健康長寿ネット

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地域共生社会を見据えた共生型サービスのための人材育成と支援

高橋 誠一(たかはし せいいち)

東北福祉大学総合マネジメント学部教授

池田 昌弘(いけだ まさひろ)

特定非営利活動法人全国コミュニティライフサポートセンター理事長


はじめに

 従来から、高齢者には介護サービスなどの高齢者福祉制度があり、そしてそれを担う介護福祉士などの専門職がいる。同様に、障害者には障害者福祉制度があり、それを担う専門職がいる。児童においても同じような縦割りがある。これは歴史的にそれぞれの社会的なニーズが高まったときに、その都度政策として対応してきた結果生まれた福祉の仕組みである。

 このようなシステムがいったんできてしまうと、そのような制度に普遍性があるように思われるかもしれないが、やはり歴史の産物である。今新たなニーズは、できる限り慣れ親しんだ地域に暮らし続けることであり、これは共生をめざすことにほかならない。その具体的な支援の1つが共生型サービスである。それは、縦割りの福祉制度ではなく、地域という共通基盤に根ざした福祉の上に成り立つものだろう。

 しかし、縦割りが進んできた時代のほうが地域の基盤は今より強固だった。逆に、地域の基盤があったから縦割りを進めることができたのかもしれない。ところが、地域が脆弱になるにしたがって福祉への依存度は高まり、それがさらに地域を弱体化させることになってしまい、縦割りの制度の持続性が危ぶまれるようになった。

 共生型サービスは新たなニーズとしても語られるが、一方で、これからの福祉制度が活路を見出すサービスでもある。しかし、それには縦割りの制度がもたらした個別支援の専門性を見直すことだけではなく、地域福祉の基盤も再生していかなければならない。そして、制度の見直しだけではなく、共生型サービスを担う人材の育成も欠かせない。

 共生型サービスを担う人材には、これまでの福祉人材とは異なった役割があるので、人材の育成と支援にも違いをもたらすことになる。以下では、次の2点に絞って見てみよう。第一は、これまでの専門性との違いについてである。第二に、個別支援だけではなく地域支援を行う地域福祉人材の育成の重要性と、そのための具体的な研修と支援体制についてである。

共生型サービスにおける専門性

1.共生型サービスでは多機能性が重要である

 これまで、制度の縦割りに合わせるように福祉人材の専門分化が行われてきた。その過程で、専門の違いが強調され、それぞれ独自の専門性を高めてきた。「子どもに対しては保育」、「高齢者では介護」、「障害者では生活支援」で、それぞれの知識やスキルが蓄積されてきた。

 共生型サービスは、富山型デイサービスをモデルとしているといわれる。その富山型デイサービスが生まれたとき、「子ども、障害者、高齢者が1か所に集められた専門性のない雑居施設」という人もいた。これは、縦割りの専門性からみれば、福祉制度が生まれる以前の非専門的な状態と映ったのだろう。子どもは子どものニーズがあり、障害者には障害者のニーズがあり、そして高齢者には高齢者のニーズがあるので、それぞれ別々に対応することが援助のあり方だということだ。

 しかし、富山型デイサービスが生まれたのは、援助を求めてくる利用者を断らなかったからである。当初は高齢者のニーズを想定していたが、障害児を抱えた母親のニーズを受け止め、その後多様なニーズに応じることで、結果として共生型になった。つまり、ワンストップの窓口としての機能を持っていたといえるだろう。「地域共生社会」でいえば、とりあえず丸ごと受け止める断らない専門性である。

 さらに富山型デイサービスは、それぞれ個別に支援する以上に、お互いの関係性に支援の重点をおいた。サービスを提供するというよりも、多様な人がともに暮らすコミュニティをつくり出したのである。コミュニティは管理にはなじまない自生的なものであり、多様な利用者と職員がつくり出すものだ。職員が外部から管理するのではなく、職員自身もコミュニティの一員になる。このようなケアのあり方は、縦割りの中でつくられてきた専門性とは異なった専門性といえるのではないだろうか。

