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高齢者を支える介護人材不足について

公開日:2019年6月21日 09時20分
更新日:2019年6月21日 09時20分

img:車いすに乗車する高齢夫婦

 高齢化率がさらに高くなっていく日本では、介護人材不足が深刻化しています。介護が必要な人数と必要な介護人材の数を比べ、これからの介護人材確保のための施策を確認していきましょう。

将来見込まれる介護が必要な人数(介護需要)

 経済産業省によると、少子高齢化がさらに進むと、将来、65歳以上の高齢者の人口率が高くなり、とくに、85歳以上の人口増加が大きくなると推計されています (図1)1)

図1:1950年から2045年の日本の人口の実績と将来推計を示す図。85歳以上の人口比率が2015年以降急拡大していることをあらわす
図1:日本の将来人口推計1)

 内閣府男女共同参画局の年齢層別の要介護認定者数をみると、高齢になるほど要介護認定者数は増えており、85歳以上90歳未満で160万6,776人と最も多い人数となっています (図2)2)。今後、85歳以上の人口が大幅に増加する日本では、要介護認定者数も大きく増加することが予測できます。

図2:年齢階級別・男女別の要介護認定者数と認定率を示す図。高齢になるほど要介護認定者数と認定率が高まることをあらわす
図2:要介護認定者数と認定率(年齢階級別)2)

 要介護(要支援)認定者数の将来推計をみると、介護保険制度が開始された平成12年(2000年)度以降、要介護(要支援)認定者数は年々増加しています(図3)。

 厚生労働省の介護保険事業状況報告の平成30年(2018年)10月分によると、要介護(要支援)認定者数は、655.8万人(男性:206.3万人、女性449.5万人)となっています3)。図3をみると、平成27年(2015年)の要介護(要支援)認定者数は620万人であるので、3年間で36万人増えていることがわかります。

 将来的には、要介護(要支援)認定者数は、2035年までは大きく増加していき、2040年にピークを迎え、988万人となると推計されています (図3)4)

図3:要介護(要支援)認定者の2000年から2045年の実績と将来推計を示す図。高齢化の進展に伴い要介護(要支援)の認定者数は年々増加し、2035年まで増加のペースが緩まないことをあらわす
図3:要介護(要支援)認定者の将来推計1)

介護を提供する人材の現状について(介護供給)

 厚生労働省の資料によると、平成12年(2000年)度の介護保険制度の開始以降、平成28年(2016年)度にかけて、要介護認定者数の増加とともに介護職員数も増加しており、平成12年(2000年)度には54万9千人だった介護職員数は、平成28年(2016年)度には183万3千人となっています (図4)4)

図4:平成12年から平成28年までの介護職員数の推移を示す図。要介護(要支援)認定者数の増加に伴い介護職員数も16年間で3.3倍に増加していることをあらわす
図4:介護職員数の推移4)

 平成28年(2016年)度の介護人材の需要人数は約190万人とされており、平成28年(2016年)度の介護職員数と比べると、約7万人の介護人材数が足りていないことがわかります。85歳以上の人口が増加する将来は、さらなる介護人材の需要が見込まれており、2020年度には約216万人、2025年度には約245万人の介護人材が必要となると推計されています。平成28年度の約190万人に加えて、2020年度には約26万人、2025年度には約55万人の介護人材の確保が必要であり、年間にすると約6万人の介護人材を確保する必要があるとされています(図5)。

図5:介護人材の需要の将来推計を示す図。2016年介護人材190万人に加えて2020年度の時点で約26万人、2025年の時点で約55万人介護人材がさらに必要となることをあらわす
図5:介護人材の需要4)P24より一部抜粋

介護人材不足の背景

 介護分野の有効求人倍率は全産業に比べて高い水準で推移しています。介護人材が不足している理由として、介護サービス事業所における人手不足感と給与水準の低さがあげられます。

人手不足感

 とくに訪問介護分野の人手不足感が大きく、平成29年(2017年)度には55.2%が不足している(「大いに不足」と「不足」の計)と感じています。不足している理由は、「採用が困難である」が88.5%で最も多く4)、人材の確保自体が難しいことが伺えます(図6)。

