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高知県「あったかふれあいセンター事業」にみる地域共生社会づくりへの展望

公開日:2019年1月25日 10時00分
更新日:2019年8月 7日 10時29分

吉本 知子(よしもと ともこ)

高知県地域福祉部地域福祉政策課
地域福祉推進チーム主査


「あったかふれあいセンター事業」の創設

 高知県は、人口減少や高齢化が全国に先行して進行するとともに、地域の支え合いの力も弱まっている。また、県土の多くを占める中山間地域では、多様なニーズがありながらも不採算などの理由で全国一律の基準による福祉制度サービスが参入しにくい状況にある。

 そこで、平成21年度から国の「ふるさと雇用再生特別交付金」を活用し、既存の福祉制度の枠組みを超えて、子どもから高齢者まで、年齢や障害の有無にかかわらず、誰もが1か所で必要なサービスを受けられる小規模多機能支援拠点を整備する「あったかふれあいセンター事業」(実施主体:市町村)を創設した。いわゆる共生型の支援をめざす拠点といえる。

 なお、国の交付金事業が終了した後の平成24年度以降については、県独自の補助事業として継続している。

「あったかふれあいセンター」の運営体制

 市町村は、社会福祉法人、民間企業、特定非営利法人、その他の法人などに委託して、「あったかふれあいセンター事業」を実施している。

 人員体制については、関係機関のネットワークの構築、地域での支え合いの仕組みづくりを推進するコーディネーター1名と、基本機能を実施するために必要なスタッフ2名の3名体制を基本とすること、事業運営にかかるスタッフの人件費やその他事業にかかる運営経費については、県が事業費の2分の1を負担することで事業の継続を図ってきた(表)。

表:あったかふれあいセンターの事業スキーム

補助事業スキーム
  • 補助先:市町村
  • 実施方法:市町村が設置し、社会福祉法人、NPO法人、民間企業などに委託
  • 補助率:1/2
活動内容
 地域福祉の拠点として、自ら地域ニーズの把握や課題に対応した支援を行うほか、住民主体での要配慮者の見守りや生活課題に対応した支え合いなどの地域福祉活動のバックアップや充実に向けた取り組みを行う。
実施体制
  1. 人員配置《基本形》3名
    • コーディネーター 1名
    • スタッフ 2名
  2. 拠点での活動のほか、地域の状況に応じ、サテライトを設置して取り組みを実施
  3. 地域住民を交え、あったかふれあいセンターの運営について協議する会(運営協議会)の開催(年1回以上)

 なお、地理的な理由などによりセンターに集うことのできない住民のために、概ね週5日開所している「拠点」とは別に、より身近な場所で住民が集える場所を確保するための「出張型集い」として「サテライトを設置し、サービスのエリアをカバーしている。

 また、住民の声がセンターの運営に反映できるように住民の参画を得て協議する「運営協議会」を設置している。

 「あったかふれあいセンター」は、平成30年4月1日現在、県内34市町村のうち、31市町村、48拠点、231サテライトが整備されており、県内全域に広がっている。

「あったかふれあいセンター」の機能

 「あったかふれあいセンター事業」の実施にあたっては、基本として「集いを軸とした多様なサービスの提供」、「地域の見守りネットワークの構築」、「生活支援」の3つの機能を必須機能としている(図1)。

図1:あったかふれあいセンターの概要を表す図。事業の実施にあたっては、基本として「集いを軸とした多様なサービスの提供」、「地域の見守りネットワークの構築」、「生活支援」の3つの機能から成り立つ。
図1:あったかふれあいセンターの概要

 1つ目の「集いを軸とした多様なサービスの提供」とは、必須機能の「集い」に加え、「預かる・働く・送る・交わる・学ぶ」の機能の中から地域の実情に応じて少なくとも1機能を実施することとしている。

 2つ目の「地域の見守りネットワーク」の構築については、地域の要配慮者を早期に発見して見守り支援するため、「訪問・相談・つなぎ」機能を発揮できるものとし、独居高齢者や障害者の見守りや相談活動などのための訪問を週2日程度実施することとしている。

 3つ目の「生活支援」は、支援が必要な人に対して直接サービスを提供するほか、地域の生活課題やニーズに応じた生活支援サービスの仕組みづくりやコーディネート、地域での支え合いの仕組みづくりなどを行うこととしている。

 図2、3には、「あったかふれあいセンター」の基本機能別利用人数と年齢層別利用人数(集い)の年次推移を示す。

図2:平成25年度から平成29年度までのあったかふれあいセンターにおける基本機能としての集い・訪問・生活支援別利用人数の年次推移を示す図。
図2:あったかふれあいセンター基本機能別利用人数の年次推移
図3:あったかふれあいセンターを集いとして利用する人数を高齢者・障害者・子ども・その他に分類し、平成25年から平成29年までの年度別推移を示す図。
図3:あったかふれあいセンター(集い)年齢層別利用人数の年次推移

「あったかふれあいセンター」の機能強化

 高知県では、保健・医療・福祉の各分野の課題の解決に真正面から取り組むため、平成22年2月に「日本一の健康長寿県構想」を策定した。また、平成28年2月には県の抱える根本的な課題を解決するために、新たに5つの柱(目標)を設定した第3期構想にバージョンアップしている。この5つの柱の1つ「地域地域で安心して住み続けられる県づくり」の重点施策である「日々の暮らしを支える高知型福祉の仕組みづくり」の中に、「あったかふれあいセンターのサービス提供が充実・強化され、高知型福祉の拠点として整備されている」ことを位置付け、地域で支援を必要とする住民への支援体制づくり、福祉を支える担い手の育成などに取り組んでいる(図4)。