 問題の原因を明らかにして対処する問題解決型の支援ではなく、お互いの関係性を豊かにしていくことで、多様性を認め合える環境をダイナミックに構築していく支援ということになるだろう。共生型とは、多様な人びとがただ1か所にいることではなく、それぞれの人に役割がある一種の生態系である。このような共生型における人材育成は、外部研修によってだけで育成されるのではなく、職場において仕事を通じて身につけていくことになるだろう。

 富山型デイサービスは、当初は宅老所の一形態と考えられていた。宅老所は、その名のとおり高齢者の自宅のような居場所を意味しており、大規模な施設になじまない高齢者、多くは認知症の人であるが、そのような人びとを在宅で支える介護をしている。介護保険では、地域密着型サービスの小規模多機能型居宅介護のモデルになった。宅老所は、通って、泊まって、自宅に来てくれて、いざとなったら住むこともできる多機能な在宅支援である。これは支援の形態の多機能だが、富山型デイサービスの多様な利用者を受け容いれるさまざまな機能は「人に対する多機能性」ということができる。その意味では、共生型は宅老所の持つ多機能性と「人に対する多機能性」を持っている。

 宅老所の多機能は、最初は「通い」、すなわちデイサービスから始まり、デイサービスに来ているときだけではなく、自宅に帰ったときに家族と安心して過ごせるかということに気遣って支援してきた。家族が疲れたとき、本人が落ち着かないときは「泊まり」を利用してもらい、必要に応じて自宅で介護することもある。このような支援の仕方は、本来の在宅サービスが、在宅での安心を支援することからきている。また、最初は「通い」から始まるのは、日中自宅で孤立しがちな利用者に、地域での居場所を提供するためである。この居場所も富山型デイサービスと同じように、一種の小規模なコミュニティである。

 宅老所の多機能性は、利用者が地域に住み続ける支援という点では、地域共生型ということができる。また、地域との交流や近所づきあいも宅老所では普通のことである。「地域共生型サービス」という言葉を使えば、たとえ高齢者だけであっても共生型といえるだろう。

 問題は、どれだけ地域に開かれているかである。利用者を中心として地域を考えていく視点だけでなく、地域から利用者を考えていく視点も重要になる。個別支援だけが支援ではなく、地域福祉支援という役割も共生型サービスには大切であり、当然それを担う人材の育成が課題になる。

2.在宅サービスが逆に在宅を難しくしている場合も

 具体的な例で見てみよう。デイサービスを利用している女性がいるとしよう。デイサービスを利用しているので日中は確かに孤独ではない。しかし、この人の家には近所の友人が毎日のようにお茶飲みに来ていた。女性がデイサービスを利用するようになってから、いつ訪ねても留守であるため、友人はだんだんと足が遠のいていき、ついには来なくなってしまった。

 何が問題なのだろうか。いつものお茶飲みはデイサービスとは呼ばれないが「自宅デイサービス」と言っていいものだった。実は、自然とお互いに見守り合っていたのである。結局、その見守りはなくなってしまった。デイサービスが近所とのつながりを切ってしまったのである。女性だけでなく、デイサービスを利用していない友人もつながりを失った。つながりとは関係なので、関係が切れるということは、少なくとも2人以上に及ぶのである。

 このように個別サービスだけを見ると、日中の孤独が解消されたということかもしれないが、見えないところで地域に大きな影響を及ぼしている。在宅サービスが地域でのつながりを奪い、孤立を促進し、ますます自宅で暮らすことが不安になり、結局サービスが増えてしまうことが起こり得る。これが続けば、施設への入所を早めてしまうことになるかもしれない。

 ではどうしたらいいのだろうか。デイサービスから女性を自宅に送ってきたときに、送迎の職員が友人に「帰ってきたので、お茶飲みに来てください」とちょっと声をかけたり、「何かあったら連絡ください」とお願いしたりできれば、在宅での安心にもつながるし、関係性も切れないのではないだろうか。「そこまでサービスに含まれていない」と言われるかもしれないが、個別支援をもう少し広く考える必要があるだろう。