図6:介護職員の不足状況と不足している理由を示す図。介護職員は大いに不足している状況で理由は「採用が困難である」ことが最も多いことをあらわす
図6:介護職員の不足状況と不足している理由4)

 介護職員の離職率が産業計に比べると高い水準であることも理由としてあげられます。離職理由としては「職場の人間関係(20.0%)」、「結婚・出産・妊娠・育児(18.3%)」、「法人・事業所の理念や運営のあり方への不満17.8%」のほか、「収入が少ない(15.0%)」も割合の多い回答です4)(図7参照)。

図7:介護関係職種における前職の仕事を辞めた理由をしめす図。「職場の人間関係(20.0%)」、「結婚・出産・妊娠・育児(18.3%)」、「法人・事業所の理念や運営のあり方への不満17.8%」」のほか、「収入が少ない(15.0%)」も割合の多いことをあらわす
図7:介護関係職種における前職の仕事をやめた理由4)

給与水準の低さ

 介護職員の離職理由として割合の多い「収入が少ない」に関しては、介護職の給与水準の低さがあります。産業別の平均賃金をみると、産業計は33万3,800円、医療業は34万9,300円、サービス業は42万600円に対し、社会保険・社会福祉・介護事業は24万9,800円と介護分野の賃金水準は他の産業と比べて低い傾向にあります。また、ホームヘルパー、福祉施設介護員と同じ医療福祉分野における他職種の平均賃金と比べても介護職員の給与額は低い傾向にあります(表1)。

 介護人材の確保のため、介護職の給与水準の改善の手立てとして、政府は介護職員処遇改善加算の実施・見直しを図っています。

表1:平成29年(2017年)賃金構造基本統計調査 産業別・職種別の平均賃金(男女計)5)より作成
平均年齢(歳)勤続年数(年)きまって支給する現金給与額(千円)
産業別産業計 42.5 12.1 333.8
医療業 40.5 9.1 349.3
社会保険・社会福祉・介護事業 42.3 7.6 249.8
サービス業 41.0 9.5 420.6
職業別医師 42.1 5.3 952.0
看護師 39.3 7.9 331.9
准看護師 49.0 11.6 283.3
理学療法士、作業療法士 32.7 5.7 284.1
保育士 35.8 7.7 229.9
ケアマネジャー 48.0 8.7 265.3
ホームヘルパー 46.9 6.6 236.5
福祉施設介護員 40.8 6.4 233.6

介護人材確保の対策

 介護人材確保に向け、多様な介護人材の参入促進、介護職員の労働環境と処遇改善、介護職員の資質向上のための施策が練られています。

・多様な介護人材の参入促進

 中高年齢者や他産業に従事する人など、介護未経験者の参入促進や、介護福祉士を目指す学生を増やすことなど、多様な介護人材の参入促進を図ることが必要とされています。

・介護職員の労働環境・処遇改善

 資格取得の支援や、離職している介護経験者の復職を促すこと、研修の機会を設けるなど、キャリアパスの構築を推進することと、月額の賃金の改善や退職手当の見直し、女性の出産・育児との両立を支援すること、介護ロボットやICT(情報通信技術)の活用を推進し、介護職員が長く働ける環境を整えることへの対策が掲げられています。

・介護職員の資質向上

 介護福祉士の資格取得方法の見直しや、介護福祉士の配置が多い施設を評価すること、マネジメントやケアに関する研修の受講を支援し、専門性を高くして継続的に質の向上を促すことと、能力や役割分担に応じて機能分化を図り、限られた介護人材を有効に活用することが実施・検討されています。

参考文献

  1. 経済産業省 将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会報告書2018年4月9日(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 内閣府男女共同参画局 男女共同参画白書 平成30年版 I-特-43図 要介護認定者数と認定率(年齢階級別)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 厚生労働省 介護保険事業状況報告の概要(平成30年10月暫定版)(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 厚生労働省 介護人材の処遇改善について 社保審-介護給付費分科会 第161回(H30.9.5)資料2(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 総務省統計局 賃金構造基本統計調査 平成29年賃金構造基本統計調査(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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