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多系統萎縮症の症状

公開日:2016年7月25日 14時00分
更新日:2019年8月15日 10時49分

多系統萎縮症の症状および臨床所見

 多系統萎縮症の症状・症候の中核は、大きく3つに分類されます。小脳症状、パーキソニズム、自律神経障害です。

 代表的な小脳症状は、体幹失調(まっすぐ立っていられない)、四肢協調運動障害(手足が勝手に動いてしまう)、小脳性言語(ろれつが回らない、上手く話せない)、筋トーヌス低下(身体に力が入らない)、注視方向性眼振(一定の方向を向くと、目が規則的に振戦あるいは回転する状態)などがあります。

 この他には、腱反射の亢進や病的反射などの錐体路(すいたいろ)徴候、パーキソニズム(パーキンソン病にみられる、手足のふるえ、筋肉のこわばり、歩行障害など)、不随意運動などの錐体外路徴候、起立性低血圧、排尿排便障害、呼吸障害など、様々な自律神経障害がみられるようになります。

 多系統萎縮症の症状のうち、パーキンソンニズムが強い病型をMSA-P、小脳症状が強いものをMSA-Cと呼ぶこともあります。

多系統萎縮症にみられる主な症状の分類

小脳症状

  • 小脳性体幹失調(歩行時のふらつきなど、身体のバランスが保てない)
  • 小脳性言語(ろれつが回らない)
  • 四肢協調性運動障害(手足の運動障害、手が震えて字が書けなくなるなど)
  • 眼振(眼球が細かくゆれる)、眼球運動障害
  • 足の運動障害

パーキソニズム

  • 寡動(かどう:運動が遅く、少ない)
  • 筋固縮(きんこしゅく:筋肉が固くこわばる)
  • 振戦(しんせん:手足などが細かくふるえる)
  • 姿勢調節障害(まっすぐ立っていられない)

自立神経障害

  • 排尿障害(頻尿、尿失禁、残尿、排尿困難)
  • 男性での陰萎(いんい:勃起障害)
  • 起立性低血圧
  • 排便障害
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 声帯外転麻痺(いびき、気道が狭くなる)
  • レム睡眠関連の異常行動

多系統萎縮症 線条体黒質変性症の症状

 線条体黒質変性症の症状は、パーキソニズムの症状を中心に出現することが多く、線条体黒質変性による筋の固縮、無動(動作緩慢、動作の減少)、姿勢反射障害などが、高頻度であらわれます。逆に、安静時の振戦が症状としてあらわれることは、少ないとされています。病状が進むと、小脳失調症状である歩行時のふらつき、小脳失調症状である構音障害や排尿障害、起立性低血圧症などの自律神経症状などが出現してきます。

 パーキンソニズムが主症状である場合、パーキンソン病と区別することが難しく、小脳性運動失調の程度を評価することは、かなり難しいとされますが、パーキンソン病の薬が効かなくなることから、線条体黒質変性症と診断されることもあります。症状の中で特に注意すべきなのは、夜間の喘鳴(ぜいめい)や睡眠時無呼吸などであり、これらは比較的早期から認められることがあり、突然死の原因になります。診察では、他の症状も併せて確認していきます。

多系統萎縮症 オリーブ橋小脳変性症(OPCA)の症状

 オリーブ橋小脳変性症(OPCA)は、中年以降にみられる、起立や歩行時のふらつきなどで発見されることが多いようです。その後、小脳症候である呂律不良(ろれつが回らない)や、四肢の運動障害などが出現し、徐々に進行していきます。

 病状が進むと、自律神経障害の症状である錐体路障害、排尿障害、起立性低血圧、あるいは、パーキンソニズム(パーキンソン病に似た症状)などが加わってくるケースもあります。オリーブ橋小脳萎縮症の主症状は、小脳性運動失調ですので、MSA-Cへ分類されます。

多系統萎縮症 シャイ・ドレーガー症候群の症状 

 シャイ・ドレーガー症候群の初期では、自律神経障害が顕著な症状としてあらわれます。特に、起立性低血圧と排尿障害が多いとされています。排尿障害としては、頻尿、夜間尿、残尿感、排尿困難、尿失禁、尿閉などがあります。起立性低血圧の症状が強い場合、立った時に失神することもあります。血圧が低下している時には、食事、排尿、入浴時などに、強い倦怠感があらわれることがあります。

 病状が進行すると、便秘や便失禁などの排便障害、発汗障害、大きないびき、睡眠時無呼吸などもみられるようになり、男性では陰萎(勃起障害)をきたします。

 発汗低下(汗をかかなくなる)をきたすため、体温調整が上手くできず、気を付けていないと、夏には体温が上昇してしまいます。通常は、経過が進むにつれて小脳症状やパーキンソニズムなどの症状も見られるようになります。

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