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MDS(骨髄異形成症候群)と白血病の診断

公開日:2016年7月25日 14時00分
更新日:2023年12月28日 11時43分

MDSの診断にあたって行われる検査

 骨髄異形成症候群と診断されるには、以下の二つの検査を行います。

血液検査

 血液検査によって、白血球、赤血球、血小板などといった血液成分の量を調べます。また、血液成分の量の他に、異常な血液成分がどれだけあるかどうかを検査します。骨髄異形成症候群の場合には、貧血の中でも特に「大球性貧血」と呼ばれる貧血が見られ、他にも2つ以上の血液成分の減少が見られます。

骨髄穿刺(こつずいせんし)

 骨髄穿刺(こつずいせんし)は、骨髄に直接針を刺して骨髄液を採取し、検査します。腕に針を刺すことで行う血液検査とは違い、骨髄に直接針を刺して行うため、検査は大掛かりなものとなり、患者さんにかかる負担も大きくなります。

 骨髄異形成症候群では、骨髄液の中に正常幹細胞の他に異常幹細胞が存在し、正常な造血が抑制されている様子が見られます。

MDS時の骨髄内の様子

 MDSの場合は、異常な血液成分が分化、または増殖しています。分化した異常血球の多くは、そのまま細胞内で遺伝子のプログラムに従って死んでしまい、「アポトーシス」という成分になります。

 このアポトーシスが骨髄内に存在することで、正常な血液成分の産出が抑制されてしまうため、血液検査でも血液成分の減少が見られます。

 中には白血病にもみられる「芽球(がきゅう:白血病細胞)」も見られますが、増殖は活発ではなく、骨髄全体の中でも20%以下となっています。

白血病の種類に応じての診断基準

 白血病においても、基本的にはMDSと同様、血液検査と骨髄穿刺が主な検査となります。

 白血病には大きく分けて「急性骨髄性白血病」「慢性骨髄性白血病病」「急性リンパ性白血病」「慢性リンパ性白血病」に分けられます。

 その中でも今回は「急性白血病」の診断手順について、解説してきます。

急性白血病が疑われる所見

 急性白血病は、急激に白血病細胞とも呼ばれる異常な芽球が増殖するために、様々な症状が出ます。症状の詳細については、MDS(骨髄異形成症候群)と白血病の症状の項目をご参照ください(リンク1)。

リンク1 「MDS(骨髄異形成症候群)と白血病の症状」

 症状の他にも、正常な造血機能ならば見られないはずの「芽球(白血病細胞)」が血液検査でも確認され、正常でもない芽球でもないという中間の血液成分は見られないといった特徴がある場合、「急性白血病」を疑います。

急性白血病の診断時に行われる検査

 急性白血病を疑った場合、行われるのが「骨髄穿刺」です。骨髄穿刺によって、骨髄中の芽球の比率が20%以上となっていた場合は、急性白血病と診断されます。

 急性白血病と診断された後は、どの種類の白血病かを調べるために、骨髄をより詳しく調べ、骨髄性かリンパ性かを判別します。

 このとき、白血病細胞をさらに細かく調べるために、以下の検査を行うことがあります。

MPO染色

 特殊な酵素で芽球を染めて、染まった割合の細胞を見ます。染まる細胞が3%以上ならば骨髄系、3%未満ならばリンパ系としますが、一部の骨髄性白血病でも染まらないため、他の検査によって分類を行います。

エステラーゼ二重染色

 エステラーゼという酵素のうち、特異的エステラーゼ染色と非特異性エステラーゼ染色という二重にわたって染色を行うことで、検査を行います。

 これらの検査から、急性骨髄性白血病はFAB分類という方法を用いて、表の通り分類されます。頻度は急性骨髄性白血病において、それぞれの分類ごとの割合を示しています。

表:急性骨髄性白血病の分類
分類M0M1M2M3M4M5M6M7
分類急性骨髄性白血病 最未分化型急性骨髄性白血病 未分化型急性骨髄性白血病 分化型急性前骨髄性白血病急性骨髄単球性白血病急性単球性白血病急性赤白血病急性巨核芽球性白血病
頻度 5% 10% 30~45% 5~8% 5% 10% 5~6% 3~5%

 急性リンパ性白血病の場合は、臨床的意義に乏しいため、FAB分類はほとんど使われていません。

WHO分類における急性白血病の位置づけ

 WHO分類では、急性白血病という項目はなく、急性骨髄性白血病は骨髄系腫瘍の一つとして扱われており、大分類の一項目となっています。

 また、急性骨髄性白血病については骨髄や血液に占める芽球の割合が20%以上のものと定義されていますが、急性リンパ性白血病については、明確な記載はありません。

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