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脳卒中の運動療法とは

公開日:2016年7月25日 19時00分
更新日:2019年2月 1日 17時49分

脳卒中とは

 脳卒中には脳梗塞と脳出血とがあります。脳梗塞は高血圧が長く続くことによって動脈硬化が進行し、脳の血管が詰まることや心臓でできた血栓が脳に詰まることで起こります。程度の強い高血圧によって脳の血管が破れると脳出血が起こります。脳の血管に動脈瘤(血管のコブ)ができ、破裂するとくも膜下出血となります1)

 脳梗塞では詰まった血管の先の脳の細胞が壊死し、脳出血では出血が広がった部分の脳細胞が壊れます。半身麻痺や言語障害、しびれ、感覚異常、認知障害、意識障害などの症状がみられます。初期の小さな梗塞や出血の場合は治療により後遺症なく改善することもありますが、多くの場合は身体の麻痺、言語障害、認知障害などの後遺症が残ります1)

脳卒中の運動療法

リハビリで関節可動域訓練を行う男性のイラスト。脳卒中には脳梗塞と脳出血があります。脳卒中発症後の身体の麻痺による歩行機能や四肢・体幹の運動機能、日常生活動作(ADL)の改善・維持、合併症の予防のために運動療法が行われます。運動療法には、身体の麻痺による筋力低下に対し、筋力トレーニングを行う筋力増強訓練や筋肉の柔軟性を促すストレッチなど様々な種類があります。

 脳卒中発症後の身体の麻痺による歩行機能や四肢・体幹の運動機能、日常生活動作(ADL)の改善・維持、合併症の予防のために運動療法が行われます。

 運動療法は脳卒中発症後の早期から導入され、患者の状態に応じて段階的に進められます。急性期ではベッドサイドでリハビリを開始し、ポジショニングや体位変換、関節可動域訓練などを中心に行います。全身状態が安定すれば、座位訓練やベッド・車椅子間の移乗訓練、起居動作訓練、立位訓練、歩行訓練などを行います。関節可動域訓練、筋力増強訓練、持久力増強訓練、協調性訓練なども行います2)

脳卒中における運動療法の効果

 脳卒中発症後、安静にしている時間が長くなると廃用症候群のリスクが高くなります。廃用性の筋萎縮による関節拘縮や、深部静脈血栓症、褥瘡、沈下性肺炎など、長期の安静臥床による合併症を運動療法により予防します3)

 早期から運動療法などのリハビリテーションを開始することで運動機能やADLの改善につながり、入院期間の短縮、社会復帰率の向上、施設入所率や死亡率の低下が期待できます3)

 「筋力増強訓練により、骨強化、筋萎縮・関節拘縮・歩行・平衡感覚の改善、転倒防止、日常生活活動自立に効果があるとされています3)。」また、運動療法によって「日常生活動作改善とともに空腹時血糖やHDLコレステロールの改善傾向、高インスリン血症の割合も減少3)」することがいわれています。

脳卒中の運動療法の種類

 脳卒中で実施される運動療法には以下のものがあります。

関節可動域訓練

 筋肉や関節周囲軟部組織の拘縮の改善・予防のために行います。身体の麻痺や過剰な緊張によって運動性の低下や痛みがみられることに対して、関節の運動を促し、痛みの軽減や関節可動域の拡大を図って動作を行いやすくします。

ストレッチ

 筋肉の萎縮や短縮がみられる場合、筋肉を伸張して筋肉の柔軟性を促します。

筋力増強訓練

 身体の麻痺や安静期間後の筋力低下に対し、筋力の向上を目指して自重(自分の手足の重さや体重)や負荷をかけて筋力トレーニングを行います。

持久力増強訓練

 持久性の低下に対して歩行や自転車エルゴメーターなどを行い、持久力の増強を促して歩行や動作の持久性向上を図ります。

協調性訓練

 個々の運動に対して力や方向、スピードなどをコントロールできること、四肢・体幹を協調させた運動を行うことを促し、目的に応じてコントロールされた運動やバランスをとって動作が行えるようにします。

基本動作訓練

 起居動作(寝返り、起き上がり)、立ち上がり、座位、立位、移乗動作など基本的な動作の獲得、安定性・実用性の向上を目指して行います。

歩行訓練

 歩行の獲得、歩行の安定性向上、歩容の向上を図ります。

巧緻動作訓練(こうちどうさくんれん)

 手指の細かい動作の獲得・実用性の向上のための練習を行います。

脳卒中の運動療法の注意点

 脳卒中患者では、合併症として高血圧、糖尿病、心疾患などがみられやすく、低血糖発作による意識障害、血圧の上昇、胸痛、呼吸困難、不整脈などに注意が必要です。身体の麻痺による座位・立位・歩行の不安定性がみられるため、転倒・骨折にも注意が必要です3)

 運動前に血圧、脈拍、酸素飽和度(心疾患や呼吸器疾患をともなう場合)、その日の体調などを確認し、患者の状態によって運動負荷、運動量、運動時間の調節をします。患者への負担が大きくなりすぎないようにその日の運動療法メニューの調整を行います。循環器系のリスクが高い場合は心電図モニターを確認しながら運動療法を行います3)

 転倒予防のためには段階に応じた患者のレベルに合った訓練内容を設定し、安全に行えるように十分に環境を整え、もしもの転倒の場合に備えてマットやクッション、ヒッププロテクターなどを用いて骨折の予防を図ります。

参考文献

  1. 脳血管障害・脳卒中 厚生労働省 e-ヘルスネット(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 脳卒中治療ガイドライン 1-4.急性期リハビリテーション 日本脳卒中学会(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 生活習慣病対策及び健康維持・増進のための運動療法と運動処方 佐藤祐造 2005 東京文光堂本郷 184,186-187

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