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老人性認知症疾患療養病棟とは

公開日:2019年2月12日 09時10分
更新日:2023年8月 2日 11時04分

老人性認知症疾患療養病棟とは1)2)3)

 老人性認知症疾患療養病棟とは、介護療養型医療施設の一種で、認知症となり、認知症に伴う徘徊や妄想、攻撃的行動、不潔行為、異食等の行動、心理症状(BPSD)のため、在宅での対応が困難な要介護者に、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護等の世話、機能訓練、その他必要な医療を提供する施設です。特別養護老人ホームと比べ、医学的な管理が必要な方が入所されます。

 認知症に伴って、幻覚、妄想、徘徊等が生じ、家族による介護が困難になることがあり、時には、精神科医療による適切な診断と入院治療が必要になることがあります。このような場合の介護サービス提供の場として該当するのが老人性認知症疾患療養病棟です。

 老人性認知症疾患療養病棟を有する病院における介護療養施設サービスには病院の種類や看護・介護職員の配置・体制によりサービスの類型が異なります。

 また、老人性認知症疾患療養病棟は1室あたりの定員は4人以下とされており、入院患者1人当たりの面積は6.4m2以上となっています。ユニット型介護療養型医療施設の場合、共同生活室の設置、病室を共同生活室に近接して一体的に設置され、1ユニットの定員はおおむね10人以下です。

 昼間は1ユニットごとに常時1人以上、夜間及び深夜は2ユニットごとに1人以上の介護職員又は看護職員を配置、ユニットごとに常勤のユニットリーダーを配置する等の基準が加わります。

 介護療養型医療施設は、療養病棟と老人性認知症疾患療養病棟の2種類がありますが、これらの介護療養型医療施設は、2024年3月末日にて廃止される予定になっています。その受け皿の施設が、2008年に創設された「新型老健」と2018年4月に創設された「介護医療院」となります。

認知症に伴う症状4)5)

 認知症は、脳の病気や障害のために、正常であった記憶や思考への影響がみられる状態です。認知症の症状は、中核症状と周辺症状(BPSD)に分けられます。

 中核症状は、認知症の方なら誰でも見られる症状で、記憶障害、見当識障害、理解判断力の障害、実行機能障害などがあります。周辺症状は、暴言・暴力行為、徘徊、せん妄、妄想、幻覚、抑うつなどです。

 認知症になると、夜間に家族を起こす、道に迷い帰って来られなくなる、徘徊する、大声をあげる、攻撃的になる、不潔行為等がみられるようになり、家族等による介護や負担が重くなりがちです。これらの行動は、認知症高齢者なりの理由に基づいて現れ、対応の仕方で症状が軽減したり、消失したりする場合もあります。対応困難な場合は認知症疾患療養病棟への入院医療も選択肢の一つとなります。

認知症の症状の進行防止や健康の維持・増進機能も

 病棟には、生活機能訓練室を有し、日常生活動作訓練やレクレーション等を通じて、認知症の症状の進行防止や、健康状態の維持・増進を図ります。認知症の症状が安定して生活できるように、ユニット型の個室や準個室が増えています。入院する必要性があるかどうかの判断に関しては、主治医と相談してください。

老人性認知症疾患療養病棟の入所基準

 老人性認知症疾患療養病棟は基本的に、要介護1以上の認定を受けた65歳以上の高齢者を対象としています。施設によっては待機者が多く、入居まで時間がかかることもあります。

老人性認知症疾患療養病棟の費用負担6)

 老人性認知症疾患療養病棟のサービスの利用料金は、認知症病棟を有する病院の種類や看護・介護職員の利用者1人に対する配置・体制により費用も異なります(表1から表8)。

 利用者の要介護度等に応じた施設サービス費とは別に、食費、居住費、日常生活費は別に必要です。また、利用者の状態に応じたサービス提供による加算、施設の種類・体制によるサービス提供体制強化加算、介護職員の処遇改善加算(現行加算・特定加算)が加わり、自己負担額が異なる場合があります。詳細は施設にご確認ください。