 宅老所では、デイサービスと言わずに「通い」と言っている。「通い」には、必要があれば朝食を準備して、身だしなみを整えることも含まれると考える。一般にはそのような支援はホームヘルプになるだろうが、宅老所にとっては一体的な在宅支援なのである。サービスに合わせるのではなく、その人のニーズに合わせているのである。

 介護保険サービスであれば、利用者一人ひとりにケアマネジャーがいる。個別支援もサービスのマネジメントではなく、生活のマネジメントが必要だろう。それには地域福祉支援との連携も大切である。ただ、制度を順守するだけでなく、利用者の生活がよりよくなる支援を考えていく人材が求められている。

地域福祉支援の人材育成

1.宮城県の生活支援コーディネーター研修の概要

 高知県の「あったかふれあいセンター」は、すべての住民を対象としている小規模多機能支援拠点である。個別支援だけでなく、地域福祉支援も行っている。人材育成という点で参考になるのが、宮城県が独自に行っている生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)の研修である。生活支援コーディネーターは、2015年の介護保険の改正でつくられた地域づくりのコーディネーターである。

 宮城県の研修は、東日本大震災で被災した人たちの仮設住宅などでの支援員に対して行った共通の研修をたたき台につくられた1)。この支援員研修では、阪神・淡路大震災などの大規模災害支援で個別支援が続くと、被災者の支援員に対する依存心が高くなり、近隣とのつながりを弱めてしまうことの反省から、居場所づくりなどの地域支援を重視した。この研修は被害の大きかった県内沿岸部で行われたが、生活支援コーディネーターを活用して内陸部の市町村でも地域づくりを進めることになった。ちなみに、仮設住宅などの支援員から生活支援コーディネーターになった人もいる。

 宮城県の生活支援コーディネーター研修は、2つに分かれている。1つは基本研修で、「地域での支え合いの理解」、「コミュニティワークの理解」、「協議体と生活支援コーディネーターの理解」と3段階からなる研修である。研修は生活支援コーディネーターだけでなく、関心のある県民であれば誰でも受けることができる。これは地域支援の研修なので、生活支援コーディネーター以外の人にも理解していただき、生活支援コーディネーターと一緒に地域づくりに参加していただきたいからである。

 町内会の役員、民生委員、行政職員、地域包括支援センター職員、社会福祉協議会職員など、住民から専門職まで多様な地域の人材が研修に参加している。特に、住民の参加が多い研修では、研修自体が大いに盛り上がる。これは、研修の内容が座学よりもグループワークを通して、地域をお互いに知り合う機会になっているからであろう。研修そのものが地域のつながりを促進するものになっている。

 2つ目が、基本研修を修了した人を対象にした実践講座である。地域の社会資源の発見方法、発見した資源の共有方法、先進事例など、受講者のアンケートから希望の多い内容を反映させ、毎年中身が変わっている。一度だけの研修では、地域支援を理解してもらうことはむずかしい。研修を受け、その後、地域に帰って実践を試みて、また研修を受ける。最初は、個別支援の発想からなかなか切り替えができない専門職も、研修の中でお互いにグループワークを重ねることで理解が深まるようだ。

 個別支援をしている専門職は、どうしても社会参加してくれない人に関心を向けがちだ。いわゆる困難事例に関するものが出てくる。そういうときは、今地域にある社会資源にもっと目を向けてもらうようにしている。実は、専門職のバリアがあって最初はなかなか突破できないが、回数を重ねるうちにわかってくるのである。地域づくりは時間がかかるし、時間をかけるべきであることを改めて感じている。

2.地域づくりの木で研修を共有している

 宮城県の生活支援コーディネーター研修では、図1のように、地域づくりを1本の木で示している。研修の中で何度も示し共有している。これを「地域づくりの木」と呼んでいる。木の枝葉の部分は「フォーマルな資源」、幹の部分は「インフォーマルな資源」、そして、普段は見えない根っこの部分を「ナチュラルな資源」と呼んでいる。この土の中の普段は見えない部分に地域の何気ない支え合いがたくさん埋もれており、それが地域の基盤となって地域福祉を支えている。

