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介護のための家屋改造 その2

公開日:2016年7月25日 12時00分
更新日:2019年7月17日 11時46分

家屋改造の具体的内容

 介護を必要とする高齢者に対する家屋改造は、寝室を中心とした基本的な部屋の配置、不要な段差の解消と適切な手すりの設置、浴室・便所の配慮に整理できます。建築的配慮として、移動能力が歩行補助具の有無に関わらず歩行可能か車椅子を用いるかによって改造内容は変わり、車椅子利用の方が、広いスペースを必要とします。

段差の解消

 日本の家屋は、段差だらけであり、段差の解消が家屋改造のポイントです。

 比較的小さな段差である敷居には、写真のようにくさび形板を設置したり、床面を上げることで解消できます。外から家の中に車椅子で入るためには、スロープか段差解消機を設置します。

写真1:段差をうめるくさび型板。

写真1 小さな段差をうめるくさび型板の設置

手すりの取り付け

 手すりは、立ち上がり、しゃがみ動作、歩行等の動作を容易にしたり、転倒事故を防ぐだけでなく、不安定な動作を安定させます。手すりを取り付ける位置は、大腿骨大転子部(おしりの横で触れる骨の部分)の高さ750mm~850mmが一般的です。坐位からの立ち上がり時には、40cmから50cm前方で支えるように手すりを取り付けます。

浴室の改造(写真)

 浴室への移動が車椅子の場合移動が車椅子またはシャワー車椅子であれば、居室から浴室の洗い場までの段差を解消する必要があります。洗い場の段差は、洗い場の床面をかさ上げし、入り口にグレーチングを設置すればよいのですが、改造に高額を要しますので、洗い場にすのこを設置するのも簡単な方法です。この時、すのこの溝幅は5mmとします。

 浴槽の高さについて浴槽の出入りを立位で行う場合は、またぐことが容易かつ安全な浴槽の高さにするか、浴槽の深さを工夫する必要があります。座位の姿勢で浴槽に出入りする場合は、車いすと同じ高さにすることが望ましいので、浴槽の縁の高さを洗い場から400mmから450mmに設置するとよいでしょう。

改造の注意点

 改造にあたって、まず浴槽に接して腰掛け台を設置し、ここに一度座りなおして浴槽に入るほうが便利です。また浴槽にバスボードや滑り止めシート、浴槽内台を設置すると転倒を防ぐことになります。手すりは、浴室への出入り、浴室内の移動、浴槽への出入り、浴槽内での入浴姿勢の保持に必要です。立ちしゃがみには縦手すり、必要に応じてL字手すりを設置します。

浴槽への出入りが困難な場合

 入浴動作のうち浴槽への出入りが困難な症例では、シャワー用車椅子を使用し、シャワー浴で対応する場合があります。シャワー浴に対応できるように住宅の断熱性能を高め、暖房設備を導入することも必要となる場合もあります。

浴室の扉について

 浴室の扉は、原則開閉がしやすい引き戸とし、滑ったりして転倒する危険があるのでガラスの使用は避け、アクリルまたはアルミを使用するとよいでしょう。

写真2:高齢者に向けて改造された浴室。浴槽の高さを低くし、跨ぎやすくしている。また、浴槽のはじに腰かけ台を設けている。また、壁には手すりを設けて、浴室内を移動しやすくしている。

写真2 浴室の改造

トイレの改造

 便器は、座位保持、立ちしゃがみ動作の容易な洋式便器に変更します。和式便器や大小両用便器を変更できない場合は、据置便器を上に乗せる方法があります。手が不自由で後始末動作が困難な場合は、湯水洗浄と温風乾燥ができるウォシュ・エア・シートがついたものにします。便座からの立ちしゃがみには,壁に縦手すりを設置、必要に応じてL字手すりを設置します。床面は、濡れても滑りにくく、かつ掃除しやすい材質にします。扉は引き戸かアコーディオンカーテンにします。車椅子を使用する場合には、便器と前方の壁に850mmと便器と側面方向に1000mmのスペースを確保するとよいです。

居室の改造

 ベッド周囲の活動性を拡大させるのには、移動バーは最も利用価値が高いと思います。適切に設置することにより、ポータブルトイレや車椅子への移乗動作、立ち上がり等の自立度を高め、介護量の軽減につながります。またベッド周辺に車椅子が回転できるスペースを確保することや、寝室の近くに高齢者専用の便所を設けるのもよいでしょう。

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