起こり、左肩、左腕内側に放散します。

  • 痛みの性質:扼感・圧迫感・灼熱感・重圧感・息苦しさなど
  • 随伴症状:頸部や背部の痛み、顔面蒼白、冷汗、吐き気など
  • 誘因:食事・興奮・寒冷暴露・洗面・入浴・排便など
  • 痛みの持続:30秒~30分以内で、通常15分以内が多い。ニトログリセリン舌下にて5分以内に症状が消失する。

狭心症の分類

 狭心症は、階段を上ったり、急いで歩いたり、重い荷物を持ったときなどに起こる労作性狭心症と、夜間、特に早朝、就寝中に発作の起こる安静時狭心症(異型狭心症)とに分類されます。

狭心症の原因

 労作性狭心症は冠動脈の動脈硬化が進行し、肉体的・精神的負荷が加わり心臓の仕事量が急に増えた時に、冠動脈が必要とする血液を供給できない時に症状が出現します(図1)。

 安静時狭心症(異型狭心症)では、冠動脈硬化が軽微にもかかわらず、何らかの原因で突然血管が収縮する(れん縮)現象によって生じます。異型狭心症は、わが国では欧米諸国に比べて頻度は多く、夜間や早朝または寒冷暴露(寒いところへ急に出る)に生じやすいといわれています(図2、3、4)。

図1: 右冠動脈中節部に90%高度狭窄を示す脳画像
図1:右冠動脈中節部に90%高度狭窄を示す例。

図2:右冠動脈中節部に軽度冠動脈病変を示す脳画像
図2:右冠動脈中節部に軽度冠動脈病変を示す例。安静時狭窄症の症例です。冠動脈硬化が軽微で、同若の狭窄があまりみられません。

図3: エルゴノビンを冠動脈注入後、99%スパスムを生じた例の脳画像
図3:エルゴノビンを冠動脈注入後、99%スパスムを生じた例。冠動脈のれん縮を誘発するエルゴピンを冠動脈に注入すると、れん縮がみられ、異形狭窄症と診断された例です。

図4:ニトロール2.5mg冠動脈注入後、スパスムは消失を示す例の脳画像
図4:ニトロール2.5mg冠動脈注入後、スパスムは消失を示す例。冠動脈のれん縮を止めるニトロールを冠動脈に注入すると、れん縮が止まり、薬物が有効であることを示している例です。

狭心症の診断

 狭心症の診断は、問診がとても重要です。なぜならば非発作時の安静時心電図やその他の検査では異常がない場合が多いからです。「いつ、どこで、どのような状態で、どのくらいの時間続いたか」を聴取することにより、狭心症を疑うことができます。また、狭心症の特効薬であるニトログリセリン(亜硝酸剤)舌下錠を処方し、その効果を判断します。

 しかし、高齢者の場合は、症状が乏しく、また症状を医師に的確に伝えられない場合が多く、診断に苦慮することがあります。このときには家族、または介護者の方々が日頃の状態を判断し、「いつもより元気がなくおかしい」場合には狭心症や心筋梗塞を考慮する必要があります。

 診断を確定するため、また治療方法を決定するためには、可能な限り冠動脈造影検査を受けていただきます。

 その他、診断に必要な検査方法は次のとおりです。

狭心症の診断方法

問診

 症状の出現を正確に把握する。

負荷心電図

 階段を昇降したり、ベルトの上を早足で歩いたり、自転車をこいで心臓に負荷をかけて狭心症発作の心電図を捉まえる。

補助診断

 負荷心臓超音波検査法、負荷アイソトープ検査法があります。

冠動脈造影検査

 冠動脈硬化症や冠動脈れん縮の有無を観察するために必須の検査で、バルーンやステントで狭窄部を拡張する治療や冠動脈バイパス術を行うためにも必須の検査。異型狭心症の診断には、冠動脈れん縮を誘発する薬剤を使用して発作の出現を確認します。

狭心症の予防

 高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)になると、動脈硬化を引き起こしやすくなります。狭心症の予防には、生活習慣や食習慣を見直し、肥満を防ぎ、禁煙、ストレスを避け、規則正しい生活を送ることが大切になります。以下に狭心症の予防についてまとめました。

高脂血症予防と治療

  • 動物性脂肪を減らし、生野菜を多く、魚や大豆、豆腐などを食べる。
  • 脂質低下剤の内服。

糖尿病の予防と治療

  • 総カロリーをおさえ暴飲・暴食を避ける。
  • 経口糖尿病薬剤、インシュリン注射で血糖値をコントロールする。

高血圧症の予防と治療

  • 減塩食(10g/日以下)、降圧剤の内服。
  • 禁煙

規則正しい生活

睡眠不足や過労による身体的なストレス、ゆとりのない精神的なストレスなどを溜めない。

適度な運動

有酸素運動を積極的に取り入れる。

狭心症の治療

 狭心症の治療は薬物療法、冠動脈インターベンション、冠動脈バイパス術があります。特に薬物療法の中で、可能な限り抗血小板剤(血栓を出来難くする薬剤)を使用することで、心筋梗塞死亡率の減少やステント治療後の血栓による閉塞の予防に期待できると考えられています。狭心症の治療法を以下にまとめました。

薬物療法

  • 狭心症発作時:ニトログリセリンまたはニトロールの舌下錠やスプレイを使用
  • 狭心症の予防:血管拡張薬やβ遮断薬の内服
  • 血栓の予防:可能な限り抗血小板剤を内服する

冠動脈インターベンション

  • バルーン冠動脈拡張術
  • 冠動脈内ステント留置術
  • 冠動脈内薬剤溶出性ステント留置術
  • 冠動脈粥腫切除術
  • ロータブレーター

冠動脈バイパス術

体の他の部位の静脈や動脈を使って、冠動脈の閉塞部分の先に接続します


 最近は、高齢者に対しても比較的安全に冠動脈インターベンションや冠動脈バイパス術が行われることができるようになり、よい成績が期待されるようになっています。前述しました狭心症例に対し(図1)、バルーン拡張とステント留置(図5、6)を行った写真を供覧します。

図5:バルーン拡張とステント留置 した脳画像
図5:バルーン拡張とステント留置
図6:ステント留置術後の脳画像
図6:ステント留置術後

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