図1:宮城県で行われている生活支援コーディネーターの研修に用いられる地域づくりを1本の木で表した図。多くの支え合いが地域の基盤となり地域福祉を支えており、支え合いを宝物呼び、研修の中で宝物さがしをしながら、意味づけ、共有する。
図1:地域づくりの木
(生活支援体制整備事業をすすめるための市町村ガイドブック2)、図10、p.14より引用

 そこで、この支え合いを"宝物"と呼んで、宝物探しを研修の中で具体的に行っている。まずは、ないもの探しではなく、あるもの探しをしようということである。住民の参加が多い研修では、実に多様な宝物が出てくる。

 このような宝物は、ただ見つけただけでは十分ではない。宝物になるためには意味づけ、その価値を共有しなければならない。たとえば、仲良しの高齢者が一緒に行っている犬の散歩、これにどれだけの意味づけができるかである。運動になっている、介護予防にもなっている、地域の防犯にもなっている、見守りにもなっている、情報交換にもなっている──などいろいろ考えられる。

 実際、取材に行くと、散歩の後は誰かの家に集まってお茶飲みをしている。ちょっとした自前のサロンである。体調が悪いと心配して食事を届けたりしている。まさに、さまざまな支え合いが行われているのである。これをこれからも続けてもらえるように見守ることが大切だ。この人たちには新たなサロンは必要ないだろう。

 このような話を他の住民にすると自分たちも同じようなことをやっているという話が出てくる。まだまだ、地域には宝物がたくさんあり、それを絶やさないようにすることが大切である。

図2:宮城県での生活支援コーディネーターを孤立させないための取り組みを表す図。情報交換会、アドバイザー事業、生活支援コーディネーター同士のつながりづくりを支援し、県ぐるみ、市町村ぐるみ、地域ぐるみで生活支援コーディネーターの人材育成を行う。
図2:生活支援コーディネーターを孤立させない取り組み
(生活支援体制整備事業をすすめるための市町村ガイドブック2)、図47、p.45より引用

 この研修を続けていると毎回新たな発見がある。地域づくりは、新たにつくり直すのではなく、今ある資源を見つけ出すことから始めるというのが宮城県の研修である。宮城県では、研修だけではなく、図2のように、情報交換会、アドバイザー事業、生活支援コーディネーター同士のつながりづくりを支援し、生活支援コーディネーターを孤立させない取り組みも行っている。県ぐるみ、市町村ぐるみ、地域ぐるみで生活支援コーディネーターの人材育成をしているといえるだろう。

参考文献

  1. 平野隆之、小木曽早苗.第4章「東日本大震災におけるサポートセンターによる支援とその条件整備.日本地域福祉学会編「東日本大震災復興支援と地域福祉-次世代への継承を探る」中央法規出版;2015.
  2. 高橋誠一、池田昌弘ほか.生活支援体制整備事業をすすめるための市町村ガイドブック.平成28年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金「地域支援事業における生活支援コーディネーター・協議体の進め方に関する調査研究事業」; 2017.

筆者

高橋誠一先生
高橋 誠一(たかはし せいいち)
東北福祉大学総合マネジメント学部教授
略歴:
1988年:北海道大学大学院修了、北海道大学経済学部助手、1989年:札幌大学経済学部講師、1993年:同助教授、1999年:東北福祉大学社会福祉学部助教授、2001年より現職
専門分野:
高齢者福祉。経済学修士
池田昌弘先生
池田 昌弘(いけだ まさひろ)
特定非営利活動法人全国コミュニティライフサポートセンター理事長
略歴:
1983年:社会福祉法人全国社会福祉協議会、1985年:社会福祉法人栃木県社会福祉協議会、1996年:社会福祉法人東北福祉会「せんだんの杜」副杜長、1999年:東北福祉大学大学院修了、2005年より現職
専門分野:
地域福祉。社会福祉学修士

転載元

公益財団法人長寿科学振興財団 機関誌 Aging&Health No.88 2019年1月発行

Aging&Health(エイジングアンドヘルス)No.88(新しいウィンドウが開きます)

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