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高齢者のICT利活用の効果

公開日:2019年8月 9日 09時40分
更新日:2019年8月 5日 11時01分

高齢者のインターネットの利活用について

写真:子供と一緒にノートパソコンをつかっている高齢女性の写真

 パソコンやスマートフォンを使ってインターネットを積極的に利用する高齢者が年々増えています。インターネットにつながったパソコンやスマートフォンは家族や友人・知人との連絡ツールだけでなく、情報取集の道具として、日々活用されています。インターネットはわたしたちの生活に、大変身近なものとして認識されています。

高齢者のICT利活用がもたらす効果1)

 ICT(情報通信技術)とは、パソコン、スマートフォン、タブレットやスマートスピーカーなど様々な形状のコンピュータや端末機器を使って情報を処理し、情報を双方向でやり取りしたり、共有する技術の総称です。現在、普段の日常生活においてだけでなく、医療、教育、交通、製造、サービス業などさまざまな分野でICTが活用されています。高齢者がICTを利活用することで、どのような効果が得られているのでしょうか。

 少し以前の報告になりますが、平成19年(2007年)に総務省が行った「高齢者・障害者のICT利活用の評価及び普及に関する調査研究 報告書」があります。この調査は、高齢者本人とICT利活用を支援する団体の関係者に対するアンケート・ヒアリング調査によって行われており、ICT利活用がもたらす効果について「高齢者本人にとっての効果」「周囲にとっての効果」「地域社会等での効果」の3つの区分に分けて示されています。高齢者本人と周囲にもたらされる効果について、調査報告を見ていきます。

高齢者本人にとってのICT利活用の効果

 高齢者本人にとってのICTを利活用する効果としては、次の5つの効果が挙げられますが、これらはすべて相乗的に作用します(図1)。

図1:高齢者本人にとってのICTを利活用する効果を表す図。居場所と役割の形成、コミュニケーションやアクティビティの増加、健康面の改善、楽しみ・喜び・刺激・安心感の提供、意欲と生活満足度の向上の5つの効果が挙げられ相乗的に作用する。
図1:高齢者本人にとってのICT利活用効果1)

コミュニケーションやアクティビティの増加

 アンケート回答者のほとんどが、インターネットが使えるようになることによって、家族や知人とのコミュニケーションが密になる、新しい交友関係が生まれるというような、「活動的になり、交友関係や行動範囲が広がる」という効果を挙げています。同世代ではない友人知人ができたり、これまでと違った交友関係が生まれたりすることで、世界が広がったと感じる高齢者が多いことがわかりました。

 身近な人とのコミュケーションも、メールを通じて子どもや孫との連絡を取る機会が増えたこと、特に高齢者にとっては孫との連絡は励み・喜びとなっています。

 また、高齢者自身よりも先にICTの利用を楽しんでいる友人や知人の影響を受け、デジカメ撮影やブログ投稿といった新たな分野に取り組んでいます。その結果、趣味が増え、撮影のために旅や遠出をするといった屋外活動にもつながっているという効果も見えてきました。

楽しみ・喜び・刺激・安心感の提供

 ICTの利用により多様な情報に接することができ、刺激を得られること、日常生活に楽しみが増えたこと、脳の活性化につながったという回答も多く挙がっています。

 また、この効果は出張パソコン教室でもみられ、最初は表情が固かった参加者の表情が、パソコンの操作が進むにつれ柔らかくなるなど、明らかな効果を認めています。

健康面の改善

 脳の活性化について挙げた回答者が多かったことは前述のとおりですが、健康面の改善についての自らの経験談・体験談の回答もみられたようです。

 例えば、80歳を超えて独学でパソコンをマスターしてホームページを立ち上げた男性は、ICTの利用が脳の活性化に良いと回答しているそうです。また、くも膜下出血で半身麻痺になった女性は、ブログを始めたことで思考能力が改善し、リハビリテーション効果が認められています。

 結果的に、ICTを適正に利用することが、健康維持・増進・回復に効果が期待できると結んでいます。

居場所と役割の形成

 パソコンを学ぶことやインターネットを利用することは、新しい人間関係や交流を生み出します。その結果、高齢者の居場所や役割が形成されることも効果のひとつです。

 特に、退職後の男性や家族を失った高齢者にとって、インターネットを介した人との交流は、孤独に陥ることを防ぎ、新しい生活への大きな力となっているようです。

 また、在宅就業やインターネット上の会議、趣味グループへの参加などによって、その人なりの役割や目標が生まれるのも、大きな効果と言えるでしょう。

意欲と生活満足度の向上

 これまで苦手意識があったことでも、自分の活動にしている人もいます。例えば、文章や絵の分野です。パソコンやスマートフォンなどを使ってインターネットを利用することでブログやイラスト作成が趣味になったり、デジタルカメラで撮影した写真を展示会に出品するという目標のために腕を磨いたりなど、さまざまな活動に積極性を引き出すという効果も多く挙げられた回答のひとつです。

 高齢者にとって、自分の「できること」がICTを利用・活用することで増えると、自分に自信が持てるようになるという意見も多く寄せられたようです。

周囲の人々への効果

 これまではICTを利用・活用することで高齢者本人にあらわれる効果を見てきましたが、では周囲の人への効果はどうでしょうか。

家族等とのコミュニケーションの増加と円滑化

 高齢者がパソコンやスマートフォンなどを使ってインターネットを利用することで、子どもや孫との共通の話題ができ、コミュケーションがしやすくなるという効果が多く挙げられています。必要な時に必要なことを連絡することができ、連絡回数が増えることで、お互いの安心感にもつながります。特に家族にとって高い安心感は、心理的な負担を軽減する効果があります。

介護やリハビリテーション等での家族の負担軽減

 パソコンやスマートフォンなどを使ってインターネットを利用することで、重い病気や障害など健康を害した高齢者と直接会うことが難しい家族・友人・知人とのやり取りや、遠隔地からの励ましなど、パソコンやスマートフォンのメール機能やテレビ電話機能などを利用したコミュニケーションを図ることができます。その結果、高齢者の周囲の人が安心感を得たり、高齢者の生活を支える家族の心理的負担を減らすことができます。

 またICTを利用したコミュニケーションは、高齢者本人に対して直接的あるいは間接的に、介護予防や健康改善などの効果をもたらします。さらに将来的には、介護負担の軽減につながるというメリットも考えられるとしています。

参考文献

  1. 総務省 高齢者・障害者のICT利活用の評価及び普及に関する調査研究 報告書 第5章 高齢者のICT利活用がもたらす効果(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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