図4-1:高知県が目指す「日本一の健康長寿県構想」の5つの柱のうち、1.壮年期の死亡率の改善、2.地域で安心して住み続けられる県づくりの項目を示す図
図4-2:高知県が目指す「日本一の健康長寿県構想」の5つのうち、3.厳しい環境にある子供たちへの支援、4.少子化対策の抜本強化、5.医療や介護などのサービス提供を担う人材の安定確保と産業化を示す図
図4:日本一の健康長寿県構想の5つの柱(高知県、日本一の健康長寿県構想第3期Ver.31)より引用

 また、県では構想に基づく取り組みのPDCAサイクルによる検証を通して毎年度バージョンアップさせ、医療・介護との連携のさらなる拡大や福祉サービスの提供機能の充実を図るため、市町村およびセンターのフォローアップを図ってきた。

 併せて、こうした地域福祉の取り組みを推進するため、県は、社会福祉法第108条に基づき、平成23年3月に「高知県地域福祉支援計画」を策定した。同じく社会福祉法第107条に基づく市町村の地域福祉の推進に関する事項を定めた「市町村地域福祉計画」と、社会福祉協議会が策定する「市町村地域福祉活動計画」の一体的な策定を支援し、平成25年度末には、すべての市町村において地域福祉計画が策定されている。

 さらに、高知県地域福祉支援計画には、高知型福祉を進めていくために市町村の地域福祉計画に盛り込んでいただきたい事項の1つとして、「あったかふれあいセンターの機能強化」を位置付け、「あったかふれあいセンター」を中心とした地域福祉推進を図っている。

 また、人材育成の取り組みとして、職員を対象としたスキルアップ研修に加え、中山間地域における地域福祉のあり方に関する研究協定を結んでいる日本福祉大学の協力のもと、年2回の「あったかふれあいセンター推進連絡会」を開催し、地域地域のセンターの活動報告や演習などを通じて、センター全体の機能強化を図っている。

「あったかふれあいセンター」への支援

 「あったかふれあいセンター」は、地域ニーズの把握や課題に対応可能な小規模多機能支援拠点であるとともに、住民による地域福祉活動を推進することで地域共生社会づくりに貢献する役割を担っている。

 一方、介護保険制度の改正や生活困窮者自立支援制度の創設など地域福祉を取り巻く環境が変化する中、高齢者単独世帯や認知症高齢者の増加など、ますます多様化する地域の課題に柔軟に対応していかなくてはならない。そのためには、事業実施主体の市町村と委託先の事業所がともに地域課題を分析し、センターの地域での役割やめざす姿を明らかにし、さらなる進化・発展させていくことが必要である。

 このため、地域ニーズ・課題の分析をはじめとして、事業目的・中長期のめざす姿などの明確化、実践、評価などのPDCAサイクルを回すことができるよう、市町村において、「事業計画書」を作成することとしている。

 事業計画書の作成により期待される効果としては、

  1. 事業の課題、取り組みの優先順位立て、成果などの整理・明確化
  2. 事業の目的、取り組み状況、成果などの可視化
  3. 地域のニーズに基づいた取り組みになっていることの確認
  4. 適した予算措置であることの確認

──が挙げられる。

 また、本県には県の出先機関として5か所の福祉保健所がある。その中には「地域支援室」という部署が設置されており、保健、医療および福祉の広域的な企画および調整、地域包括ケア体制の整備などの役割を担っており、県の身近な支援機関として、管内の市町村やセンターへの支援を行っている。

「高知版地域包括ケアシステム」の構築

 高知県では、「日本一の健康長寿県構想」の中で、平成30年度から本人の意向に沿ってQOLを向上させることをめざして、各地域の医療・介護・福祉などの資源を、切れ目ないネットワークでつなぐ「高知版地域包括ケアシステムの構築」に向けた取り組みを進めている(図4)。

 このシステム構築において、センターに求められているのは、センターの集いやアウトリーチなどから支援が必要な高齢者などのニーズを把握し、必要なサービスをつなぐ、ゲートキーパーの役割である。今後は日頃から保健・医療・介護・福祉などの関係者との連携を図り、ゲートキーパー機能の充実・強化を進める必要がある。

おわりに

 高知県が「あったかふれあいセンター事業」を創設してから10年目となった。「あったかふれあいセンター」は、設置数がサテライトを含めて270か所を超え、県内全域に広がっており、地域福祉の拠点として、なくてはならない存在である。

 今後センターが、高知型地域福祉、地域共生社会を推進できるような仕組みづくりを進めるために、地域の実情に合ったセンターの役割を整理したうえで整備を進めていかなくてはならない。その中で、複数の市町村で国のモデル事業である地域力強化推進事業を「あったかふれあいセンター」をベースに取り組んでいることに注目しておきたい。

 また、事業実施主体の市町村と委託先の事業所がともに地域課題を分析し、事業目的を明確に事業展開できるよう、事業計画書などを通じて、各センターの業務や評価指標に対する成果の「見える化」をしていく中で、国が進める包括的支援体制の構築事業の中での「あったかふれあいセンター」の役割を明確にしていきたい。

参考文献

  1. 高知県,日本一の健康長寿県構想第3期Ver.3,p1

筆者

吉本知子先生
吉本 知子(よしもと ともこ)
高知県地域福祉部地域福祉政策課
地域福祉推進チーム主査
略歴:
2014年:高知県庁入職・高知県健康政策部中央西福祉保健所、2017年より現職

転載元

公益財団法人長寿科学振興財団 機関誌 Aging&Health No.88 2019年1月発行

Aging&Health(エイジングアンドヘルス)No.88(新しいウィンドウが開きます)

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