 また、利用者の負担割合は原則1割ですが、一定以上の所得がある利用者は2割または3割負担となります。

認知症疾患型介護療養施設サービス費(1割負担の場合、1日あたり)

表1:認知症疾患型介護療養施設サービス費(1)大学病院等 看護3:1 介護6:1
要介護度従来型個室多床室
要介護1 973円 1,078円
要介護2 1,037円 1,144円
要介護3 1,101円 1,207円
要介護4 1,166円 1,272円
要介護5 1,230円 1,336円
表2:認知症疾患型介護療養施設サービス費(2)一般病院 看護4:1 介護4:1
要介護度従来型個室多床室
要介護1 917円 1,024円
要介護2 985円 1,091円
要介護3 1,053円 1,158円
要介護4 1,120円 1,227円
要介護5 1,187円 1,293円
表3:認知症疾患型介護療養施設サービス費(3)一般病院 看護4:1 介護5:1
要介護度従来型個室多床室
要介護1 889円 996円
要介護2 956円 1,061円
要介護3 1,021円 1,128円
要介護4 1,086円 1,193円
要介護5 1,152円 1,257円
表4:認知症疾患型介護療養施設サービス費(4)一般病院 看護4:1 介護6:1
要介護度従来型個室多床室
要介護1 874円 980円
要介護2 938円 1,045円
要介護3 1,003円 1,108円
要介護4 1,067円 1,174円
要介護5 1,132円 1,237円
表5:認知症疾患型介護療養施設サービス費(5)一般病院 経過措置型
要介護度従来型個室多床室
要介護1 815円 921円
要介護2 879円 985円
要介護3 943円 1,050円
要介護4 1,008円 1,114円
要介護5 1,072円 1,178円

認知症疾患型経過型介護療養施設サービス費(1割負担の場合、1日あたり)

表6:認知症疾患型介護療養施設サービス費 経過措置型
要介護度従来型個室多床室
要介護1 721円 828円
要介護2 785円 891円
要介護3 850円 956円
要介護4 914円 1,021円
要介護5 979円 1,084円

ユニット型認知症疾患型介護療養施設サービス費(1割負担の場合、1日あたり)

表7:ユニット型認知症疾患型介護療養施設サービス費(1)大学病院等
要介護度ユニット型個室・ユニット型個室的多床室
要介護1 1,099円
要介護2 1,164円
要介護3 1,228円
要介護4 1,292円
要介護5 1,357円
表8:ユニット型認知症疾患型介護療養施設サービス費(2)一般病院
要介護度ユニット型個室・ユニット型個室的多床室
要介護1 1,044円
要介護2 1,111円
要介護3 1,180円
要介護4 1,247円
要介護5 1,314円

老人性認知症疾患療養病棟の職員体制1)

 老人性認知症疾患療養病棟の職員の人数は、職種によって変わります。

  • 医師:概算で利用者48人に対して1人以上
  • 薬剤師:概算で利用者150に対して1人以上
  • 看護職員:利用者4人に対して1人以上
  • 介護職員:利用者6人に対して1人以上
  • 作業療法士、精神保健福祉士:全体で1人以上
  • 介護支援専門員(ケアマネージャー):利用者100にに対して1人以上

 介護支援専門員(ケアマネージャー)も配置されていますので、退院に向けての連絡や相談も可能です。

参考文献

  1. 厚生労働省 介護療養型医療施設及び介護医療院(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 一般社団法人高齢者住まいアドバイザー協会著:高齢者住まいアドバイザー検定R公式テキスト, 第2版, ブックウェイ, 兵庫県,2018年, P206
  3. 牛越 博文 (監修):図解 介護保険のしくみと使い方がわかる本 (介護ライブラリー). 初版. 講談社. 2018年, P61
  4. 厚生労働省 みんなのメンタルヘルス こころの病気を知る 病名から知る 認知症(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 厚生労働省老健局 認知症施策の総合的な推進について(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  6. 令和元年度介護報酬改定について 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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