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喘息のケア

公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2019年2月 1日 20時12分

喘息予防のケアは治療薬の継続と記録が大切

 「喘息予防・管理ガイドライン」では、最も大切な喘息予防のケアは、治療薬の継続と、喘息に関わる自己の記録であると明示されています。喘息は、発作が消失して日数が経つと、完治したと勘違いし、治療を自己中断する人が多い疾患です。しかし、あくまで薬によってコントロールされているものであるということを念頭に置き、治療薬の確実な継続が必要です。

 また、薬物療法と併用して喘息にかかる記録をつけることや、ピークフロー(力いっぱい息をはき出したときの息の速さ=速度の最大値)を測定し、自分の現在の呼吸状態を知ることも、ケアの上で大切なポイントです。

 喘息の治療や呼吸状態の記録をつけることで、自分の喘息の状態を、季節、時間、随伴症状(発作時にみられる症状)、天候、治療内容、日常生活内容等との関わりの中で、客観的に評価することができます。さらに、診察時に主治医が喘息の記録を見ることで、患者が日常生活の中で、喘息をどのようにコントロールしているのか、今後はどのように指導すべきが分かるとともに、薬の服用時間、量を決める場合の参考となります。

 ピークフローの測定は、比較的簡単に行うことができます。市販されている、簡易式の呼吸機能測定器を使用し、息を吹き込むだけで、現在の気管(気道)の状態を、ある程度知ることができます。

 自覚症状を記録するだけでなく、ピークフロー値という客観的な情報を記入しておくことで、自分の症状や悪化時の状態を把握することができ、発作予防に役立てることができます。

 喘息は、日々の長期管理が、喘息発作を起こさないための重要なケアとなります。高齢者の場合は、介助者が聞き取りを行い、記録をつけるなどの介助も必要となるでしょう。

喘息発作が起こった時のケアとは?

 喘息発作が起こってしまった際にも、対処法を理解しておくことで、落ち着いて行動することができます。まず、喘息発作が起こってしまった際には椅子に座る、ベッドから起き上がるなど座った姿勢を取り(起坐位)、ゆっくりと腹式呼吸を行うようにします。その後、医師から処方されている発作時の治療薬を内服します。

 治療薬は、短時間作用性β2遮断薬という薬が処方されているケースが多いです。その後、暖かい湯やお茶を飲みながら、様子を見ていきます。

 高齢者の場合は、これらを全て自己で行うことは難しいケースが多いため、介助者による介助が必要となります。

医療機関受診の目安とは?  

 小児、成人に関わらず、喘息患者さんがきちんと通院、治療を行っていれば、発作を起こしたときの治療薬を処方されていることが多いです。通常の状態よりも、やや息苦しい、動くと苦しいなどの状態であれば、お薬によるセルフケアでも落ち着くことがあります(表)。

表:喘息発作が起きた時の症状と対処法 1)より作成
発作の頻度呼吸困難動作対処法
喘鳴がある
胸が苦しい
急ぐと苦しい
動くと苦しい
ほぼ普通 薬物による、セルフケアでの対処可能
軽症
(小発作)
苦しくて横になれない かなり困難
かろうじて歩ける
救急外来を受診
中等症
(中発作)
苦しくて動けない 歩行や会話ができない 救急外来を受診
重症
(大発作)
呼吸が弱くなる
チアノーゼ
呼吸が停止する
会話できない
動けない
錯乱、失禁する
意識障害が起こる
救急搬送
直ちに入院し、ICUなどでの管理が必要

 しかし、喘息発作が起こった時のケアをしても、状態の改善が見られない場合は、重篤な事態となる前に、速やかに医療機関を受診します。特に、「苦しくて横になれない、動けない」あるいは「かろうじて歩ける」という中等度の発作以上のレベルであれば、救急外来を受診する必要があります。

 ただし、高齢者の場合は、喘息とCOPDの併発(オーバーラップ症候群)を起こしてしていることもあり、予後不良となる場合が多いです。

 実際に、高齢者が喘息とCOPDを併発(オーバーラップ症候群)している割合は高くなり、70歳以上になると、男女ともに50%を超えるという報告もあります2)。そのため、発作時の治療をしても十分な効果が得られない、長期での治療をしていても効果が不十分だと考えられる場合は、速やかに医療機関を受診し、主治医へ相談することが推奨されます。軽度の発作でも、セルフケアを行っても症状が治まらない場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

参考文献

  1. 成人気管支喘息診療のミニマムエッセンス 日本医師会
  2. 浅井一久ら:気管支喘息-COPDオーバーラップ症候群(ACOS). 日内会誌104 2015年;1082-1088

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