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非結核性抗酸菌症

公開日:2016年7月24日 10時00分
更新日:2019年6月21日 10時58分

非結核性抗酸菌症とは

 非結核性抗酸菌症は、従来から呼称されてきた「非定型性抗酸菌症」のことです。"非定型"というより"非結核性"という方が、より理解しやすいと思われますが、それでもなお、この疾患はあまり聞き慣れないものではないでしょうか。

 非結核性抗酸菌症とは、文字通り説明するなら、「抗酸菌という菌による感染症のうち、結核ではないもの」といえます。近年、活動性肺結核症が減少してきたのに対し、本症が徐々に増加していることが報告されています。

 病気のタイプを大きく2つに分けると、もともと健康であった肺に感染する一次型と結核後遺症や気管支拡張症などによって傷んだ肺に感染する二次型とがありますが、高齢者の方は特に二次型に注意が必要です。

ヒトに感染する非結核性抗酸菌

 さて、ヒトに感染する非結核性抗酸菌ですが、実は何種類もあり、水や土など広く自然界に存在しています。ヒトへの感染経路は明らかではありませんが、結核菌とちがって、ヒトからヒトへは感染せず、毒力も比較的弱いことがわかっています。しかし、発症するとその多くは治療が容易ではなく、慢性的に経過しながら少しずつ肺を蝕ばんでいくのが特徴です。

 診断も単純ではありません。これまでに様々な診断基準が提唱されてきました。結核症と違い、抗酸菌が痰から検出されただけでは診断できません。検出頻度に加え、肺から排出される菌の量や臨床症状、レントゲン写真の陰影の変化、さらに病理組織像などを総合的に評価して診断されます。

非結核性抗酸菌症の治療法は?

 非結核性抗酸菌症は、その菌の種類によって治療薬や治療効果が異なります。最も多く全体の約7割を占めるのがM.aviumM.intracellulareという菌によるものです。二つの菌をまとめてMAC(M.avium complex)症といいますが、残念ながらMAC症の治療効果は高いとは言えません。

 非結核性抗酸菌症の約2割を占め、最も治療効果が期待できるのがM.kansasiiという菌によるものです。残りの1割はその他の抗酸菌によるものですが、ここでは簡単にMAC症とM.kansasii症の治療について触れることにします。

MAC症の治療(図1)

 本症の患者さんは胃腸障害を訴えることが多く、食事が十分にとれず、痩せていることがしばしばみられます。ですからまず、栄養・休養を十分にとることが大切となります。糖尿病がある方に関しては特にそのコントロールも重要です。

 さて治療薬ですが、困ったことにこの菌は、どの抗菌剤に対しても感受性を示しません。しかし唯一クラリスロマイシン(CAM)にだけは感受性を示します。そこで図1に示したように、CAMに抗結核剤であるEB(エタンブトール)とRFP(リファンピシン)とSM(ストレプトマイシン)(あるいはKM(カナマイシン))を併用する治療が行われています。

 1年半から2年の長期にわたって治療をすすめると、初回治療の半数近くで排菌がみられなくなります。1年間菌が排出されないのを確認して治療を終了しますが、再発も多いのでその後も注意が必要です。

図1:MACの化学療法をあらわす図
図1:MACの化学療法(CAMを含んだ治療で1年間菌がでなくなれば治療を終了する)

M.kansasii症の治療(図2)

 この菌は比較的毒力が強く、結核と同じ様な症状を来しやすいことや、性別では圧倒的に男性に多いのが特徴です。無治療で自然軽快したという報告もありますが、下記のように結核に準じて治療すれば比較的経過がよいとされています。

 なお、RFPが最重要で、PZA(ピラジナミド)は使いません。少なくとも菌陰性化後1年間、合計1年半の治療が必要とされています。

図2:M.kansasii症の化学療法を示す図
図2:M.kansasii症の化学療法(少なくとも菌陰性化後12ヶ月間、合計18か月の治療が必要)

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