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介護医療院とは

公開日:2019年2月12日 09時40分
更新日:2023年8月 2日 11時39分

介護医療院とは何か1)

 介護医療院とは、2018年4月の第7期介護保険事業計画に則り、新たに法定化された施設です。2017年度末で廃止となった「介護療養型医療施設」に代わり、長期的な医療と介護の両方を必要とする高齢者を対象に、「日常的な医学管理」や「看取りやターミナルケア」等の医療機能と、「生活施設」としての機能を提供できる施設です。ただし、介護療養型医療施設の全面廃止までは6年間の猶予があります。

 そもそも、介護を必要とする高齢者のための施設には、以下の3種類があります。

  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム 通称:特養):要介護者のための生活施設
  • 介護老人保健施設(老健):要介護者にリハビリ等を提供し、在宅復帰を目指す施設
  • 介護療養型病床:病院・診療所の病床のうち、長期療養を必要とする要介護者に対し、医学的管理のもと行われる介護、必要な医療等を提供する施設

 このうちの「介護療養病床」が廃止され、「介護医療院」へ転換されることになります(移行期限は2024年3月まで)。介護医療院は今後ますます増加が見込まれる慢性期の医療・介護ニーズへ対応するために、要介護者に対する長期療養のための医療と日常生活上の介護を、一体的に提供することを目的として創設されました。

介護医療院の設置基準1)

 介護医療院には、設備基準があるため、診察に適した診察室、1人あたり床面積8.0m2以上の療養室、40m2以上の機能訓練室、談話室、食堂、浴室、レクリエーションルームなどが必ず設置され、長期の療養に適した施設となっています。

介護医療院の人員基準1)2)

 介護医療院にはⅠ型とⅡ型があり、Ⅰ型は重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者、Ⅱ型はⅠ型に比べて比較的安定した容体の高齢者を利用者像としています。そのため、入居者に対する基準にも違いがあります。

  • Ⅰ型(介護療養病床に相当):重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者等
  • Ⅱ型(老健施設以上に相当):Ⅰ型と比較し、容体が比較的安定した者

 なおⅠ型とⅡ型では、医療者などの人員配置も違います(表1)。

表1:介護医療院の人員配置について2)
人員Ⅰ型Ⅱ型
医師 入居者48に対し医師1 入居者100に対し医師1
薬剤師 入居者150に対し薬剤師1 入居者300に対し薬剤師1
看護師 入居者6に対し看護師1 入居者6に対し看護師1
介護士 入居者5に対し介護士1 入居者6に対し介護士1
リハビリ専門職 理学療法士/作業療法士/言語聴覚士:適当数 理学療法士/作業療法士/言語聴覚士:適当数
栄養士:入居者 定員100以上:1以上 定員100以上:1以上
医師の宿直 宿直あり
(基準なし)

 また、医療機関と住居スペースの併設型も認められており、この場合は人員配置等に特例が設けられています。

介護医療院と介護保険3)

 2000年から始まった介護保険制度は、心身の障害により、自立した日常生活ができなくなった高齢者を支援するための制度です。制度の創設以来65歳以上の被保険者は2018年までに約1.6倍に増加、サービス全体の利用者は3.2倍に増加しており、高齢者の介護になくてはならないものとなっています。

 介護施設のサービス利用者も、2000年4月の52万人から2018年4月には93万人と、1.8倍に増加しています。さらに今後、65歳以上の高齢者数は2025年には3,677万人、2042年には3,935万人とピークを迎えると予測されており、より効率的に介護サービスを行う上で、介護医療院への転換には期待がされています。

介護医療院にはどのような人が入れるのか1)2)

 介護サービスは、65歳以上もしくは40歳以上で特定疾患などがあり、要介護認定を受けている人のみが受けられるものです。要介護認定とは、介護の必要量を全国一律基準に基づき、客観的に判定する仕組みのことです。一般的な医療サービスのように、自己判断では介護サービスは受けられません。

 また、介護医療院は「重篤な身体疾患を有する方や身体合併症を有する認知症高齢者の方等に長期療養等を行う」ことを目的としているため、要支援1、要支援2の高齢者が利用することはできません。

 また、要介護1~5と判定されても必ず入居できるというものではなく、要介護度が高いほど介護医療院への報酬は高く、入居を受け入れられやすいと考えられます4)

 さらに、2018年4月の介護報酬改定により、認知症の人への対応や、低栄養リスクの改善に対しての加算が新たに設けられたことからも、認知症である、低栄養リスクが高い、その他にも排泄支援を受ける必要があるなど「加算」の対象となる人から入居できると考えられます。

介護医療院利用に対するおおよその費用

 介護医療院を利用する場合の費用は、施設サービス費のほかに居住費・食費・日常生活費などがかかります。施設サービス費は要介護度や施設形態、居室の種類、職員の人数などで異なります。利用者の負担割合は原則1割ですが、一定以上の所得がある場合は2割または3割を負担します。

 表2はⅠ型、表3はⅡ型の介護医療院の施設サービス費用の目安です。利用者の要介護度等に応じた施設サービス費と、利用者の状態に応じたサービス提供による加算・減算、施設の種類・体制等によるサービス提供体制強化加算、介護職員の処遇改善加算(現行加算・特定加算)が加わり、自己負担額が異なる場合があります。実際に必要となる費用は、施設によって異なる部分がありますので、各施設に直接問合せる必要があります。

表2:Ⅰ型介護医療院サービス費(Ⅰ)の1日あたりのサービス費(利用者負担1割)4)
要介護度従来型個室多床室ユニット型個室・ユニット型個室的多床室
要介護1 698円 808円 825円
要介護2 807円 916円 933円
要介護3 1,041円 1,151円 1,168円
要介護4 1,141円 1,250円 1,267円
要介護5 1,230円 1,340円 1,357円
表3:Ⅱ型介護医療院サービス費(Ⅰ)の1日あたりのサービス費(利用者負担1割)4)
要介護度従来型個室多床室ユニット型個室・ユニット型個室的多床室
要介護1 653円 762円 824円
要介護2 747円 857円 924円
要介護3 953円 1,062円 1,142円
要介護4 1,040円 1,150円 1,234円
要介護5 1,118円 1,228円 1,318円

参考文献

  1. 厚生労働省 介護療養病床・介護医療院のこれまでの経緯(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 厚生労働省 第152回社会保障審議会介護給付費分科会資料3介護療養型医療施設、介護医療院の報酬・基準について(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 厚生労働省 公的介護保険制度の現状と今後の役割(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 令和元年度介護報酬改定について 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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